国民経済計算の実質化手法の連鎖方式への移行について

2004年 11月 18日
経済社会総合研究所
国民経済計算部

1. 概要
平成16年7-9月期2次QEおよび平成15年度国民経済計算確報(支出系列)(平成16年12月8日公表予定)より、国民経済計算の実質化手法を連鎖方式に移行する。
2. 移行の背景
現在の実質GDP算出方式(基準年を5年毎に更新する固定基準年方式)では、基準年から離れるに従って実質経済成長率が過大に評価される(例えば、コンピュータ等の価格低下の著しい品目の影響が過大に評価される)傾向がある。
このようなバイアスを取り除く方法として、国連は基準年をより頻繁に更新する連鎖方式を推奨している。米国は1996年、カナダは2001年、英国は2003年に連鎖方式に移行している。
3. 我が国における検討の経緯
我が国では、平成13年より連鎖方式によるデフレータ-を参考系列として国民経済計算年報に掲載するなど、連鎖方式の導入について検討を行ってきた。平成16年4月からは、有識者からなる国民経済計算調査会議(議長:黒田昌裕慶應義塾常任理事、慶應義塾大学商学部教授)及びその下に設置された「基準改定課題検討委員会(委員長:栗林世中央大学教授)」において、平成17年末に予定される基準改定における連鎖方式への移行の是非に関して専門的観点から検討を行ってきた。
本年10月19日、国民経済計算調査会議は、「平成12年基準改定においては、実質化方式としてこれまでの固定基準年方式に代わって連鎖方式を採用することが望ましい」とし、さらに、「この連鎖方式の採用については、来年末に予定される基準改定値の公表をまたずに、前倒し」することを提言した。
経済社会総合研究所は、この提言を受け、これまで検討してきた連鎖方式や推計プロセスなどを具体的に検証してきたが、本日開催の国民経済計算調査会議・基準改定課題検討委員会合同会議(議長代理兼委員長:栗林世中央大学教授、議長は都合により欠席)に以下のような移行内容について方針を説明し、了承された。
4. 移行の内容
  • 移行時期:平成16年12月8日に同時公表予定の平成16年7-9月期2次QEおよび平成15年度国民経済計算確報(支出系列)より。
  • 移行する系列:支出系列(平成6年~)
  • 指数算式:実質値  前暦年基準ラスパイレス型
    デフレーター  前暦年基準パーシェ型
  • 参照年(デフレーター=100となる年): 2000年
  • 平成15年度国民経済計算確報の公刊予定:
    連鎖方式と固定基準年方式の両方の推計を行うこと、新方式の表章形式を整える必要があることから、5月初旬となる見込み。(本年は4月中旬)
  • 現行の支出系列(固定基準年方式)の取扱い:2次QE公表後2週間程度を目途として参考系列として公表する予定。
  • 生産系列・資産系列については、引き続き連鎖方式への移行について検討する。
    民間企業資本ストック速報については、当面現行方式(固定基準年方式)による推計を継続する。公表時期は、固定基準年方式によるQE支出系列の公表が従来より2週間程度遅くなる影響を受ける見込み。
5. 試算値(資料5(PDF形式:126KB)PDF)
国民経済計算調査会議における検討に資するため、最近のQEの基礎データに連鎖方式を適用して暫定的な試算を行った。公式統計は、12月8日同時公表予定の平成16年7-9月期2次QEおよび平成15年度国民経済計算確報(支出系列)より連鎖方式に移行する。2次QEは平成15年度確報推計や今後公表される「法人季報」等の統計を反映すること、参照年も今回試算の平成7年から平成12年に切り替えられることから、名目値・実質値とも今回試算値から変更がある見込み。
6. 説明会の開催
移行に関する説明会を11月22日午前10:30より第四合同庁舎2階220会議室において開催する。
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