用語解説

一般政府内の経常移転(Current Transfers Within General Government

 一般政府の内訳部門間の経常移転からなる。具体的には、中央政府と地方政府間、社会保障基金と地方政府間、中央政府と社会保障基金間のような異なる政府間の経常移転を指す。ただし、総固定資本形成に用いられる資金を移転すること等は、資本移転として取り扱う。

インプリシット・デフレーター(Implicit Deflator

 デフレーションを行うべき対象についてのデフレーターが直接作成されるのではなく、その対象の構成項目ごとにデフレーターを作成して実質値を求め、全体としてのデフレーターは(名目値)/(各構成項目の実質値の合計)として逆算によって求められる場合がある。
例としてある支出項目が二つの個別品目で構成されているケースを考え、それぞれの品目の名目値をX1、X2とし、デフレ-ターをP1、P2とする。このケースでは当該支出項目の名目値(X)は、X1+X2となり、実質値(XR)は個別品目の実質値の合計(X1/P1+X2/P2)となる。ここで当該支出項目のデフレーター(P)はX÷XR〔=(X1+X2)/(X1/P1+X2/P2)〕として事後的に求められることになる(固定基準年方式の場合。連鎖方式では実質値の計算には複数時点のデータが必要となるが考え方は同じ)。このようなデフレーターの算出方法をインプリシット方法といい、求められたデフレーターをインプリシット・デフレーターと呼ぶ。
 インプリシット・デフレーターは指数算式の面からみれば、パーシェ型(比較時数量ウェイト)価格指数となる。国民経済計算で表章されているデフレーター は、コモディティー・フロー法による細かい商品別の情報を利用して算出されるインプリシット・デフレーターであり、精緻なパーシェ型デフレーターとなって いる。(デフレーターの項も参照)

営業余剰・混合所得(Operating Surplus or Mixed Income

 我が国は93SNAを導入する際に、従来までの営業余剰のみの概念から、家計部門については新たに混合所得という概念を導入した。ともに生産における企業等生産者の生産活動の貢献分であり、雇用者報酬、固定資本減耗、生産・輸入品に課される税及び補助金(控除)とともに付加価値の構成要素の一つである。このうち混合所得は家計のうち個人企業の取り分であり、その中に業主等の労働報酬的要素を含むことから、営業余剰(家計においては持ち家分)とは区別される。営業余剰は、原則として市場での利益の追求を目的とする産業においてのみ生じ、政府サービス生産者及び対家計民間非営利サービス生産者は、営業余剰を生まない。

海外勘定(Rest of the World Accounts

 海外勘定は、海外との財貨やサービスの輸出入、所得の受払、移転等の経常取引や資本取引、金融取引を記録する表である。このうち経常取引と資本取引は、財務省及び日本銀行が国際通貨基金(IMF)の「国際収支マニュアル」に定める国際的な共通方式に従って作成している国際収支統計を組み替えたものである。金融取引は国債収支統計に加えて、日本銀行が作成している資金循環統計を 用いて推計されている。
 国民経済計算では、海外勘定は海外との経常・資本・金融取引に関する総括表として、統合勘定に表章されると同時に、付表に海外勘定の明細が示されている。
 なお、国民経済計算の海外勘定は海外からの視点で受払を記録しており、国内の視点から記録されている国際収支統計とは受払が逆になっている。

海外直接投資に関する再投資収益(Reinvested Earnings on Direct Foreign Investment

 海外直接投資に関する再投資収益とは、海外直接投資企業の留保利益のことであり、実際には直接投資家には分配されないものであるが、93SNAにおいては、直接投資家に財産所得として分配され、その後に同額が再投資されたかのように取り扱う。

海外に対する債権の変動(Changes in claims to the Rest of the World)、経常対外収支(Current External Balance

 経常対外収支は、海外との経常取引の収支を表したものであり、統合勘定中 の「海外勘定」において用いられている。概念的には、財貨・サービスの輸出(純)+海外 からの所得(純)+海外からの経常移転(純)で捉えられるが、国民経済計算の海外勘定は海外からの視点で受払を記録することになっているため、上式とは逆符号で記録されている。
 一方、海外に対する債権の変動は、対外資産の変動から対外負債の変動を控除したものであり、統合勘定中の「資本調達勘定」において用いられている。これは、海外勘定の資本取引における経常対外収支と海外に対する資本移転等の純支払を加えたもの、つまり海外の純貸出(+)/純借入(-)(資金過不足)に等しい(計数上は逆符号で記録されている)。資本調達勘定の金融取引においては、制度部門別の純貸出(+)/純借入(-)(資金過不足)を合計したものに等しく、一国の純貸出(+)/純借入(-)(資金過不足)を表している。実物取引においては制度部門別の純貸出(+)/純借入(-)の合計と概念的に一致する(計数上ではこれに統計上の不突合を加えたものと等しい)。
 海外からの資本移転の受取(資本形成のための無償資金援助等)は国際収支表では資本移転収支に含まれており、海外に対する債権の変動は国際収支表の経常収支に資本移転収支を加え、無形資産の海外からの(純)購入*を除いたものに相当している。

*無形資産の海外からの(純)購入
 非生産資産のうち、無形非生産資産(特許権、著作権等)の取得・処分については、国際収支表の「その他資本収支」のうち、「その他資産」として収支が記録されている。

家計最終消費支出(Final Consumption Expenditure of Households

 家計最終消費支出は、家計(個人企業を除いた消費主体としての家計)の新規の財貨・サービスに対する支出であり、同種の中古品、スクラップの純販売額(販売額-購入額)が控除される。土地と建物はこの項目に含まれない。また、農家における農産物の自家消費、自己所有住宅の帰属家賃、賃金俸給における現物給与等も計上される。
 家計最終消費支出には、国内・国民二つの概念があり、前者(国内市場における最終消費支出)は、ある国の国内領土における居住者たる家計及び非居住者たる家計の最終消費支出である。他方、後者(居住者たる家計の最終消費支出)は、前者に居住者たる家計の海外での直接購入を加え、非居住者たる家計の国内市場での購入を差し引いたものである。統合勘定、所得支出勘定には後者の概念で計上される。
 国内家計最終消費支出は、支出の目的別(対象別)分類、購入品目の形態別(耐久財、半耐久財、非耐久財、サービス)分類に従って表章される。

貸出・借入(Loans

 国連が示した93SNA上の「貸付」とは、「債権者が債務者に直接資金を貸し付けるときに創造される金融資産、又は譲渡不能文書により証明される金融資産、又は貸し手(債権者)が取引を証明する証券を受けられない金融資産」であるとされている。
我が国の国民経済計算体系上、これを「貸出・借入」とし、「資金循環統計」に倣い、「日銀貸出金・借入金」、「コール」、「買入・売渡手形」、「民間金融機関貸出・借入」、「公的金融機関貸出金・借入金」、「非金融部門貸出金・借入金」、「消費者信用に含まれない割賦債権・債務」及び 「現先・債券貸借取引」の項目に分類している。なお、我が国の国民経済計算においては、貸付債権の流動化に係る債権・債務も含まれている。

可処分所得(Disposable Income)及び国民可処分所得(National Disposable Income

 可処分所得は、国民全体あるいは各制度部門の現物社会移転を除く全ての経常収入(雇用者報酬、営業余剰・混合所得及び財産所得等の受取)から、現物社会移転を除く全ての経常移転の支払を控除したものであり、それぞれの制度部門の手元に残った処分可能な所得を示している。各制度部門別の可処分所得は、所得支出勘定における所得の第2次分配勘定のバランス項目として表章されており、また、国全体の可処分所得(すなわち国民可処分所得)は、それら制度部門別の所得支出勘定を統合することによって求められ、「統合勘定2 国民可処分所得と使用勘定」にあらわれる。
 国民可処分所得は、市場価格表示の国民所得に海外からの経常移転の純受取を加えたものに等しい。すなわち、生産活動によって生み出された要素所得に海外からの移転分を加えたものであり、国民全体の処分可能な所得を表している。これを支払の面からみると、民間及び政府の最終消費支出と貯蓄に処分される。*制度部門別の可処分所得についてみると、非金融法人企業では最終消費支出を行わないため、可処分所得は全額貯蓄となる。金融機関については、可処分所得 から年金基金年金準備金の変動を除いた額が貯蓄となる。他方、最終消費の主体である一般政府、対家計民間非営利団体及び、家計では、可処分所得は最終消費支出と貯蓄に処分される。
*なお、家計については、可処分所得に年金基金年金準備金の変動を加えた額が最終消費支出と貯蓄に処分され、家計最終消費支出÷(家計可処分所得+年金基金年金準備金の変動)は消費性向、家計貯蓄÷(家計可処分所得+年金基金年金準備金の変動)は貯蓄性向あるいは貯蓄率という。

株式・出資金(Shares and Other Equities

 93SNA勧告における分類「株式及びその他の持分」に対応して、我が国では、「資金循環統計」の分類に倣い、「株式・出資金」の項目を設けている。「株式・出資金」の項目には、我が国において設立されている各種法人に対する 持分が含まれ、会社法上の株式会社、特別法に基づき設立された法人(特殊法人等)の株式・出資金が計上されている。このうち、株式については「うち株式」と して独立表章している。「株式」の概念的な範囲は、68SNAと93SNAでは異ならないが、68SNAにおいては「その他の金融資産・負債」に含まれていた「政府出資金」が「株式・出資金」に含まれている。なお、93SNAでは非上場株式を「うち株式」に記録しているが、「資金循環統計」では「出資金」に計上している。

株式以外の証券(Securities Other Than Shares

 株式以外の証券とは、証券として表章される金銭債権であり、証券取引法上の有価証券のほか、同法の対象とならない私法上の有価証券が計上される。具体的には、各種の債券のほか、コマーシャルペーパー、投資信託受益証券、信託受益権、債権流動化関連商品、抵当証券を含めている。

貨幣用金・SDR(Monetary Gold・Special Drawing Rights

 「貨幣用金・SDR」は、「貨幣用金」と「SDR」からなる。「貨幣用金」は、68SNAにおける「金」と同様、通貨当局により金融資産として保有され、なおかつ外貨準備の一部でもある金を指す。93SNAにおいては、金を (1)貨幣用金、(2)貯蔵目的で保有される金、(3)産業目的で使用される金, の三つに区分し、価値貯蔵目的の金((2))を「貴重品」として把握することとしているが、わが国では統計上十分な基礎資料が無いとの理由から貴重品そのものと併せ、新体系への導入を見送っている。なお、産業目的で使用される金は中間消費として処理される。また「SDR」、つまり特別引出権(IMF Special Drawing Rights)は、国際通貨基金(IMF)が創出した国際的準備資産で、既存の準備資産を補完するために加盟国に配分されるものである。
 我が国の体系における貨幣用金・SDRの記録方法については留意が必要である。貨幣用金・SDRは、我が国の場合、中央政府(一般政府)と中央銀行(金融機関)によって保有されているが、その保有割合が公表されていないため、「その他の金融資産」のうち「その他」の項目に含めて制度部門間に分割される。 このため、体系上、金融資産「貨幣用金・SDR」の計数は各制度部門ともゼロとなる(負債側は海外部門に全額が記録される)。なお、「その他の金融資産・ 負債」の内訳項目「外貨準備高(貨幣用金・SDRを除く)」についても同様の取扱がなされている。

間接的に計測される金融仲介サービス(Financial Intermediation Services Indirectly Measured, FISIM

 68SNAでは、金融部門の産出額は、帰属利子という形で推計記録がされていたが、93SNAでは、間接的に計測される金融仲介サービス(FISIM)を通常の財貨・サービスの一つとして位置づけている。
 金融仲介機関の中には、借り手と貸し手に対して異なる利子率を課したり支払ったりすることにより、明示的には料金を課さずにサービスを提供することができるものがある(このような金融仲介機関に資金を貸す人々(預金者)には他の場合よりも低い利子率を支払い、資金を借りる人々にはより高い利子率を課する。)。こうした金融仲介機関による明示的には料金を課さないサービスの価額を、間接的な測定方法を用いて推計したものが、「FISIM」である。

企業所得(Entrepreneurial Income

 企業所得とは、営業余剰・混合所得に受け取った財産所得を加算し、支払った財産所得を控除したものであり、主要系列表2「国民所得・国民可処分所得の分配」に表章される。企業所得は、民間法人企業所得、公的企業所得、個人企業所得に分類される。

帰属計算(Imputation

 帰属計算とは、国民経済計算の特有な概念であり、財貨・サービスの提供ないし享受に際して、実際には市場でその対価の受払が行われなかったのにもかかわらず、それがあたかも行われたかのようにみなして擬制的取引計算を行うことをいう。
 例えば、家計最終消費支出には、帰属家賃や農家における農産物の自家消費等が含まれ、通常の家計簿ベースの支出より範囲が広がっているなど、国民経済計算の各項目をみる場合、その範囲には十分注意する必要がある。

金融派生商品(Financial Derivatives

 「金融派生商品」は、93SNAにおいて、初めて金融資産として計上されるようになった項目である。93SNAにおいては、「金融に係るある特定の手段、関連指標または商品に関連する金融手段であり、その金融手段により、特定の金融のリスクがそれ自身の権利で金融市場で取引されるもの。その価値の源泉は、原品目の参照価格であり、また、債務手段と異なり、元本が再支払のために貸し付けられることはなく、投資された所得が蓄積されるものではないもの」と定義されている。
 68SNAに基づく我が国旧体系においては、現先取引や金融派生商品に係る利子の区分は行わず、金融派生商品により生じる利子の差額分の受払を、原取引の一部として扱い、所得支出勘定において、「財産所得」の内訳項目「利子」に含めていた。

経済活動別分類(Classification of Economic Activities

 制度部門別分類が所得の受取や処分、資金の調達や資産の運用についての意思決定を行う主体の分類であるのに対し、経済活動別分類は生産についての意思決定を行う主体の分類である。経済活動別分類は、生産技術の同質性に着目した分類となっており、事業所(実際の作業を行う工場や事務所など)が統計の基本単位となっている。
 この分類による取引主体は、大きく産業(個人企業を含む)、政府サービス生産者、対家計民間非営利サービス生産者に分かれる(参考資料Ⅵ「経済活動別分類」参照)。産業は経済的に意味のある価格での財貨・サービスの販売を目的として生産活動を行う主体であり、政府の機関であっても、費用構造、生産物の性格や処分において産業と類似しているもの(公的企業)はこれに含まれる(参考資料Ⅴ「国民経済計算における政府諸機関の分類」参照)。また、個人企業及び家計の住宅所有(持ち家の帰属家賃)についても、産業に含まれる。

経常移転(Current Transfer

 生産の結果発生した所得のうち、移転取引を通じて各制度部門間に分配されるものがある。経常移転は、支払側の資産や貯蓄ではなく経常的な収入の中から充てられ、また受取側の投資の源泉とならない点で資本移転と区別される移転であり、所得支出勘定に全て計上される。
 国民経済計算において、経常移転は次のように分類される。(1)非生命保険純保険料及び保険金、自発的現実社会負担及び年金基金による社会給付、その他の契約に基づく受払。(2)政府機関に関する移転。例えば所得・富等に課される経常税、強制的現実社会負担及び現金による社会保障給付、罰金がこれに該当する。(3)その他の反対給付のない任意の移転(贈与)。その他の経常移転、一般政府内の経常移転、経常国際協力などの表章項目が該当する。

経常国際協力(Current International Cooperation

 経常国際協力は、異なる国の政府間、あるいは政府と国際機関との間における現金または現物による経常移転からなる。食料・衣料・医療品等の消費財及びこれに関連する経常的な費用などの無償援助や、国際連合等の国際機関に対する分担金・拠出金などが含まれる。
 なお、例えば道路建設資金の無償援助のような、資本形成を目的とした移転は経常国際協力には含まれない。そのような移転は資本移転として取り扱われる。

現金・預金(Currency and Deposits

 93SNA勧告にある「現金及び預金」とは、「決済のために利用され、広義の貨幣に含まれる金融資産」である。我が国旧体系においては、預金は通貨性預金(要求払預金等)とその他の預金(定期性、譲渡性預金等)に大きく分かれて記録されていたが、93SNA勧告を受け、これを「現金・預金」とした。
 「現金・預金」は、(1)「現金」、(2)「日銀預け金」、(3)「政府預金」、(4)「流動性預金」、(5)「定期性預金」、(6)「譲渡性預金」、(7)「外貨預金」、(8)「財政融資資金預託金」の項目に細分割した。なお、(2)「日銀預け金」は、日本銀行の負債となる預金のうち、「政府預金」を除くものであり、日本銀行の取引先金融機関からの預金が含まれる。なお、郵便貯金は平成14暦年末までは全て「定期性預金」に計上されていたが、平成14年度末以降は通常貯金を「流動性預金」に計上している。
 (1)「現金」は、我が国の法定通貨である日本銀行券(紙幣)及び補助貨幣である。当項目には、経済主体が保有する我が国の現金が含まれており、その総額は、日本銀行券発行高と補助貨幣流通高を合計したものである。ただし居住者が保有する外国通貨は「現金」には含めず「その他対外債権・債務」として計上する。また「現金・預金」の各項目には、我が国の現金及び国内金融機関の預金が含まれている。

現金による社会保障給付(Social Security Benefits in Cash

 社会保障基金から家計に対して現金の形で給付されるものである。ここには、健康保険による医療・介護の保険給付分など直接家計に現金で支払われない現物は含まれない。
 現金による社会保障給付は、所得支出勘定において、一般政府の支払、家計の受取として計上され、付表9「一般政府から家計への移転の明細表(社会保障関係)」にその明細が示されている。

現物社会移転(Social Transfers in Kind

 一般政府及び対家計民間非営利団体が、個々の家計に対して財貨及びサービスを、現物による社会移転として支給することであり、当該財貨及びサービスは、一般政府及び対家計民間非営利団体が市場で購入したかあるいはその非市場産出として生産したものである。
 現物社会移転は、現物社会給付と個別的非市場財、サービスの移転から構成される。

現物社会給付(Social Benefits in Kind

 93SNAにおいては、一般政府から家計への医療保険給付分及び介護保険 給付分は現物社会移転の一項目である「現物社会給付」として記録している。また、現物社会給付は、社会保障基金が家計に対して払い戻しを行う形での「払い 戻しによる社会保障給付」と、関連するサービスを直接受給者(家計)に支給する形での「その他の現物社会保障給付」に細分化して記録している。

交易利得・損失 (Trading Gains/Losses)

 名目の世界では、国内で産み出された付加価値と所得の大きさは等しく、名 目GDP=名目GDI(国内総所得)が成立している。一方、付加価値の実質的な大きさ(実質GDP)は各構成要素の価格をある時点で固定することによって 計測されるため、実質GDPには海外との貿易に係る交易条件の変化に伴う実質所得(購買力)の変化は反映されない。この「交易条件の変化に伴う実質所得 (購買力)の変化」を捉えるのが交易利得・損失という概念であり、定義上、実質GDP+交易利得・損失=実質GDIが成立している。
 推計上は、交易利得・損失は以下の推計式により算出される。GIF
(注)(a)式は、直感的には以下のように理解することができる。
(a)式の第1項の分子(X-M)は、海外との貿易を通じて得られる名目所得を表している。これは、次の3つの要因によって規定される。
(1)輸出入数量
(2)輸出入価格の全般的水準
(3)輸出入の相対価格(いわゆる交易条件)
ここで、要因(2)について若干の説明が必要であろう。輸出入数量(要因(1))や交易条件(要因(3))が不変であっても、貿易を通じて得られる名目所得は変化し得る。例えば、輸出入される財貨・サービスの価格が全般的に2倍に上昇すれば、名目所得も2倍になる。要因(2)は、このような輸出入価格の全般的な動きを捉えるものであり、(a)式においてはP(ニュメレール・デフレーター)で表されている。ニュメレール・デフレーターの選択については議論が分かれるところだが、我が国の国民経済計算では輸出入価格の加重平均を採用している。
 さて、(a)式の第1項は、(X-M)をPで除して要因(2)の影響を取り除いたものであり、貿易を通じて得られる実質所得を表す。一方、(a)式の第2項は、輸出入の数量差であり、要因(1)によって規定される実質所得を表している(なお、これはすでに実質GDPに反映されている)。したがって、(a)式の第1項から第2項を控除した結果は、要因(3)(交易条件)の変化に伴う実質所得の変化を捉えるものであり、また、貿易を通じて得られる実質所得のうち実質GDPには反映されていない部分を表している。

公的企業 (Public Corporations)

 原則として、政府により所有かつ支配されている企業で、商法その他の公法、 特別立法、行政規則等により法人格を持つ公的法人企業及び生産する財貨・サービスのほとんどを市場で販売する大規模な非法人政府事業体からなる。その活動の類型、すなわち生産技術や経営形式の特性から産業として分類されるような事業所を単位とする。
 公的企業は経済活動別分類では産業に、制度部門別分類では非金融法人企業及び金融機関に分類される。公的非金融企業の例として郵便局株式会社、日本中央競馬会等の公的法人企業や食料安定供給特別会計(麦管理勘定)の事業特別会計があげられる。一方、公的金融機関としては財政融資資金等の金融業務を営む特別会計や国際協力銀行、日本政策投資銀行、各公庫等の政府関係金融機関が該当する。また、中央銀行は公的金融機関とするという国民経済計算の考え方に基づき、日本銀行は公的金融機関に含められる。

国内(Domestic)概念と国民(National)概念

 国内領土とは、ある国の領土から当該国に所在する外国政府又は国際機関の公館及び軍隊を除いたものに、領土外に所在する当該国の公館及び軍隊を加えたものである。国内という概念は、その国内領土に居住する経済主体を対象とするという概念であり、主として生産活動に関連した概念である。例えば外国企業の在日子会社は、我が国の国内領土において生産活動を行っているので、我が国の居住者たる生産者として国内に含まれ、逆に我が国企業の海外支店は含まれない。国内総生産は、居住者たる生産者による国内生産活動の結果生み出された付加価値の総額である。
 一方、国民という概念は、当該国の居住者主体を対象とする概念であり、外国為替及び外国貿易管理法(外為法)の通達「外国為替管理法令の解釈及び運用に ついて」の居住者の要件を満たす企業、一般政府、対家計民間非営利団体及び個人をさす。例えば、居住者たる個人とは、主として当該領土内に6ヶ月以上の期 間居住しているすべての個人をいい、国籍のいかんを問わない。また、一般に、国外に2年以上居住する個人は非居住者とされる。
 国民総所得は当該国の居住者主体によって受け取られた所得の総額を示すもので、国内総生産に海外からの所得(雇用者報酬、投資収益などの財産所得・企業所得)の純受取を加えたものであり、分配面からの接近によって把握されるものである。

国民所得勘定(National Income Accounts

 国民所得勘定とは、ある期間内に新しく生産された財貨・サービスの価額を推計把握するものである。国民所得勘定の推計方法には、(1)各財貨・サービスの生産額から生産のための原材料等として使用された財貨・サービス(中間投入)を控除して得られる付加価値を集計する生産面からの接近方法、(2)消費や投資などその期間内で他の生産過程で原材料等として使用されることのない最終需要を集計する支出面からの接近方法、(3)賃金や利潤等の分配された所得を集計する分配面からの接近方法の三つの方法があり、この三面からの推計値は概念的に一致する。これを三面等価の原則(Principle of Equivalent of Three Aspects)という。
 国民経済計算では生産、支出、分配の三面からの接近方法がいずれも採用され、三面の等価を図るべく努力が行われており、我が国では、生産面と分配面が一致するよう作成され、支出面との差を統計上の不突合として表章している。
 国民経済計算における国民所得勘定は、産業連関表、資金循環勘定、国際収支統計、国民貸借対照表を一つの体系に接合するための媒介として中核的役割を果たしている。

国民総所得 (Gross National Income、GNI)

 国民総所得(GNI)とは、一国全体を所得の面から捉えたものであり、概念的には、各制度部門別の「第1次所得の配分勘定」のバランス項目である「第1次所得バランス(総)」を合計したものである(日本では、GNIを支出面からの推計値をもとに推計しているため、統計上の不突合分だけの違いが生じている)。
 数値的には、従来の国民総生産(GNP)に相当するものである。なお、名目GNIを実質化する場合は、輸出入価格の差によって生じる所得の実質額も考慮するため、交易利得も加えている。

国民貸借対照表(National Balance Sheet

 国民所得勘定や産業連関表、国際収支統計は、いずれもフローを扱うものであってストックは扱われない。ストックを扱う勘定が国民貸借対照表である(資金循環勘定は、フローたる金融資本取引のほか、ストックである金融資産・負債残高も扱う)。国民貸借対照表は、企業会計上に用いられる貸借対照表の考え方を国民経済計算に応用したものであり、有形固定資産(住宅・機械・土地等)、無形固定資産(コンピュータ・ソフトウェア)及び金融資産・負債の国全体及び各制度部門別の残高を表示したものである。各資産の評価は、原則として評価時点における市場価格で行われる。

固定資本減耗(Consumption of Fixed Capital

 建物、構築物、設備、機械等再生産可能な固定資産(有形固定資産、無形固定資産)について、通常の使用に基づく摩損及び損傷(減価償却)に加え、予見される火災、風水害、事故等に伴う滅失(資本偶発損)を評価した額であり、固定資産を代替するための費用として総生産の一部を構成する。
 国民経済計算では、政府と対家計民間非営利団体を生産者として格付けしているため、これらの固定資産についても固定資本減耗が計上されている。
 固定資本減耗は、全て時価(再調達価格)ベースで推計される。
 なお、生産や固定資本形成などで、固定資本減耗を含む計数は“総”(Gross)、含まない計数は“純”(Net)を付して呼ばれる。

個別消費支出(Individual Consumption Expenditure)と集合消費支出(Collective Consumption Expenditure

 非市場生産者の最終消費支出は、個々の家計の便益のために行った「個別消費支出」と社会全体のために行った「集合消費支出」に区分される。
 具体的には、「個別消費支出」は、医療保険及び介護保険によるもののうち社会保障基金からの給付分である「現物社会給付」、及び教育、保健衛生などの個別的サービス活動に要する消費支出である「個別的非市場財・サービスの移転」の和となっており、「現物社会移転」の額と等しい。
 一方、「集合消費支出」は、外交、防衛、警察等の社会全体に対するサービス活動に要する消費支出である。
 一般政府の最終消費支出については、個別消費支出と集合消費支出に区分される。一方、対家計民間非営利団体の最終消費支出は、全て個別消費支出とする。

個別的非市場財・サービスの移転(Transfers of Individual Non-market Goods and Services

 「個別的非市場財・サービスの移転」は、「現物社会給付」とともに「現物社会移転」を構成する項目であり、家計に対して、無料または経済的に意味のない価格で、一般政府または対家計民間非営利団体といった非市場生産者が行う財・サービスの提供をいう。具体的には、一般政府から家計に移転される(一般政府から家計向けサービスの費用として支出される)、児童保護費等負担金(公立保育園分)や、対家計民間非営利団体から家計に移転される(対家計民間非営利団体が、サービスの費用の一部もしくは全額を家計に負担させず、補助金や寄付金などの収入により賄って行うサービス)私立保育園の経営費、美術館や動物園の運営費などが含まれる。
 なお、この移転のうち、一般政府から家計への移転額は一般政府の個別消費支出に計上される。また対家計民間非営利団体から家計への移転額は、対家計民間非営利団体最終消費支出に等しい。

雇用者報酬(Compensation of Employees

雇用者報酬とは、生産活動から発生した付加価値のうち、労働を提供した雇用者への分配額をさす。所得支出勘定における第1次所得の配分勘定では、家計(受取)のみ計上される。雇用者とは、経済活動別(産業、政府サービス生産、対家計民間非営利サービス生産者)を問わず、あらゆる生産活動に従事する就業者のうち、個人事業主と無給の家族従業者を除くすべての者であり、法人企業の役員、特別職の公務員、議員等も雇用者に含まれる。
 雇用者報酬は、具体的には以下のような項目から構成されており、このうち①の(b)、②及び③の一部は、実際に現金の形で雇用者に支払われるものではなく、帰属計算項目として雇用者報酬に含まれている。
① 賃金・俸給
(a)現金給与(所得税や社会保険料の雇用者負担等控除前)。一般雇用者の賃金、給料、手当、賞与などの他に役員給与や議員歳費等も含まれる。
(b)現物給与、自社製品等の支給など、主として消費者としての雇用者の利益となることが明らかな財貨・サービスに対する雇主の支出であり、給与住宅差額家賃もこれに含まれる。
② 雇主の現実社会負担
 健康保険や厚生年金等の社会保障基金への負担金(雇主の強制的現実社会負担)及び、厚生年金基金や適格退職年金等の年金基金への負担金(雇主の自発的現実社会負担)。
③ 雇主の帰属社会負担
 退職一時金等の無基金社会保険制度への負担金。

債権者による不良債権の抹消(Writing-off Bad Debts by Creditors

 「貸出・借入」の概念に関連して、93SNAにおいて旧体系からの重要 な変更が行われた。それは、貸出債権の償却、つまり不良債権償却の国民経済計算体系上の取扱である。旧体系においては、貸出金償却の取扱に関する明確な記 述がなされていなかった。そのため、慣行上、金融機関等による不良債権の償却を、所得支出勘定において「その他の経常移転」として扱い、債権の直接償却額 (共同債権買取機構への金融債権売却損を含む)及び償却を目的とした貸倒引当金(個別貸倒引当金)の取り崩し額の合計、すなわち実現額の合計を計上していた。
 しかしながら、93SNAにおいては、不良債権の償却について、「破産等により金融債権がもはや回収できないため、債権者によって当該資産が貸借対照表 から除去された場合は、これを(調整勘定の)その他の資産量変動勘定に記録する」という新たな指針が示された。93SNAにおいては、これを踏まえ、金融 機関による不良債権の償却を、従来のような経常取引・金融取引として捉えるのではなく、調整勘定の中で「その他の資産量変動」として捉えることとした。なお、93SNAに基づいて、我が国は不良債権の抹消を貸倒金を発生ベースで記録するという立場から、金融機関による直接償却額と個別貸倒引当金への繰入額 の合計額、すなわち発生額の合計を「その他の資産量変動」として記録している。

在庫品増加(Change in Inventories

 企業が所有する製品、仕掛品、原材料や、卸小売業が所有する流通品といった棚卸資産のある一定期間における物量的増減を市場価格で評価したものである。仕掛工事中の重機械器具、屠蓄や商品用に飼育されている家畜も含まれる。93SNA では肉牛・立木のような育成資産も仕掛品在庫として評価することとなった。
 国民経済計算では、在庫品増加は、制度部門別及び形態別に表示される。このうち公的企業の在庫品増加は、食糧管理特別会計の麦等の原材料、資材、貯蔵品等の増減である。また、一般政府の在庫品増加は、国の原油備蓄等の増減を含む。

在庫品評価調整(Inventory Valuation Adjustment

 国民経済計算においては、発生主義の原則がとられており、在庫品増加は、 当該商品の在庫増減時点の価格で評価すべきものとされている。しかし入手可能な在庫関係データは企業会計に基づくものであり、後入先出法や先入先出法等企 業会計上認められている様々な在庫評価方法で評価されている。従って、期末在庫残高から期首在庫残高を差し引いて得られる増減額には、期首と期末の評価価格の差による分も含まれている。
 そこで企業会計から得られたデータをもとに国民経済計算を作成する場合、両者の評価の相違を調整する必要が生じ、その額を在庫品評価調整額と呼んでい る。すなわち、企業会計における評価額(簿価ベース)-国民経済計算における評価額(時価ベース)=国民経済計算における在庫品評価調整額という関係にある。この評価価格の差による分を除くための調整が在庫品評価調整である。
 在庫品評価調整は、具体的には以下のように行う。
(1) 企業会計に基づく基礎資料から名目在庫残高(簿価ベース)を求める。
(2) 当該商品の価格指数(在庫価格指数)を作成し、これを基礎に、企業の棚卸評価方法と在庫回転率に対応した在庫残高デフレーターを求める。
(3) 簿価在庫残高を在庫残高デフレーターで除すことにより、期末、期首の実質在庫残高を求め、両者の差をとって実質在庫品増加を算定する。
(4) 在庫価格指数の期中平均をとることにより、期中平均価格指数を求め、これを実質在庫品増加に乗じて、在庫品評価調整後の名目在庫品増加(時価ベース)を算出する。
(5) (1)の名目在庫残高の期末から期首を差し引き、在庫品評価調整前の名目在庫品増加を求め、これから(4)の在庫品評価調整後の名目在庫品増加を差し引いたものが在庫品評価調整額となる。
 なお、国民経済計算では、民間法人企業、公的企業、個人企業、一般政府の4制度部門の在庫品評価調整額が付表18に表章されている。

財産所得(Property Income

GIF


 財産所得とは、カネ、土地及び無形資産(著作権・特許権など)を貸借した場合、この貸借を原因として発生する所得の移転である。利子及び配当、地代(土地の純賃貸料)、著作権・特許権の使用料などが該当する。ただし、財産所得中の賃貸料には、構築物(住宅を含む)、設備、機械等の再生産可能な有形固定資産の賃貸に関するものは含まれない。なお、発生する所得の移転(利子、法人企業の分配所得(配当など)、海外直接投資に関する再投資収益、保険契約者に帰属する財産所得及び賃貸料)と、その使用する財産との関係は以下のようになっている。

GIF

最終需要(Final Demands

 産出あるいは輸入された財貨・サービスは、産業等の原材料として再び生産過程に入って中間消費されるものと、家計や一般政府の消費あるいは資本形成等として最終的に需要されるものに分かれる。後者を最終需要といい、国民経済計 算の項目でいえば、民間最終消費支出、政府最終消費支出、総資本形成、輸出からなる。従って最終需要は生産総額(総産出)+輸入から中間消費総額を差し引いた額に等しい。

最終消費支出(Final Consumption Expenditure)と現実最終消費(Actual Final Consumption

 93SNA勧告では、消費概念を「費用負担」と「便益享受」の異なる観点から捉えるため二元化しており、そのうち当該制度部門が実際に支出した負担額を示すものを「最終消費支出」、実際に享受した便益の額を示すものを「現実最終消費」と定義している。
 なお、家計と政府それぞれの「最終消費支出」と「現実最終消費」は勧告に従い、次のように計上されている。

  • 家計の現実最終消費は、家計の最終消費支出、対家計民間非営利団体の最終消費支出及び政府の個別消費支出の和。
  • 政府の現実最終消費は、政府の集合消費支出。

 

再評価勘定(Revaluation Accounts

 期首から期末に掛けてのストックの変化は、資本調達勘定及び調整勘定に記 録される。調整勘定のうち、価格変動に伴う資産価値の変化は、再評価勘定に記録される。わが国ではストック編の調整勘定の一つとして公表している。再評価 勘定は、一般物価の変動に伴う「中立保有利得および損失」と資産の相対価格の変化に伴う「実質保有利得および損失」に分けられる。この再評価勘定を設ける ことで、キャピタルゲイン/ロスを、財貨・サービスの一般の物価水準の変動分による影響と資産の相対価格の変化による影響に分けて捉えることが可能とな る。

産業連関表(Input-Output Table

 投入産出表ともいう。産業(商品)間の投入と産出を行列表示することにより、全ての財貨・サービスの生産とその処分に至る過程を把握しようとするものであり、アメリカの経済学者W・レオンチェフによって初めて作成された。
 産業連関表は生産活動を記録する内生部門と最終需要及び粗付加価値を表わす外生部門の二つの部門に分かれる。産業連関表の列(縦)は、各産業あるいは商品の費用構成を示し、生産のためにどのような財貨・サービスが使用(投入)されたか、また粗付加価値、営業余剰、雇用者所得、資本減耗引当、間接税(除関税)、(控除)経常補助金等がどれだけ発生したかを表している。一方、産業連関表を行(横)にみると、各財貨・サービスがどの部分にどのように販売されたかが示されており、これは中間需要と呼ばれる。外生部門の購入は最終需要といい、家計、政府等の最終消費、資本形成、輸出等からなり、それぞれの各列はその財貨・サービス別の構成を示す。各産業(商品)の行和と列和は等しく、その産業(商品)の総産出額である。
 我が国の産業連関表は昭和26年に初めて作成されて以来、30年以降、関係府省庁の協力によって5年ごとに作成されている(公表窓口は総務省)。産業連 関表は生産の相互関係を明らかにするとともに、産業構造、雇用構造、分配構造、あるいは価格構造についての分析や予測等多方面で利用されている。
 なお、国民経済計算は産業連関表を体系内に包摂しているが、産業連関表に相当する部分は(1)財貨・サービスの供給と需要、(2)経済活動別の国内総生産・要素所得、(3)経済活動別財貨・サービス産出表、(4)経済活動別財貨・サービス投入表で構成されている。

C.I.F.(Cost Insurance and Freight)建てとF.O.B.(Free on Board)建て

 C.I.F.建てとは、貨物代金のほか仕向け先までの運賃・保険料などを含む価格である。一方、F.O.B.建てとはこのような運賃・保険料など輸出船積み以降のコストを含まない価格である。なお、国民経済計算の海外勘定、及びその基礎統計である国際収支統計(財務省、日本銀行)と通関統計(財務省)の輸出入については次の通りとなっている。
 国民経済計算の海外勘定及び国際収支統計では、所有権が移転した時点で記録されることとなっていることから、計上される金額は、輸出、輸入ともF.O.B.建てとなっている。
 一方、通関統計では、記録時点が通関時であり、また計上される金額は通関金額となるため、輸出はF.O.B.建て、輸入はC.I.F.建てとなっている。

資金源泉主義(Fund Fount Approach)と最終支出主体主義(Final Expenditure Entity Approach

 購入された財貨・サービスの帰属する主体を区分する方法としては、支出に 充てた資金の出所によって行う方法(資金源泉主義)と、最終的な購入者によって行う方法(最終支出主体主義)とがある。
 地方政府が中央政府から4分の1の 国庫補助を受けて道路建設を行った場合を例にとると、資金源泉主義では、資金の出所に従って、4分の1は中央政府の総固定資本形成、他の4分の3を地方政 府の総固定資本形成として計上する。一方、最終支出主体主義の場合、4分の1の国庫補助は、中央政府から地方政府への資本移転として計上されたうえで、全額が地方政府の総固定資本形成となる。
 国民経済計算では資金源泉主義にはよらず最終支出主体主義を採っている。

資金循環勘定(Flow of Funds Accounts

 国民経済の金融面の動きを、経済部門別、各種金融取引項目別に相互間の流れとして捉えたものである。M・コープランドが作成したマネーフロー表(Money Flow Table)がその原形となっている。
 国民経済計算は資金循環勘定を体系内に包摂しているが、資金循環勘定に相当する最も詳細な基本表は、フロー編における「付表25 金融資産・負債の変動」及びストック編における「付表7 金融資産・負債の残高」である。推計に当たっては日本銀行作成の「資金循環統計」を基礎にしている。

市場価格表示および要素費用表示(At Market Prices,At Factor Costs

 市場価格表示とは、文字通り市場で取引される価格による評価方法であり、消費税等の生産・輸入品に課される税マイナス補助金を含んだ価格表示のことである。
 一方、要素費用表示とは、各商品の生産のために必要とされる生産要素に対して支払われた費用(雇用者報酬、営業余剰・混合所得、固定資本減耗)による評価方法であり、生産・輸入品に課される税及び補助金(控除)を含まない価格表示のことである。
 国民経済計算では、国内総生産、国民可処分所得は市場価格表示で、国民所得は市場価格表示と要素費用表示の両方で評価されている。

実質所得 (Real Incomes)

 実質所得とは、価格指数でデフレートされた所得のことをいい、基準年次の現実所得額と比較することにより、所得の実質購買力がどれだけ増減したかを見ることができる。
 わが国の93SNAでは、実質GDPに交易利得・損失を加えることにより、実質所得を算出することとし、次の2項目を表章している。

  • 実質国内総所得(GDI)=実質GDP+交易利得・損失
  • 実質国民総所得(GNI)=実質GDI+海外からの所得の純受取(実質)

 

資本移転(Capital Transfers

 反対給付を伴わない移転のうち、受取側の総資本形成やその他の資本蓄積あるいは長期的な支出の資金源泉となり、支払側の資産または貯蓄から賄われる移転である。経常移転と対比される。資本移転は当事者の投資や資産に影響を及ぼすが、消費には資産額やその構成の変化を通じて間接的な影響を及ぼすにとどまる。政府の民間企業に対する資本補助金(例えば、私鉄の新線建設費に対する補助)や相続税、贈与税などがこれに該当する。なお相続税、贈与税は「資本税」として記録される。

資本調達勘定(Capital Finance Accounts

 経済循環における実物、金融相互の関係を明らかにする勘定である。各制度部門毎に、実物面の資本蓄積(投資)及び資本調達(貯蓄)の状況を記録する実物取引表と、両者のギャップ(貯蓄と投資の差額)がどのような金融取引によって賄われたかを記録する金融取引表から構成される。
 実物取引表においては、借方に、各部門における蓄積(投資)の形態が示され、総資本形成(在庫品増加及び総固定資本形成)と土地の購入(純)が計上される。貸方は資本調達の源泉を示し、所得支出勘定から振り替えられる貯蓄、生産勘定から振り替えられる固定資本減耗及び他制度部門からの資本移転純受取が計上される。そして蓄積と資本調達の差額が純貸出(+)/純借入(-)として記録される。
 金融取引表は、資金をどのようにして調達し、どのような金融資産に運用したかを表わす勘定である。借方の欄には金融資産の増減、貸方の欄には負債の増減が示される。そして金融取引の貸借尻が純貸出(+)/純借入(-)(資金過不足)として記録される。
 「純貸出(+)/純借入(-)」と「純貸出(+)/純借入(-)(資金過不足)」は、概念上は一致すべきものであるが、推計資料などの相違があって、実際には統計上の不突合が生じている。
 各部門を統合した国民経済全体の統合勘定においては、実物取引では、土地の購入(純)は居住者間のみで行われるのですべて相殺される。また国内の資本移転は相殺されて海外との間の資本移転のみが残る。同様に、国内の金融取引は相殺されて、海外との金融取引のみが計上される。なお、国民経済計算では、実物取引と金融取引を接合させるために、土地の購入(純)と資本移転の項目を設定している。すなわち土地取引は、国民経済上は生産活動とはみなされないため、生産勘定には計上されないが、金融取引では資金の移動を伴う取引活動はすべて計上するので、この間のギャップを埋める必要がある。同様に、資本形成の資金源となる移転については反対給付を伴わない移転のうちから分離して把握する必要がある。

社会扶助給付(Social Assistance Benefits

 一般政府及び対家計民間非営利団体から家計への移転のうち、社会保障制度を通じる以外のものである。一般政府分としては生活保護費、原爆医療費、遺族等年金、恩給などがあげられ、対家計民間非営利団体分としては、無償の奨学金などが含まれる。

社会負担及び社会給付(Social Contribution and Benefits

 社会給付とは、93SNAでは「病気・失業・退職・住宅・教育あるいは家 族の経済的境遇のような一定の出来事あるいは状況から生じるニーズに対する備えとなることを意図して家計に支払われる経常移転」と定義されている。わが国の93SNAにおいては、(1)老齢年金などの「現金による社会保障給付」、(2)適格退職年金などの「年金基金による社会給付」、(3)生活保護などの「社会扶助給付」、(4)退職一時金などの「無基金雇用者社会給付」、(5)医療保険給付及び介護保険給付からなる「現物社会移転」、の五つに分類している。
 社会負担とは、93SNAでは「社会給付が支払われることに備えて社会保険制度に対して行う現実または帰属の支払」と定義されている。我が国の 93SNAでは、(1)社会保障基金への負担金のうち雇主負担分である「雇主の強制的現実社会負担」、(2)雇用者負担分である「雇用者の強制的社会負担」、(3)年金基金への負担金のうち雇主負担分である「雇主の自発的現実社会負担」、(4)雇用者負担分である「雇用者の自発的社会負担」、(5)無基金制度への負担金である「帰属社会負担」、の五つに分類している。

社会保障基金(Social Security Funds

 社会保障基金とは、①政府による賦課・支配、②社会の全体乃至広域の部分のカバー、③強制的加入・負担の3つの条件を全て満たす組織である。
 中央政府及び地方政府とともに一般政府を構成しており、国の社会保険特別会計、共済組合(国家及び地方公務員共済組合等)、及び健康保険組合などがそれに該当する。

純貸出(+)/純借入(-)(Net Lending / Net Borrowing

 実物面において、投資と貯蓄は経済全体をとれば一致するが、部門別に見る と一致しないのが普通である(例えば、家計は貯蓄超過主体である等)。このような投資と貯蓄の差は、一般にI-Sバランスと呼ばれる。これに資本移転の受 払を加えたものが「純貸出(+)/純借入(-)」であり、資本蓄積の原資と非金融資産の取得とのバランスを表している。
 また、各部門における「純貸出(+)/純借入(-)」は、金融取引を通じて調整されるが、そこでの金融資産の純増と負債の純増の差が「純貸出(+)/純 借入(-)(資金過不足)」である。したがって、「純貸出(+)/純借入(-)」と「純貸出(+)/純借入(-)(資金過不足)」は概念的に一致すべきも のであるが、実際の計数では推計の方法等により若干の開差が生じている。
 国民経済計算では、「純貸出(+)/純借入(-)」と「純貸出(+)/純借入(-)(資金過不足)」は、それぞれ、資本調達勘定の実物取引表と金融取引表のバランス項目となっている。

準法人企業所得からの引出し(Withdrawals from Income of Quasi-Corporations

 準法人企業の所有者がその所有する準法人企業から引き出す資金のことであり、株式会社の持分権者が受け取る配当金と性質が類似している。具体的には、公営住宅使用料などがこれに該当する。

消費者負債利子・その他の利子 (Consumer Debt Interest, Other Interest)

 家計の所得支出勘定における支払財産所得には、利子として「消費者負債利子」と「その他の利子」が計上されている。消費者負債利子は、住宅ローン以外の消費者としての家計が支払った利子であり、その他の利子は家計部門に含まれている個人企業が支払った利子である。
 主要系列表2「国民所得・国民可処分所得の分配」においては、消費者負債利子は家計(非企業部門)の利子支払として計上され、その他の利子は個人企業の企業所得に含まれる。

正味資産、国富(Net Worth,National Wealth

 国あるいは各制度部門の所有する実物資産及び金融資産の総額から、負債の総額を差し引いたものを正味資産といい、国民あるいは制度部門別貸借対照表のバランス項目である。国富とは、国全体の正味資産であり、実物資産と対外純資産の合計に等しい。

所得・富等に課される経常税(Current Taxes on Income and Wealth

 所得・富等に課される経常税とは、(1)労働の提供や財産の貸与、資本利得など様々な源泉からの所得に対して、公的機関によって定期的に課される租税及び(2)消費主体としての家計が保有する資産に課される租税、をいう。所得税、法人税、都道府県民税、市町村民税等のほかに家計の負担する自動車関係諸税及び日銀納付金がこれに該当する。
 なお、所得・富等に課される経常税と生産・輸入品に課される税の区別は、それが所得から支払われるか、生産コストの一部とみなされるかによって区別される。したがって、自動車税のような租税は、生産者が支払う場合には生産コストを構成するものとして生産・輸入品に課される税とみなされるが、家計が支払う場合 には生産活動との結びつきがないため所得・富等に課される経常税に分類される。

所得支出勘定(Income and Outlay Accounts

 所得支出勘定は、五つの制度部門別に、所得の受取と使用を記録する勘定である。制度部門別勘定を集計したものは、統合勘定における「国民可処分所得と使用勘定」として表章される。
 この勘定によって、生産活動の結果生み出された要素所得(雇用者報酬、営業余剰・混合所得等)及び財産所得がどの制度部門に分配され、さらに受け取られた所得がどのような形式で再分配されたかが明らかにされる。この勘定は、第1次所得の配分勘定、所得の第2次分配勘定、現物所得の再分配勘定、及び所得の使用勘定の四つの勘定から構成されており、所得と実物の流れである消費との連結が明確にされるとともに、貯蓄を通じて資本調達勘定と結びつけられている。

生産・輸入品に課される税(Taxes on Production and Imports

 生産・輸入品に課される税とは、(1)財貨・サービスの生産、販売、購入または使用に関して生産者に課せられる租税で、(2)税法上損金算入を認められ、(3)その負担が最終購入者へ転嫁されるものである。これは生産コストの一部を構成するものとみなされる点で所得・富等に課される経常税と区別される。
 例としては、消費税、関税、酒税等の国内消費税、不動産取得税、印紙税等の取引税、固定資産税、企業の支払う自動車税などがあげられる。住宅(含む土地)に対する固定資産税も、帰属家賃の一部を構成するとみなされ生産・輸入品に課される税として扱われる。また、日本中央競馬会納付金など、特定の公的企業における利益の一部も、財政収入を目的として徴収することから生産・輸入品に課される税に含まれる。
 なお、生産・輸入品に課される税は生産者の付加価値の一部になると同時に、一般政府においては、経常移転の受取として所得支出勘定・第1次所得の配分勘定に計上される。

生産者価格表示および購入者価格表示(At Producers’Values,At Purchasers’Values

 国民経済計算においては、リンゴ1個や鉄1トンといった生産数量を価額化(評価)する方法として、分析目的に応じた様々な方法を用いている。生産者価格表示とは生産物を生産者の事業所における価格で評価しようとするものである。したがって、商品が需要者に至るまでの運賃やマージンはすべて運輸業や商業の生産とされ、個々の商品には加算されない。生産者価格表示は産業連関表において用いられており、流通経路の相違による価格の相違を除去して生産構造そのものを捉えようとするところにねらいがある。
 購入者価格表示とは、購入段階における市場価格で評価したものであり、個々の商品価格は運賃やマージンが含まれているものである。したがって、主として需要分析のための評価法である。
(注)93SNAにおいて、生産者価格とは、生産者が受け取る金額から付加価値型税を差し引いた価格である。わが国のSNAにおいては、基礎資料の制約から、生産者価格に付加価値型税(消費税)を含めている。一方、国内総生産は、93SNAにおいて付加価値型税を含むものと定義されており、わが国SNAもこれに従っている。

制度部門別分類(Classification of Institutional Sectors

 経済活動別分類が生産についての意思決定を行う主体の分類であるのに対し、制度部門別分類は所得の受取や処分、資金の調達や資産の運用についての意思決定を行う主体の分類である。所得支出勘定、資本調達勘定、国民貸借対照表などに用いられる。この分類による取引主体には非金融法人企業、金融機関、一般政府、家計(個人企業を含む)、対家計民間非営利団体、の5制度部門がある。金融機関が独立部門として設定されているが、これは、金融面の活動において金融機関は他の部門とは全く異なる行動をとるので金融機関を分離する必要が あったことによる。

政府サービス生産者(Producer of Government Services

 国民経済計算では政府は単なる消費主体としてだけではなく、生産主体としても格付けられており、この場合に政府は政府サービス生産者と呼ばれる。
 政府が購入する財貨・サービスは、政府サービス生産のための中間投入として計上される。政府サービスの産出額はこの中間投入に雇用者報酬、固定資本減耗、生産・輸入品に課される税を加算したものである。生産された政府サービスの一部は家計等に販売されるが、大半は自らが消費し、政府最終消費支出として計上される。
 なお、家計に販売された政府サービス(国公立学校の授業料のように、家計が政府から直接購入したサービス)については家計最終消費支出として計上される。

政府最終消費支出(Final Consumption Expenditure of Government

 一般政府の財貨・サービスに対する経常的支出である政府サービス生産者の産出額(中間投入+雇用者報酬+固定資本減耗+生産・輸入品に課される税)から、他部門に販売した額(商品・非商品販売額)を差し引いたものに現物社会給付等(医療保険及び介護保険による給付分等)を加えたものを一般政府の最終消費支出として計上している。

総固定資本形成(Gross Fixed Capital Formation

 民間法人、公的企業、一般政府、対家計民間非営利団体及び家計(個人企業)が新規に購入した有形または無形の資産(中古品やスクラップ、土地等の純販売額は控除。マージン、移転経費は含む)であり、以下のものが該当する。
(1) 有形固定資産
 住宅、住宅以外の建物及び構築物、輸送用機械、機械設備、育成資産(種畜、乳牛、果樹、農園等)。民間転用が可能な防衛関係設備等も含む。
(2) 無形固定資産
 鉱物探査、コンピュータ・ソフトウェア(生産者が1年を超えて使用するソフトウェア(受注型ソフトウェア、パッケージ型ソフトウェアおよび自社開発ソフトウェア等)、プラント・エンジニアリング。
(3) 有形非生産資産の改良
 土地の造成・改良、鉱山・農地等の開発、拡張等。
 なお、建物、道路、ダム、港湾等建設物の仕掛工事は、建設発注者の総固定資本形成に含まれるが、重機械器具の仕掛工事は、その財貨生産者の在庫品増加に分類される。
 国民経済計算においては、総固定資本形成は、形態別(財別)、制度部門別及び経済活動別に表章される。

総資本形成(Gross Capital Formation

 民間及び公的企業、一般政府、対家計民間非営利団体、家計の生産者としての支出(購入及び自己生産物の使用)のうち、中間消費とならないものであり、在庫品増加と総固定資本形成からなる。
 中間消費と総固定資本形成の区分は、当該期間内において使用されつくすか、あるいは、将来に便益をもたらすかを基準としてなされる。例えば、固定資産等 の修理についてみると、固定資産の改造や、新しい機能の追加など、その耐用年数や生産性を大幅に増大させる支出(資本的修理)は総固定資本形成に含まれ る。これに対し、単なる破損の修理や正常な稼動を保つための支出(経常的修理・維持)は中間消費に分類される。また研究開発費等は企業会計で資本的支出に 計上されたとしても、通常有形資産に具体化されず、その支出による将来の便益が不確実であるため、中間消費として扱われる。広告費についても同様である。

総資本形成に係る消費税(Consumption Tax on Gross Capital Formation)

 消費税は事業者を納税義務者としているが、税金分は事業者の販売する財・サービスの価格に上乗せされ、最終的には消費者が負担する税であり、国民経済計算では生産・輸入品に課される税に分類されている。
 総資本形成(総固定資本形成及び在庫品増加)については、仕入税額控除できる消費税額は含まれていない。これは、課税業者の投資にかかる消費税は、他の仕入れにかかる消費税とともに、事業者が消費税を納入する時点で納税額から控除できるためである。こうした消費税の記録の仕方を修正グロス方式といい、国民経済計算ではこの方式が採用されている。

速報(Preliminary Estimates)と確報(Annual Revisions

 国民経済の活動状況を多面的・総合的に表わす指標としての国民経済計算は、その作成にあたって経済実態を正確に反映するという「正確性」を要請されるとともに、カレントな景気判断の基礎として、「速報性」を要請されている。
 しかし国民経済計算は、各種の基礎統計を利用して推計する加工統計であるため、「速報性」を高めようとすれば、利用しうる基礎統計の範囲は限られたものとなり、推計精度は後退せざるを得ない。こうした「速報性」と「正確性」のトレード・オフ関係に対して、統計利用者の便宜を図るためには、計数の公表をいくつかの段階にわけるとともに、それぞれの段階で推計精度の向上を図っていくことが必要とされる。
 国民経済計算においては、公表時期を出来るだけ早めるために、早期に利用できる基礎資料を用いて推計するとともに、より精度の高い基礎資料の入手に応じて、段階的に推計値を改定し、統計の「正確性」を一層高めていくこととしている。それを公表時期の早いものから順にみると、以下のようになる。
1. 1次速報
 1次QE(Quarterly Estimates)と呼ばれており、支出系列及び雇用者報酬について、約1ヶ月と2週間程度遅れで公表される。速報推計は、確報推計などの年次推計と比べ、推計に利用できる基礎情報に制約があるため、年次推計で得られた結果を極力活用しつつも、供給側統計及び経済主体側で把握された支出側統計を用いた独自の方法で行っている。
2. 2次速報
 2次QEとも呼ばれる。1次速報発表の1ヶ月後(当該四半期終了後約2ヵ月と10日程度後)に、1次速報によって公表した支出系列及び雇用者報酬について、新たに利用可能となった基礎資料による改定を行う。
3. 確報
 毎年12月頃公表するもので、前年度及びその四半期の計数の確定値である。支出系列については、コモディティー・フロー法を主体に推計し、産業別国内総生産は、付加価値法によって推計する。
4. 確々報
 確報公表の1年後に、「工業統計表品目編」等の新たなデータの入手により確報を改定する。
5. 基準改定
 「産業連関表」、「国勢調査」等が5年に1回公表され、また「消費者物価指数」等の物価指数も基準時が改定され るので、国民経済計算もこれに合わせて大幅な改定を行う。合わせて実質値の金額表示の基準となる参照年次(デフレーター=100となる年)も切り替える。

その他の金融資産・負債(Other Financial Assets and Other Liabilities

 「その他の金融資産・負債」には、「外貨準備高(貨幣用金・SDRを除く)」、「預け金・預り金」、「企業間信用・貿易信用」、「未収金・未払金等」、「直接投資」、「対外証券投資」、「その他対外債権・債務」及び「その他」という8つの内訳項目が含まれる。
 このうち新たに付け加えた「預け金・預り金」は、「資金循環統計」の「預け金」に相当する概念であり、特定の制度単位から別の制度単位に対する一定の目的を持った資金の預け入れである。具体的には証券会社等に預け入れられる証拠金や建物への入居保証料等が含まれる。「企業間信用・貿易信用」は、68SNAの「売上債権・買入債務」及び「貿易信用」に相当する概念であり、財・サービスの取引に伴って発生する債権・債務である。具体的には、売掛金・買掛金、受取手形・支払手形が含まれる。93SNA導入に伴うわが国新体系の金融資産分類で新たに設けられた「未収金・未払金等」の項目には、実際のキャッシュ受払の時間的なずれによって、差額分として発生する債権債務、及び非経常的な取引に伴って生じる(売上債権や買入債務とされない)債権債務が含まれている。「対外直接投資」は、居住者企業による非居住者企業の持分取得のうち、非居住者企業の支配を目的とするものであり、国際収支統計との整合性の観点から、株式資本、再投資収益、その他資本(不動産の売買等)の三つに分類している。また、「その他」項目は、金融資産・負債であるものの、金融資産・負債として表章されているどの項目にも含まれない債権債務などが記録される。

その他の資産量変動勘定(Other Changes in Volume of Assets Account

 期首から期末に掛けてのストックの変化は、資本調達勘定及び調整勘定に記 録される。我が国では、その他の資産量変動勘定をストック編の調整勘定の一つとして公表している。その他の資産量変動勘定には、災害等による予想しえない規模の資産の損失、金融機関による不良債権の償却、制度的構成及び分類の変化による調整等が記録される。

対外資産負債残高表(Closing Stocks of External Assets / Liabilities

 対外資産負債残高表(ストック編付表6)は、居住者と非居住者との間の取 引の結果として生じた対外債権債務の一定時点における残高を貸借対照表の形で示したもので、フロー編「付表20.海外勘定」(3)金融取引に対応してい る。本表は主に資金循環統計「金融資産・負債残高表」に基づいて推計している。

対家計民間非営利サービス生産者(Producers of Private Non-Profit Services to Households

 他の方法では効率的に提供し得ない社会的、公共的サービスを利益追求を旨 とすることなく家計へ提供する団体を対家計民間非営利団体という。これを生産者として把握する場合、対家計民間非営利サービス生産者と呼ぶ。対家計民間非 営利団体は、ある特定の目的を遂行するために集まった個人の自発的な団体であり、その活動は通常会員の会費や家計、企業、政府からの寄付、補助金によって 賄われる。労働組合、政党、宗教団体等のほかに、私立学校の全てがこれに含まれる。

対家計民間非営利団体最終消費支出(Final Consumption Expenditure of Private Non-Profit Institutions Serving Households

 国内総生産(支出側)の一構成項目であり、対家計民間非営利サービス生産 者(対家計民間非営利団体)の産出額から商品・非商品販売額(中間消費+家計最終消費支出)を控除したものである。すなわち、対家計民間非営利団体の販売 での収入は、生産コスト(中間投入+雇用者報酬+固定資本減耗+生産・輸入品に課される税)をカバーし得ず、その差額が自己消費とみなされ、対家計民間非 営利団体最終消費支出として計上されることになる。

中間投入(Intermediate Input

中間投入とは、「生産の過程で原材料費・光熱費・間接費等として投入された財貨及びサービス」をいう。
 ただし、機械等の固定資本の減価償却分や人件費はこれに含まれず、固定資本減耗、雇用者報酬として付加価値額に含まれる。
 産出額から中間投入額を控除したものが付加価値額である。

調整可処分所得および国民調整可処分所得(Adjusted Disposable Income and National Adjusted Disposable Income

 所得支出勘定における現物所得の再分配勘定において、可処分所得に現物社会移転の受払が記録された結果、調整可処分所得がバランス項目として導かれる。すなわち、制度部門別にみると、家計部門では「可処分所得」に「現物社会移転受取」が加わり、一般政府及び対家計民間非営利団体では「可処分所得」から各々の「現物社会移転支払」が除かれる。国全体の調整可処分所得(すなわち国民調整可処分所得)は、それら制度部門別の所得支出勘定を統合することによって求められ、国民可処分所得と同額となる。

調整勘定(Reconciliation Accounts

 貸借対照表と資本調達勘定との間の評価方法や概念における相違を調整する勘定であり、この勘定においては、
1. 価格変化による再評価:期末と期首との間の実現及び未実現のキャピタル・ゲイン及びキャピタル・ロス(資本利得及び損失)の調整
2. 基礎統計の不接合による断層
3. 予測不能な事態に基づく調整
4. 制度的構成及び分類の変化による調整
が該当する。
 調整勘定は、大きく三つに分かれて表章されており、具体的には「その他の資産量変動勘定」(2~4を含む)、「再評価勘定」(1を含む)からなる。このうち再評価勘定は一般物価水準の変化に伴う資産価値の変動を表わす「中立保有利得」と、資産の相対価格の変化による資産価 値の変動分を示す「実質保有利得」に細分化される。

貯蓄(Saving

 貯蓄は各部門の所得(雇用者報酬、営業余剰・混合所得等)の受取や各種の経常移転の受取からなる経常的収入から、消費支出や各種の経常移転支払からなる経常的支出を差し引いた残差として定義され、固定資本減耗を含む「総」ベース、これを含まない「純」ベースの両方で表わされる。したがって貯蓄は所得支出勘定(所得の使用勘定)のバランス項目であり、資本蓄積のための原資として資本調達勘定に受け継がれる。

賃貸料(Rent

 所得支出勘定における賃貸料は、土地の純賃貸料及び特許権、著作権等の使用料からなる。
 土地の賃貸は、建物や機械のそれとは異なり、所有者の生産活動とみなされない。賃貸された土地は、生産面ではあたかも使用者が所有しているかのように取 り扱われ、土地の所有に伴う税金、維持費等の経費は使用者が生産活動を行うためのコストの一部(生産・輸入品に課される税、中間投入)として計上され、ま た純賃貸料(=総賃貸料-税金等諸経費)は使用者の営業余剰・混合所得に含まれる。他方、所得支出勘定において、使用者から所有者に上述の純賃貸料が財産所得(賃貸料)の受払として計上される。
 特許権等の使用料についても同様に取り扱われる。

デフレーター(Deflator

 名目価額から実質価額を算出するために用いられる価格指数をデフレーターといい、デフレーターで名目価額を除して実質価額を求めることをデフレーションと呼ぶ。
 価格指数には基準時の名目ウェイトを用いるラスパイレス型指数と、比較時の名目ウェイトを用いるパーシェ型指数がある。
 我が国の国民経済計算では、デフレーターはパーシェ型指数を採用している(ラスパイレス型指数の例としては消費者物価指数や企業物価指数が挙げられる)。その計算のためには生産、消費、投資の各時点の品目別のウェイトが必要となる。国民経済計算は、コモディティー・フロー法で毎年品目別に供給と需要の推計を行っているので、これをウェイトとすることにより精緻なパーシェ型デフレーターの作成が可能になっている。

統計上の不突合(Statistical Discrepancies

 国内総生産のように、概念上一致すべきものであっても、支出系列と生産系列では推計上の接近方法が異なっているため、推計値に食い違いが生じることがある。この食い違いを統計上の不突合といい、勘定体系のバランスを図るために表章される。
 国民経済計算においては、国内総生産が、支出系列を推計する際のコモディティー・フロー法、生産系列及び分配系列を推計する際の付加価値法という別個の方法で推計されるため、統計上の不突合を生じさせる。また、表章はされないが、我が国の国民経済計算では、制度部門別資本調達勘定においても、実物面の純貸出(+)/純借入(-)と金融面の純貸出(+)/純借入(-)(資金過不足)の間に不突合があり、これを5制度部門について集計したものが統合勘定の統計上の不突合に一致するよう設計されている。

土地の購入(純)(Purchase of Land(Net)

 土地の購入(純)は、土地取引(売買)の収支尻であり、制度部門別資本調達勘定の実物取引表に表章される。
 ただし、土地取引に要した移転コスト(仲介者手数料、登記料等)は、土地取引には含まれない。また、土地の開発、改良のための支出も、有形非生産資産の改良として固定資本形成に計上され、土地取引には含まれない。
 土地取引は、居住者間でのみ行われるものとされる。非居住者が土地を買った場合には、居住者たる名目的な機関がこの土地の所有者となり、非居住者は、この名目的な機関に対し、土地の購入額に等しい債権を取得すると擬制している。したがって、国内部門の土地の購入(純)の合計は恒等的に0である。

年金基金による社会給付(Pension Funded Social Benefits

 年金基金とは、年金・退職一時金給付のために積み立てられた基金の運用主体であり、会社毎等特定の雇用者集団毎に設立され、厚生年金基金、適格退職年金等が含まれる。各基金は雇主及び雇用者の指示により市場取引を中心とした経済活動を行う。
 これら年金基金から、家計へ支払われる年金・一時金が年金基金による社会給付である。

発生主義(Accrual Basis

 国民経済計算では、取引の記録時点として、当該取引が実際に発生した時点を適用することとしており、これを発生主義の原則という。
 具体的に各取引についてみると、生産活動においては、財貨の生産やサービスの提供がなされた時点、消費支出、資本形成については、財貨・サービスが購入された時点または所有権が移転した時点がとられる。また、輸出入取引は、居住者と非居住者間で所有権が移転した時点で記録される。さらに、所得の受払は、その支払義務が発生した時点、金融取引については、資産負債の所有権が移転した時点、あるいは新たに債権債務関係が発生した時点がとられる。
 なお、発生主義に対して、現金主義(Cash Basis)という言葉があるが、これは支出や所得の受払について、その支払が実際に行われた時点を記録時点として適用する方法である。わが国の国民経済 計算は、原則として発生主義により記録されているが、税にかかる計数等一部については、基礎統計である決算書に基づき、現金主義による記録が行われている。

非商品販売(Non-Commodity Sales

 政府サービス生産者及び対家計民間非営利サービス生産者の生産する財貨・サービスの一部は家計等に対して販売される。それらの中には価格が生産コストをカバーしていないものがあり、これを商品販売と区別して非商品販売という。
 このような財貨・サービスの家計の購入は、購入と家計の支払との間に明確で直接的な結びつきがあり、かつその支払が家計の自由意思によってなされるという点で、強制手数料やその他の移転と区別される。
 政府サービス生産者の非商品販売としては国公立学校の授業料などがあげられる。対家計民間非営利サービス生産者の非商品販売としては私立学校の授業料などがあげられる。

非生命保険(Non-Life Insurance)と生命保険(Life Insurance

 損害保険会社等の非生命保険会社(制度部門では金融機関に含まれる)は、受取保険料と支払保険金の差額がその主たる収入源泉であるが、この額には保険サービス料のほかに貯蓄的要素も含まれるので、この分は保険契約者の持分として産出額を計算する上では除外する必要がある。
 すなわち、非生命保険の産出額(帰属サービス料)は、「(受取保険料)-(支払保険金)-(非生命保険の準備金のうち保険契約者持分の増加分-純財産運用収益)+(受取手数料)」で表わされる。産出額は、家計部門は最終消費支出し、法人企業部門は中間消費する。
 また、非生命保険は契約による所得の移転として所得支出勘定にもあらわれ、非生命保険会社は純保険料を受け取り、保険金を支払う。純保険料とは、保険リスクコストであって、それは保険金の額と等しい。
 生命保険も非生命保険と同様に、保険的要素のほかに貯蓄的要素を含むために、産出額(帰属サービス料)は、「(受取保険料)-(支払保険金)-(生命保険の準備金のうち家計持分の増加分-純財産運用収益)」となる。これを家計が最終消費支出する。また、この貯蓄的要素は資産取引としても扱われ、生命保険 準備金のうち家計持分は、家計の金融資産とみなされるため、家計に全額帰属される。生命保険には、生命保険会社のほか共済などが含まれている。なお、年金基金の産出額については、コスト積み上げ方式に変更している。

FISIM

= 間接的に計測される金融仲介サービス(Financial Intermediation Services Indirectly Measured, FISIM)の項を参照。

V表(経済活動別財貨・サービス産出表)(Make Matrix

V表は、行に経済活動を、列に財貨・サービスをとった産出額の行列で、各経済活動がどの財貨・サービスをどれだけ産出したかを生産者価格で記録したものであり、行和は経済活動別産出額を、列和は財貨・サービス別産出額を、それぞれ表している。V表は、国民経済計算において経済活動別財貨・サービス投入表(U 表)とともに産業連関表に相当する部分を構成する。
 V表の対角線に計上される計数は、ある経済活動が主産物として産出する財貨・サービスを示す。また、対角線以外に計上される計数は、主に副次生産物を示し、当該財貨・サービスを主産物として産出する経済活動が他にあることを示している。
 ちなみに、副次生産物とは、「同一事業所で、主産物と生産技術的な結合関係はないが、主産物と併せて生産される場合にそのウェイトの低い方」をいう。例えば、自動車製造業で生産される航空機用エンジンがこれに該当する。
 なお、ある1つの財の生産に当たって、生産技術上目的とした財の他に、必然的に別の財が一定量だけ生産される場合がある。その財を主生産物として生産する部門が、他にある場合は「副産物」といい、ない場合には「屑」という。

他に分類されない経常移転(Miscellaneous Current Transfers

 この項目は、居住者制度単位間または居住者単位と非居住者単位との間で行われる様々な異なった種類の経常移転からなるが、主要なものとして、対家計民間非営利団体に対する経常移転、家計間の経常移転、科料及び罰金等がある。

保険・年金準備金(Insurance and Pension Reserves

 「保険・年金準備金」は「保険準備金」と「年金準備金」に分けて表章している。
 「保険準備金」は、積立型保険の積立金のうち、加入者の持分に相当する部分であり、生命保険会社の積立型生命保険、損害保険会社の積立型損害保険に係る責任準備金が含まれている。
 なお、生命保険会社及び損害保険会社の貸借対照表における保険契約準備金は、「(1)支払準備金」、「責任準備金」、「(2)社員配当準備金」に区分され、責任準備金はさらに、「(3)未経過保険料」、「(4)保険料積立金」、「(5)危険準備金」に区分される。このうち、「保険準備金」には、(2)社 員配当準備金、(4)保険料積立金の部分を責任準備金として計上している。これは、新体系においては、保険料、保険金を発生主義によって記録するため、(1)、(3)については、「その他の金融資産・負債」の内訳項目である「未収金・未払金等」として記録し、(5)については、(掛捨型保険について)予想できない大規模な保険事故の発生に伴う保険金支払に備える性格のものであり、加入者に対する支払債務ではなく、保険会社の内部留保と考えられるため、新体系においてはこれを「保険準備金」には含めていないためである。
 また「年金準備金」には、私的年金の積立金のうち、加入者の持分に相当する部分である。具体的には、厚生年金基金や適格退職年金等の責任準備金及び生命保険会社の個人年金商品に係る責任準備金が含まれている。

保険契約者に帰属する財産所得(Property Income Attributed to Insurance Policy Holders

「生命保険準備金及び年金基金に関する家計の純持分(責任準備金)」と、「保険料の前払いに対する準備金(未経過保険料)及び未払い保険金に対する準備金(支払準備金)」を合わせて保険技術準備金というが、保険契約者に帰属する財産所得とは、保険技術準備金の投資により得られる所得のことであり、これは93SNAにおいては、保険契約者に帰属することから保険契約者の受取として記録し、追加保険料として再び保険会社に全額支払われるように取り扱う。

補助金(Subsidies

 国民経済計算上の補助金とは、(1)企業に対して支払われるものであること、(2)企業の経常費用を賄うために交付されるものであること、(3)財・サービスの市場価格を低下させると考えられるものであること、の三つの条件を満たす経常交付金である。
 一方、対家計民間非営利団体や家計への経常的交付金は補助金ではなく政府による他の種類の経常移転(他に分類されない経常移転)として扱われる。また、投資、あるいは資本資産、運転資産の損失補填のために産業に対して行われる移転は、補助金ではなく資本移転に分類される。

民間最終消費支出(Private Final Consumption Expenditure

 家計最終消費支出と対家計民間非営利団体最終消費支出の合計である。

無基金雇用者社会給付および帰属社会負担(Unfunded Employee Social Benefits and Imputed Social Contributions

 無基金雇用者社会給付とは、社会保障基金、金融機関(年金基金)などの外部機関を利用せず、また自己で基金を設けることもせず、雇主がその源泉から雇用者に支払う福祉的な給付である。これは特定の基金はなくとも雇主が支払う義務を負っているものと考えられる。
 この給付は、所得支出勘定の「所得の第2次分配勘定」において、企業等の支払や家計の受取に計上される。ただし、家計の「第1次所得の配分勘定」の雇用者報酬(受取)にも、この支払分が雇主の帰属社会負担として含まれていることから、二重計算を避けるため、家計の「所得の第2次分配勘定」において、同額を帰属社会負担として計上し、家計から企業等への移転に扱うという帰属計算を行っている。

無形非生産資産(Intangible Non-Produced Assets

 無形非生産資産とは、企業会計に おける特許権、著作権、商標権、及び意匠権などが含まれる。国民経済計算では、これら無形非生産資産の評価が困難であるため、公的企業、一般政府について国有財産台帳の残高を計上するほかは、民間法人企業について、購入により取得された特許権等に限り計上し、貸借対照表の欄外に参考として掲載 している。

持ち家の企業所得(Entrepreneurial Income of Imputed Service of Owner-Occupied Dwellings

 「持ち家」は個人所有かつ自己居住にかかる住宅を独立の企業として取り扱っているものであり、その「企業所得」は他の企業所得と同じ概念である。
 計算は次の算式による。
 自己居住住宅の家賃評価額-中間投入(修繕等)-固定資本減耗-生産・輸入品に課される税(固定資産税等)-住宅ローン支払利子-支払地代

持ち家の帰属家賃(Imputed service of owneroccupied dwellings

 帰属家賃とは、実際には家賃の受払を伴わない住宅等について、通常の借家 や借間と同様のサービスが生産され消費されるものとみなして、それを市場価格で評価した帰属計算上の家賃をいう。
 「持ち家の帰属家賃」は、実際には家賃の受払を伴わない自己所有住宅(持ち家住宅)について計算した帰属家賃のことである。国民経済計算では住宅自己所有者(家計)は不動産業(住宅賃貸業)を営んでいるものとされるため、「持ち家の帰属家賃」は家計の生産額に含まれ、営業余剰(=「持ち家の帰属家賃」-中間投入-固定資本減耗-生産・輸入品に課される税)は家計の営業余剰に含まれる。
 また、帰属家賃には、「持ち家の帰属家賃」以外に「給与住宅差額家賃」も含まれる。これは、給与住宅に実際に支払われた家賃と市場評価額との差額分であ る。この差額分は、実際に支払われた家賃とともに、給与住宅提供者が不動産業(住宅賃貸業)として生産しこれを家計が購入(家計最終消費支出)するとみな すことで、生産・支出ともに市場価格での評価を行う。さらに「給与住宅差額家賃」分は、給与住宅提供者から家計への現物給与として雇用者報酬に含まれる。

有形固定資産(Tangible Fixed Assets

 有形固定資産とは、住宅、住宅以外の建物、その他の構築物、輸送用機械、 機械設備等、財貨・サービスの生産のために使用される財である。ただし、政府の保有する軍事用耐久財は除かれ、家計(個人企業を含む)の保有する自動車等 の耐久財は、それが生産活動に使用される場合に限り固定資産に含まれる。

有形非生産資産(Tangible Non-Produced Assets

 生産資産とは、生産活動の成果として生み出され、かつ生産のために使用される有形資産であり、在庫と有形固定資産、無形固定資産からなる。一方、有形非生産資産とは、生産活動の直接の成果物ではない有形資産であり、土地、地下資源、漁場などからなる。
 なお、固定資本形成のうち、土地の造成・改良、鉱山及び漁場の開発など有形非生産資産と密接不可分なものは、有形非生産資産の改良として分類され、貸借対照表においては、それぞれ該当する有形非生産資産の価値の追加として含められる。

U表(経済活動別財貨・サービス投入表)(Absorption Matrix;Use Mat rix

 U表は、行に財貨・サービスを、列に経済活動をとった投入額の行列で、各経済活動が生産のためにどの財貨・サービスをどれだけ投入したかを購入者価格で表示したものであり、列和は経済活動別中間投入額を表している。U表は、国民経済計算において経済活動別財貨・サービス産出表(V表)とともに産業連関表に相当する部分を構成する。

歴史的記念物(Historic Monuments

 歴史的記念物とは、公的機関により、歴史的に重要性をもつものとして目録 に記載されている建物及びその他の構築物、彫像などである。我が国の場合、文化財保護法の規定により、重要文化財等に指定されたものを対象とし、政府のこ れらの文化財保存のための支出累計額を貸借対照表の欄外に参考として記載している。

連鎖方式と固定基準年方式(Chain-Linked Method Fixed-Based Method

 固定基準年方式のラスパイレス指数やパーシェ指数は、相対価格の変化が大きい場合、経年変化するにつれて「指数バイアス」(あるいは「代替バイアス」)がかかることが知られている。すなわち、数量と価格に負の相関があるとき、ラスパイレス指数には上方、パーシェ指数には下方のバイアスがかかる。一方、連鎖指数は以下の式でもわかるように隣接する2時点間の比較に着目した指数であり、毎期基準改定しているのと同じこととなるため「指数バイアス」はほとんど生じないことが知られている。このため、93SNAでは実質値及びデフレーターの計算においては連鎖方式を採用することが勧奨されている。わが国の国民経済計算では、国内総生産系列(支出側及び生産側)において連鎖方式(実質値:ラスパイレス型、デフレーター:パーシェ型)が採用されている。
連鎖方式によるパーシェ型デフレーターt時点におけるパーシェ型連鎖デフレーターは以下の式で表すことができる。
gif
 なお、連鎖方式では、実質値における「加法整合性」が成立しない。すなわち、固定基準年方式の場合、実質値の内訳項目を合計したものは、集計項目の実質 値と一致するが(「加法整合性」が成立)、連鎖方式では一致しない。このため、わが国の国民経済計算では、主要系列表1では「開差」の欄を設けることで、 またフロー編付表2では連鎖の実質値を指数で表章することで、加法整合性の欠如を示している。
 国内総生産(生産側)デフレーターはダブルデフレーションで作成されるため、主要系列表3やフロー編付表2における連鎖デフレーターも同様にダブルデフレーション方式となっている。
gif

  • 当ページに掲載の資料の一部はPDF形式のファイルであるため、閲覧するにはAdobe Reader別ウインドウで開きますが必要となります。
内閣府 Cabinet Office, Governmentof Japan経済社会総合研究所
〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館