GDP(国内総支出系列)の季節調整方法について

平成13年11月30日
内閣府経済社会総合研究所
国民経済計算部

  1. GDPをはじめとする国民経済計算の季節調整法については、原則として米国商務省センサス局法X-12-ARIMAを利用している。
  2. 平成12年度確報GDP系列、及び雇用者報酬の季節調整法の詳細は以下の通り。
    1. X-12-ARIMAによる季節調整法を採用する項目
      • GDP需要項目(対家計民間非営利団体最終消費支出を除く(注))及び雇用者報酬

      (注)対家計民間非営利団体最終消費支出の季節調整系列の作成方法等については、「対家計民間非営利団体最終消費支出の四半期推計方法の変更について」を参照。

    2. 各項目において季節調整を施す系列
      • GDP需要項目については、各項目の名目原系列及び実質原系列
      • 雇用者報酬については、名目は雇用者報酬内訳項目毎に季節調整。実質は雇用者報酬一本に季節調整。
    3. 季節調整データ期間
      • 昭和55年1-3月期~平成13年1-3月期
    4. ARIMAモデルの推計に利用したデータ期間
      • 政府個別消費支出については、昭和55年1-3月期~平成13年1-3月期
      • 政府個別消費支出以外の項目については、昭和55年1-3月期~平成11年1-3月期
    5. ARIMAモデルによる先行き予測期間
      • 8期(2年分)

      (「12年度確報におけるGDP系列の季節調整法の変更点について」参照)

    6. 選択されたARIMAモデル型、曜日調整、閏年調整、異常値・レベルシフト調整の設定等
      • 各項目のARIMAモデル型、曜日調整、閏年調整、異常値・レベルシフト調整の設定方法については、表1を参照。
      • 以下の項目については、今回、ARIMAモデルの選定、異常値・レベルシフト調整の設定の変更を行った。

      (別添資料)「12年度確報におけるGDP系列の季節調整法の変更点について」参照)

      1. 国内家計最終消費支出
      2. 民間企業設備
      3. 公的企業設備
      4. 一般政府総固定資本形成
      5. 政府個別消費支出
      • 上記以外の項目については、「GDP速報値検討委員会第1次検討結果報告」(平成12年10月 GDP速報値検討委員会)の表2 季節調整法の比較検討 に記載されているモデル等を変更していない。
    7. その他
      • 在庫系列については加法型、在庫以外の系列については乗法型の季節調整を行った。
      • 雇用者報酬のデータ開始は平成2年1-3月期である。
  3. 13年4-6月期以降の四半期別GDP速報値の季節調整値の算出にあたっては、今回の季節調整において先行き予測機能によって算出された予定季節指数を利用する。なお、各項目の予定季節指数は表2の通り。

(以上)

(別添資料)12年度確報におけるGDP系列の季節調整法の変更点について

  1. 異常値・レベルシフト調整、及びARIMAモデル型の選定について
    GDP内訳項目のうち、GDPに対する影響の大きい項目である国内家計最終消費支出、民間企業設備、公的企業設備、一般政府総固定資本形成の4項目について、(1)、(2)の通り、異常値・レベルシフト調整、及びARIMAモデル型(モデルの階差、次数)の選定の変更を行った。
    1. 異常値・レベルシフト調整
      これまで自動探索によって検索していた方法に代えて、経済実態に照らして、当該調整を行うことが適切であると考えられる期で設定することとした(ただし、統計的に有意でないものは設定せず)。
      (具体例)
      • 国内家計最終消費支出:従来、平成9年の駆け込み需要期(1-3月期)のみ設定していたものから、平成9年の駆け込み需要期に加え、その反動期(4-6月期)を、駆け込み需要期と定量的にちょうど逆に効くように設定。
      • 公的企業設備:①昭和60年4-6月期の日本電信電話株式会社及び日本たばこ産業株式会社への民営化、②昭和62年4-6月期の東日本旅客鉄道株式会社等各社への民営化、に伴う公的企業から民間企業への格付け変更に伴う設備投資減少分の調整。
    2. ARIMAモデル型の選定
      名目値、実質値の季節調整で用いるARIMAモデル型を合わせることとした。(但し、パラメーターは名目値、実質値それぞれで、モデルの推定により算出)
      (理由)
      • 名目値、実質値及びデフレーターの間では、名目値÷デフレーター=実質値といった関係がある。このため、名目値と実質値で異なるARIMAモデル型を用いて季節調整を行うと、名目の季節調整値と実質の季節調整値からインプリシットに算出される季節調整済デフレーターの動きに、ARIMAモデル型の違いに起因する変動が含まれることになる。こうした変動については、必ずしも経済の実態を反映しているとは考えられないため、できる限り軽減する必要がある。こうしたことから、季節調整を行うにあたって、名目値と実質値で用いるARIMAモデル型を合わせることとした。
      • その方法としては、まず、名目値、実質値それぞれにおいて、上記の異常値・レベルシフト調整を勘案したうえで、ARIMAモデル型を選定した。なお、選定基準としては、従来どおり、当てはまりの度合いを示す統計量であるAIC(赤池情報量基準)が最小となるモデルを選定した。
      • 上記4項目について作業した結果、民間企業設備と公的企業設備については、名目値と実質値で同じARIMAモデル型が選定された。
      • 一方、国内家計最終消費支出(注)と一般政府総固定資本形成については、名目値と実質値で異なるARIMAモデル型が選定されたが、インプリシットに算出されるデフレーターの動き等、季節調整に関するパフォーマンスを比較・検討した結果、名目値で選定されたARIMAモデル型に実質値のモデル型を合わせることとした。
      (注)国内家計最終消費支出のみ設定している曜日調整、閏年調整はこれまで通りとした。
  2. 政府個別消費支出の変更について
    政府個別消費支出については、平成12年度から介護保険給付が計上されることとなった。これに対処するため、ARIMAモデルの推定に用いるデータ期間を、55年1-3月期~13年1-3月期とした上で、12年4-6月期以降についてレベルシフト調整変数を導入した。
  3. 先行き予測期間について
    先行き予測期間は8期に変更する(平成11年度確報時は4期)。これは、X-12-ARIMAによる季節調整を行うGDP内訳項目全て及び雇用者報酬について適用する。
    (理由)予定季節指数の必要期間数、及びARIMAモデルによる予測値が季節調整指数へ与える影響度合いを勘案し、先行き予測期間を8期とした。

(以上)