GDP速報値検討委員会の設置及び今後のGDP暫定値の取扱いについて
平成12年4月7日
経済企画庁経済研究所
I.GDP速報値検討委員会の設置
1.委員会設置の主旨
最近のGDP統計を巡る議論及び消費関連統計の改善や93SNAへの移行等を踏まえ、QEの推計方法及び新たなアプローチによる暫定速報値を推計するための方策について検討するため、GDP速報値検討委員会を設置することとする。
2.具体的な検討課題
(1)民間最終消費支出の推計方法の再検討(今後公表予定の単身者世帯の四半期データの利用可能性など)
(2)季節調整法の再検討(X12-ARIMAの再評価)
(3)暫定値推計における総固定資本形成の改善
(4)93SNA移行への対応(ソフトウエアの設備投資への計上など)
等
3.検討体制
経済研究所において専門家から成る委員会を設置し、上記課題についての検討を行う(委員長 栗林世中央大学教授)。
4.今後の進め方
93SNAへの移行を念頭に置きつつ、検討成果を順次QE推計に反映させて行くこととする(第1回委員会は4月14日(金)に開催予定)。
II.今後のGDP暫定値の取扱い
1.経緯
(1)四半期別GDPの暫定値については、平成10年7月から11年5月までのGDP速報化検討委員会(以下、「委員会」)における検討の結果をうけて、11年1-3月期から現行の速報値より1カ月程度早期に推計可能な暫定値の作成作業に取り組んできた。
(2)この際、暫定値と1次速報値の開差がかなり大きいため、その取扱いは慎重にする必要があることから、その公表については1次速報値の公表に合わせて行うとする試行期間を継続してきたところである。
(3)試行期間中(平成11年1-3月期から10-12月期)の暫定値の結果をみると、
ア 実質GDP成長率についての1次速報値との開差は平均0.9%ポイントとかなり大きく、委員会報告における試算値よりさらに拡大している(委員会報告では、平成8年1-3月期から10年10-12月期の平均で0.7%ポイントと試算)。
イ 特に、現下の経済状況においてその動向が注目されている民間企業設備を含んだ総固定資本形成について開差が大きく、それが拡大している。
(4)以上の結果を踏まえると、このまま12年1-3月期から暫定値を1次速報値の前に公表することになれば、1カ月程度の間にGDP成長率が1%近くも改訂される可能性が大きく、景気判断や市場に大きな混乱を招く恐れがある。
2.今後の取扱い
以上の経緯を踏まえ、暫定値については、現在の試行期間をさらに継続する。その間、総固定資本形成を中心に、より開差の小さい推計が可能かどうかを93SNAへの対応と合わせてGDP速報値検討委員会の意見を踏まえつつ検討し、本年中を目途に結論を得ることとする。
【別紙】
GDP速報値検討委員会委員名簿
新居 玄武 学習院大学経済学部教授
委員長 栗林 世 中央大学経済学部教授
外川 洋子 宮城大学事業構想学部教授
中村 洋一 麗澤大学国際経済学部教授
西村 清彦 東京大学大学院経済学研究科教授
舟岡 史雄 信州大学経済学部教授
大平 純彦 静岡県立大学経営情報学部助教授
西山 茂 小樽商科大学商学部教授
宮川 努 学習院大学経済学部教授
渡辺 源次郎 日本福祉大学経済学部教授