内閣府 Cabinet Office, Government of Japan

内閣府ホーム > 統計情報・調査結果 > 国民経済計算(GDP統計) > 統計データ > 用語の解説(国民経済計算)

用語の解説(国民経済計算)

PDF版用語解説はこちら(PDF形式:1070KB)別ウインドウで開きます


あ行

用語 解説
育成生物資源
Cultivated Biological Resources
育成生物資源とは、その自然成長や再生が、制度単位による直接の制御、責任、管理の下にあるような動植物資源を指し、繰り返し生産物を生み出すもの(下記を除く)は「固定資産」として、一回限り生産物を生み出すもの及び複数回生産物を生み出すもののうち自己勘定以外で産出されるものは「在庫」の「仕掛品」として記録される。
固定資産としての育成生物資源には、乳牛や果樹のような動植物が含まれ、総固定資本形成という場合、会計期間中の育成自然成長分が記録される。
一方、在庫(仕掛品)としての育成生物資源は、一回限り生産物を生み出すものとして民有林の立木、肉用牛、魚介類、花き類等、複数回生産物を生み出す動植物のうち自己勘定以外で産出されるものとして出荷される前の競走馬が含まれる。在庫変動には、期間中の育成自然成長分が記録される。
一般政府
General Government
一般政府は、中央政府、地方政府及びそれらによって設定、管理されている社会保障基金が含まれる。財貨・サービスの生産者という観点では非市場生産者であり、かつ公的部門に属する機関から成り、政府により支配、資金供給され、非市場生産に携わる非営利団体も含まれる。
中央政府には、国の一般会計のほか、特別会計の一部、独立行政法人等の一部が含まれる。地方政府には、地方公共団体の普通会計のほか、公営事業会計の一部、地方独立行政法人の一部が含まれる。社会保障基金については、別項を参照。
一般政府内の経常移転
Current Transfers Within General Government
一般政府内の経常移転は、一般政府の内訳部門(中央政府、地方政府、社会保障基金)の間の経常移転を指す。所得の第2次分配勘定において、受取側、支払側ともに一般政府にのみ記録され、受取、支払ともに同額が計上される。また、フロー編の付表6-1「一般政府の部門別勘定」においては、中央政府、地方政府、社会保障基金ごとに他の内訳部門に対する、あるいは他の内訳部門からの経常移転が記録されるととともに、どの内訳部門からどの内訳部門への経常移転がどの程度あるのか、というマトリクス形式でも計数を記録している。なお、受取側の総固定資本形成に用いられる資金の移転等は、資本移転として扱い、付表6-1において同様に記録している。
インプリシット・デフレーター
Implicit Deflator
実質化を行うべき対象についてのデフレーターが直接作成されるのではなく、その対象の構成項目ごとにデフレーターを作成して実質値を求め、全体としてのデフレーターは、(名目値)/(各構成項目の実質値の合計)として逆算によって求められる場合がある。
例として、ある支出項目が二つの個別品目で構成されているケースを考え、それぞれの品目の名目値をX1、X2とし、デフレーターをP1、P2とする。このケースでは当該支出項目の名目値(X)は、X1+X2となり、実質値(XR)は個別品目の実質値の合計(X1/P1+X2/P2)となる。ここで当該支出項目のデフレーター(P)はX÷XR〔=(X1+X2)/(X1/P1+X2/P2)〕として事後的に求められることになる(連鎖方式では実質値の計算には複数時点のデータが必要となるが基本的な考え方は左記のとおり)。このようなデフレーターの算出方法をインプリシット方法といい、求められたデフレーターをインプリシット・デフレーターと呼ぶ。
インプリシット・デフレーターは指数算式の面からみれば、パーシェ型(比較時数量ウェイト)価格指数となる。国民経済計算で表章されているデフレーターは、コモディティ・フロー法による細かい商品別の情報を利用して算出されるインプリシット・デフレーターであり、精緻なパーシェ型デフレーターとなっている(デフレーターの項も参照)。
営業余剰・混合所得
Operating Surplus and Mixed Income
営業余剰・混合所得は、生産活動から発生した付加価値のうち、資本を提供した企業部門の貢献分を指すもので、制度部門としては、非金融法人企業、金融機関、家計の三つの部門にのみ発生する。生産に使用した固定資産から発生する固定資本減耗を含む場合は(総)、含まれない場合は(純)として表記される。一般政府と対家計民間非営利団体は非市場生産者であり、定義上その産出額を生産費用の合計として計測していることから、営業余剰・混合所得(純)は存在しない(ただし、一国経済の所得支出勘定の営業余剰・混合所得(総)には、一般政府や対家計民間非営利団体の固定資本減耗分が含まれる)。営業余剰・混合所得(純)は、大きく営業余剰(純)と混合所得(純)に分けられる。営業余剰(純)は、生産活動への貢献分として、法人企業部門(非金融法人企業と金融機関)の取り分を含むとともに、家計部門のうち持ち家分の取り分も含む。一方、「混合所得」は、家計部門のうち持ち家を除く個人企業の取り分であり、その中に事業主等の労働報酬的要素を含むことから、「営業余剰」と区別して「混合所得」として記録される。

か行

用語 解説
海外勘定
Rest of the World Account
海外勘定は、海外との財貨・サービスの輸出入や所得・移転等の経常取引や資本取引、金融資産・負債の取引を記録する勘定である。非居住者を一括して一つの部門として表す「海外部門」の視点から見た、当該国(日本)に対する各種の取引や受払が記録される。このため、当該国の立場から、海外との輸出入や受払といった取引を記録する「国際収支統計」(財務省、日本銀行)とは受払の関係が逆となる。海外勘定の概要はフロー編統合勘定に、その詳細は同付表19においてそれぞれ示される。その内容は、基本的に、国際通貨基金(IMF)が策定する国際収支に関する国際基準(国際収支マニュアル)に準拠した「国際収支統計」の内容と整合的なものとなっているが、国民経済計算の概念に合わせる観点から、「国際収支統計」の内容を一部組み替えている。また、金融取引は「国際収支統計」に加えて、日本銀行が作成している「資金循環統計」を用いて推計されている。
海外直接投資に関する再投資収益
Reinvested Earnings on Foreign Direct Investment
海外直接投資に関する再投資収益は、海外直接投資の投資先である現地企業(海外直接投資企業という)の留保利益を指す。こうした留保利益は、現実には投資元である直接投資家には分配されないものであるが、国民経済計算上は、一旦、直接投資家に財産所得として分配され、同額が海外直接投資企業に対して再投資されたかのように取り扱う(いわゆる迂回処理)。なお、本項目の一国合計は、「国際収支統計」における「直接投資収益」の「出資所得」のうち「再投資収益」が相当するが、「国際収支統計」においては、基礎資料の制約上、再投資収益は約17か月遅れでしか捕捉できないため、直近期においては、当該期に稼得した額ではなく、17か月前の値が計上されている。このため、国民経済計算では、こうした直近期間について、本来の稼得時期として計上されている値の最近値(直近期の17か月前の値)を基に推計しており、「国際収支統計」の計上額とは一致しない。
家計(個人企業を含む)
Households (including Private Unincorporated Enterprises)
家計は、生計を共にする全ての我が国の居住者である人々の小集団が含まれる。自営の個人企業(非法人企業)も含まれる。なお、個人企業の中には、自営農家等のほか、住宅の自己所有者(持ち家)分も含まれ、不動産業(住宅賃貸業)を営むものとして記録される。
家計最終消費支出
Final Consumption Expenditure of Households
家計最終消費支出は、家計(個人企業を除いた消費主体としての家計)の新規の財貨・サービスに対する支出であり、同種の中古品、スクラップの純販売額(販売額-購入額)が控除される。土地と建物はこの項目に含まれない。また、農家における農産物の自家消費、自己所有住宅の帰属家賃、賃金・俸給における現物給与等も計上される。
家計最終消費支出には、国内・国民二つの概念があり、前者(国内市場における最終消費支出)は、ある国の国内領土における居住者たる家計及び非居住者たる家計の最終消費支出である。他方、後者(居住者たる家計の最終消費支出)は、前者に居住者たる家計の海外での直接購入を加え、非居住者たる家計の国内市場での購入を差し引いたものである。統合勘定、所得支出勘定には後者の概念で計上される。
国内家計最終消費支出は、支出の目的別分類(消費者がどのような種類の効用を求めて財貨・サービスを購入したかの分類)、購入品目の形態別分類(耐久財、半耐久財、非耐久財、サービス)に従って表章される。
貸出・借入
Loans
貸出(資産側)及び借入(負債側)は、金銭消費貸借契約や割賦販売契約等によって生じた金銭債権であり、国内金融機関が保有する金銭消費貸借形態の金銭債権以外にも、割賦債権形態等の金銭債権、現先・債券貸借取引のうち債券を担保とした信用供与とみなせるもの、さらには非金融法人企業など他の部門が保有する貸出債権も本項目に含まれる。貸出、借入は、基本的に全ての制度部門に記録される。平成23年基準以降は、2008SNAを踏まえ、名目価値(残存元本の額面価額)で記録されている(名目価値から個別貸倒引当金を控除したものが公正価値に相当する(ノン・パフォーミング貸付の項を参照))。
具体的に、本項目には、日銀貸出金(借入金)、コール・手形、民間金融機関貸出(借入)、公的金融機関貸出(借入)、非金融部門貸出金(借入金)、割賦債権(債務)、現先・債券貸借取引が含まれる。
可処分所得(Disposable Income
及び国民可処分所得(National Disposable Income
可処分所得は、所得の第2次分配勘定におけるバランス項目であり、第1次所得バランスに、各種経常移転の受取を加えたものから、各種経常移転の支払を差し引いて導出される。換言すれば、制度部門ごとの経常収入の合計から経常支出の合計を控除したもので、手元に残った処分可能な所得を示す。第1次所得バランスが再分配前の所得であると位置付けると、可処分所得は(現物社会移転を除く)再分配後の所得と解することができる。可処分所得の経済的な意味としては、資産を処分したり負債を増やしたりすることなく、最大限財貨やサービスの消費に使うことのできる価額ということになる。他のバランス項目と同様に、可処分所得は、固定資本減耗を含む(控除前の)「総」ベースと、含まない(控除後の)「純」ベースがある。
各制度部門の可処分所得(純)を合計した、居住者全体の可処分所得は「国民可処分所得」(Net National Disposable Income; NNDI)と呼ばれ、「国民所得(市場価格表示)」に、海外からの経常移転の純受取を加えたものに等しい。つまり、国民全体の処分可能な所得を表しており、これを支払の面からみると、民間及び政府の最終消費支出と貯蓄に処分される。
制度部門別の可処分所得の処分についてみると、非金融法人企業では最終消費支出を行わないため、可処分所得は全額貯蓄となる。金融機関については、可処分所得から年金受給権の変動調整を除いた額が貯蓄となる。他方、最終消費の主体である一般政府、対家計民間非営利団体及び家計では、可処分所得は最終消費支出と貯蓄に処分される。
貨幣用金・SDR等
Monetary Gold・Special Drawing Rights, etc.
貨幣用金・SDR等は、貨幣用金、SDR(特別引出権)、IMFリザーブポジションから成り、一般政府(中央政府)または金融機関(中央銀行)の資産、一般政府(中央政府)の負債にのみ計上される。貨幣用金は、通貨当局が所有権を持ち、金地金及び非居住者の提供する不特定保管金口座から構成される(換言すれば、通貨当局(中央政府ないし中央銀行)が外貨準備として保有する金を指す)。SDRは、国際通貨基金(IMF)により創出された国際準備資産であり、既存の準備資産を補完するために加盟国に配分されるものである。IMFリザーブポジションは、IMF加盟国がその出資金に応じ無条件に借り入れることができる相当額等を示す。
機械・設備
Machinery and Equipment
機械・設備は、固定資産の形態の一つであり、建物や構築物や建物に必要不可欠なものを除く機械や設備といった固定資産を指し、さらに「輸送用機械」、「情報通信機器」、「その他の機械・設備」に分かれる。なお、政府の防衛サービスの目的で使用される戦車や艦艇等については、本項目ではなく「防衛装備品」に含まれる。
輸送用機械は、人や物を移動させるための機械・設備であり、乗用車やバス・トラック、トレーラー、オートバイ、船舶、鉄道車両、航空機等が含まれる。
情報通信機器は、コンピュータや携帯電話、テレビその他の通信用の機械・設備、事務用機器が含まれる。
その他の機械・設備は、他に分類されない機械・設備から成り、具体例として、計測機器や医療用機械等の業務用機械、建設機械や工作機械、農業用機械等の生産用機械、ボイラやタービン等のはん用機械、器具・備品等が含まれる。
企業所得
Entrepreneurial Income
企業所得とは、主要系列表2「国民所得・国民可処分所得の分配」で記録される国民所得の内訳項目の一つであり、非金融法人企業、金融機関及び個人企業(家計に含まれる)の営業余剰・混合所得(純)に受け取った財産所得を加算し、支払った財産所得を控除したもの、すなわち所得支出勘定・第1次所得の配分勘定における「第1次所得バランス(純)」に対応する概念である。企業所得は、民間法人企業所得、公的企業所得、個人企業所得に分類される。
一方、主要系列表2には、参考として「法人企業所得」を表章している。これは、法人企業(非金融法人企業、金融機関)について、営業余剰(純)から利子、その他の投資所得の支払、支払賃貸料を差し引き、受取財産所得を加えたものを指す。言い換えれば、法人企業の第1次所得バランス(純)に、法人企業の分配所得(配当、準法人企業からの引出し)及び海外直接投資に関する再投資収益の支払を足し戻したものと等しい。法人企業所得のうち民間分は「民間法人企業所得」として表章している。
帰属計算
Imputation
帰属計算とは、国民経済計算の特有な概念であり、財貨・サービスの提供ないし享受に際して、実際には市場でその対価の受払が行われなかったのにもかかわらず、それがあたかも行われたかのようにみなして擬制的に取引計算を行うことをいう。例えば、家計最終消費支出には、持ち家に係る住宅賃貸料である帰属家賃や農家における農産物の自家消費等が含まれる。
期末貸借対照表勘定
Closing Balance Sheet Account
期末貸借対照表勘定とは、会計期間末について、一国経済ないし制度部門ごとに、それらが所有する資産(非金融資産及び金融資産)と負債の残高(ストック額)、そしてその差額(バランス項目)としての「正味資産」について、原則として評価時点における市場価格(時価)によって記録する勘定である。「正味資産」は、一国経済で見た場合(居住者制度部門を合計した場合)、「国富」とも呼ばれる。
金融勘定
Financial Accounts
金融勘定は、期末貸借対照表の会計期間中の変化のうち取引要因による変化という観点からみれば、金融資産や負債の取引(購入、売却、調達、返済)を示す勘定である。また、所得支出勘定に始まる一連の勘定の流れとしてみれば、資本勘定のバランス項目である「純貸出(+)/純借入(-)」を引き継いで、同項目が、金融資産や負債の変化によってどう説明されるかを示す勘定となる。つまり、純貸出であれば資金余剰、純借入であれば資金不足ということを示すが、それがどのような金融資産や負債の増減で説明されるのかを表す勘定ということになる。
金融勘定は、借方には金融資産の取引による増減が、貸方には負債の取引による増減と、資産の増減と負債の増減の差額である純貸出(+)/純借入(-)が記録される。ここで、純貸出(+)/純借入(-)は、概念的には、資本勘定のバランス項目と一致すべきものであるが、一般に、使用する基礎統計や推計の方法論の差異により現実には一致せず、資本勘定のバランス項目と区別するために、金融勘定では「純貸出(+)/純借入(-)(資金過不足)」と呼称される。
金融機関
Financial Corporations
金融機関は、全ての我が国の居住者のうち、主要な活動が金融仲介業務及びそれを促進する業務である法人企業及び準法人企業から成る。非金融法人企業の場合と同様、金融機関には、金融的性格を持つ市場生産に従事する非営利団体も含まれる。また、政府の所有・支配に応じて、民間金融機関か公的金融機関に分かれる。
金融機関は、その活動や負債の流動性に応じて9つの内訳部門に区分され、金融資産・負債の取引や残高を詳細に記録する付表(フロー編の付表24「金融資産・負債の取引」及び、ストック編の付表6「金融資産・負債の残高」)において、これらの内訳部門ごとに計数が表章される。具体的には、内訳部門は、中央銀行、預金取扱機関、マネーマーケットファンド、その他の投資信託、公的専属金融機関、保険、年金基金、その他の金融仲介機関、非仲介型金融機関から成る。
金融派生商品・雇用者ストックオプション
Financial Derivatives and Employees Stock Option
金融派生商品・雇用者ストックオプションは、大きく「金融派生商品」と「雇用者ストックオプション」に分かれる。このうち、金融派生商品は、特定の金融商品(原債権)から派生し、原債権の元本(想定元本)部分について資金の授受を行わない金融商品である。金融派生商品は、さらにフォワード系とオプション系から成り、それぞれの金融派生商品の市場価値が記録されている。なお、金融派生商品については、「資金循環統計」(日本銀行)と同様、資産・負債残高の変化を取引額と調整額に分けるための情報に制約があることから、会計期間中の残高の変化分は全て調整勘定(再評価勘定)に記録する扱いとなっている。
雇用者ストックオプションは、企業がその雇用者(役員を含む)に対して付与する自社株式の購入権(所与の日付(権利付与日)になされる取決めであり、定められた日付(権利確定日)またはその後一定の期間内(権利行使期間)のいずれかにおいて、雇用者がその雇主企業の株式について所与の株数を予め定められた価格(行使価格)で購入することができる権利)のうち、権利が確定したがまだ行使されていないものを指す。
経済活動別分類
Classification of Economic Activities
制度部門別分類が所得の受取や処分、資金の調達や資産の運用についての意思決定を行う主体の分類であるのに対し、経済活動別分類は、財貨・サービスの生産についての意思決定を行う主体の分類である。経済活動別分類は、生産技術の同質性に着目した分類となっており、事業所(実際の作業を行う工場や事務所など)が統計の基本単位となっている。
経済活動別分類は大きくは、「農林水産業」、「鉱業」、「製造業」、「電気・ガス・水道・廃棄物処理業」、「建設業」、「卸売・小売業」、「運輸・郵便業」、「宿泊・飲食サービス業」、「情報通信業」、「金融・保険業」、「不動産業」、「専門・科学技術、業務支援サービス業」、「公務」、「教育」、「保健衛生・社会事業」、「その他のサービス」からなり、大分類においては国際標準産業分類(ISIC rev.4)と可能な限り整合的なものとなっている。
経常移転
Current Transfer
国民経済計算上、一般に移転とは、ある制度単位が、直接の対応物としてその見返りにいかなる財貨・サービスまたは資産も受け取ることなしに、財貨・サービスまたは資産を他の単位に対して供給する取引を指す。このうち、経常移転は、支払側の資産や貯蓄ではなく経常的な収入の中から充てられ、また受取側の投資の源泉とならないもので、資本移転(別項参照)と区別される移転であり、所得支出勘定に計上される。経常移転には、所得・富等に課される税、純社会負担、現物社会移転以外の社会給付(いずれも別項参照)、その他の経常移転からなる。その他の経常移転は、非生命純保険料、非生命保険金、一般政府内の経常移転、経常国際協力、他に分類されない経常移転(いずれも別項参照)から成る。
経常国際協力
Current International Cooperation
経常国際協力は、異なる国の政府間、あるいは政府と国際機関との間における現金または現物による経常移転から成り、政府開発援助(ODA)における無償資金協力のうち受入国における経常的支出を支援するための援助や、技術協力における技術援助要員の俸給を賄うための受入国への支払のほか、自然災害後における食料・衣料・医療品等の現物を含む緊急援助や、国際機関に対する分担金支払等を含む。定義上、本項目は、所得の第2次分配勘定においては一般政府の受払にのみ記録される。
経常対外収支
Current External Balance
経常対外収支は、海外勘定のバランス項目の一つで、財貨・サービスの輸出や雇用者報酬、財産所得、経常移転の受取と、財貨・サービスの輸入や雇用者報酬、財産所得、経常移転の支払の差額という経常的な取引の収支を指す。「国際収支統計」(財務省・日本銀行)においては「経常収支」に相当する概念であるが、「海外勘定」は海外部門から見た当該国との間での収支であるため、符号は逆転して表示される(日本が海外に対して収支がプラス(黒字)であれば、経常対外収支はマイナス(赤字))。国民経済計算の海外勘定は「国際収支統計」の計数を組み替えて推計しており、「経常対外収支」のレベルでは「国際収支統計」の「経常収支」と概念上一致し、符号のみが異なる 。ただし、直近期間については、「海外直接投資に関する再投資収益」の計上時期の違いを要因として計数は一致しない(「海外直接投資に関する再投資収益」の項参照)。
 なお、経常対外収支に海外に対する資本移転等の支払を加算し、海外からの資本移転等受取を控除したものが、海外部門からみた「純貸出(+)/純借入(-)」となる(一国経済の純貸出(+)/純借入(-)はこの符号を反転させたもの)。
現金による社会保障給付
Social Security Benefits in Cash
現金による社会保障給付は、一般政府(社会保障基金)の運営する社会保障制度から支払われる社会給付のうち、医療や介護の保険給付分(現物社会移転に記録される)を除いた、現金の形で支払われる給付が記録される。本項目は、支払側では一般政府部門、受取側では家計部門にのみ記録される。本項目には、具体的には、国民年金保険や厚生年金保険、国家公務員共済組合、地方公務員共済組合等の公的年金給付のほか、雇用保険給付、児童手当が含まれる。なお、制度別の給付額の詳細は、フロー編の付表9「一般政府から家計への移転の明細表(社会保障関係)」に示される。
現金・預金
Currency and Deposits
現金・預金は、大きくは「現金」と「預金」から成る。金融勘定では、現金の追加または処分、預金の開設・増加または引出しからが取引として記録され、期末貸借対照表勘定では、その蓄積としての残高が記録される。「現金・預金」は、資産側では各制度部門に計上される一方、負債側としては金融機関のみに計上される。このうち、現金は、中央銀行または政府によって発行または認定される紙幣や硬貨を指し、我が国の場合、日本銀行券(紙幣)及び貨幣(硬貨)から成る。預金としては、流動性預金、定期性預金、譲渡性預金、外貨預金のほか、日銀預け金、政府預金が含まれる。
現物社会移転
Social Transfers in Kind
現物社会移転は、一般政府または対家計民間非営利団体の個々の家計に対する現物の形での財貨・サービスの支給を指す(個別的分野における移転支出)。現物社会移転は、一般政府または対家計民間非営利団体が、当該財貨・サービスを市場で購入したものであるか、非市場産出として生産したものかに分かれる。
このうち、「現物社会移転(市場産出の購入)」は、一般政府が、家計に現物の形で支給することを目的に、市場生産者から購入する財貨・サービスを指す。具体的には、我が国の場合、(1)社会保障制度の医療保険や介護保険における医療費、介護費のうち保険給付分(社会保障基金が家計に対して払い戻しを行う分も含まれる)や(2)公費負担医療給付のほか、(3)義務教育に係る政府による教科書の購入費、戦傷病者無賃乗車船の負担金が含まれる。
一方、「現物社会移転(非市場産出)」は、一般政府や対家計民間非営利団体といった非市場生産者が、個々の家計に対して供給する財貨・サービスのうち、経済的に意味のない価格に基づく財貨・サービスの販売による収入分を除いた部分を指す。換言すると、(社会一般が便益を享受する集合的なものではなく)対家計の個別的な非市場性の財貨・サービスの産出額(生産費用の積上げで計測)のうち、自己勘定の総固定資本形成に向けられたもの以外で、かつ利用者家計からの料金や負担の支払を控除した残差を表すものである。本項目に含まれる具体例としては、一般政府の支払については、公立保育所や国公立学校、国立の美術館等の産出額のうち利用者からの料金負担等で賄われない部分が、また対家計民間非営利団体の支払については、私立保育所や私立学校等の全ての対家計民間非営利サービスの産出額のうち利用者からの料金負担等で賄われない部分がある。
交易利得・損失
Trading Gains/Losses
名目値においては、国内で生産された付加価値と所得の大きさは等しく、名目GDP=名目GDI(国内総所得)が成立している。一方、付加価値の実質的な大きさ(実質GDP)は各構成要素の価格をある時点で固定することによって計測されるため、実質GDPには海外との貿易に係る交易条件の変化に伴う実質所得(購買力)の変化は反映されない。この「交易条件の変化に伴う実質所得(購買力)の変化」を捉えるのが交易利得・損失という概念であり、定義上、実質GDP+交易利得・損失=実質GDIが成立している。
推計上は、交易利得・損失は以下の推計式により算出される。

交易利得・損失推計式の画像

(注)

(a)式は、直感的には以下のように理解することができる。
(a)式の第1項の分子(X-M)は、海外との貿易を通じて得られる名目所得を表している。これは、次の3つの要因によって規定される。

  1. 輸出入数量
  2. 輸出入価格の全般的水準
  3. 輸出入の相対価格(いわゆる交易条件)

ここで、要因2について若干の説明が必要である。輸出入数量(要因1)や交易条件(要因3)が不変であっても、貿易を通じて得られる名目所得は変化し得る。例えば、輸出入される財貨・サービスの価格が全般的に2倍に上昇すれば、名目所得も2倍になる。要因2は、このような輸出入価格の全般的な動きを捉えるものであり、(a)式においてはP(ニュメレール・デフレーター)で表されている。ニュメレール・デフレーターの選択については議論が分かれるところだが、我が国の国民経済計算では輸出入価格の加重平均を採用している。

さて、(a)式の第1項は、X-MをPで除して要因2の影響を取り除いたものであり、貿易を通じて得られる実質所得を表す。一方、(a)式の第2項は、輸出入の数量差であり、要因1によって規定される実質所得を表している(なお、これはすでに実質GDPに反映されている)。したがって、(a)式の第1項から第2項を控除した結果は、要因3(交易条件)の変化に伴う実質所得の変化を捉えるものであり、また、貿易を通じて得られる実質所得のうち実質GDPには反映されていない部分を表している。
公的企業
Public Corporations
制度部門のうち非金融法人企業と金融機関は、それが政府による所有または支配があるか否かによって、公的か民間に区分される。具体的には、非金融法人企業や金融機関のうち、(1)政府が議決権の過半数を保有している、または、(2)取締役会等の統治機関を支配している(過半数の任免権を持つ)、のいずれかを満たす場合に公的企業に分類される。公的非金融企業の例としては、特殊法人のうち日本たばこ産業株式会社、日本電信電話株式会社、日本中央競馬会等や、国の特別会計のうち自動車安全特別会計(自動車検査登録勘定、空港整備勘定)、地方の多くの公営事業会計等が挙げられる。一方、公的金融機関の例としては、特別会計のうち財政投融資特別会計(財政融資資金勘定、投資勘定)等や、株式会社日本政策投資銀行、株式会社国際協力銀行等の政府関係金融機関が挙げられる。また、中央銀行は公的金融機関に位置付けるという国民経済計算の考え方に基づき、日本銀行は公的金融機関に含められる(政府諸機関の分類の詳細については、参考資料「国民経済計算における政府諸機関の分類」を参照)。
鉱物・エネルギー資源
Mineral and Energy Reserves
鉱物・エネルギー資源は、その時点での技術および相対価格を所与として経済的に採掘可能な、地表または地下に存在する埋蔵鉱物およびエネルギー資源から構成される。具体的には、石炭・石油・天然ガス、金属鉱物、非金属鉱物が含まれる。
国内(Domestic)概念と国民(National)概念 国内領土とは、ある国の領土から当該国に所在する外国政府または国際機関の公館及び外国の軍隊を除いたものに、領土外に所在する当該国の公館及び軍隊を加えたものである。国内という概念は、その国内領土に居住する経済主体を対象とするという概念であり、主として生産活動に関連した概念である。例えば外国企業の在日子会社は、我が国の国内領土において生産活動を行っているので、我が国の居住者たる生産者として国内に含まれ、逆に我が国企業の海外支店は含まれない。国内総生産は、居住者たる生産者による国内生産活動の結果、生み出された付加価値の総額である。
一方、国民という概念は、当該国の居住者主体を対象とする概念であり、外国為替及び外国貿易管理法(外為法)の通達「外国為替管理法令の解釈及び運用について」の居住者の要件を満たす企業、一般政府、対家計民間非営利団体及び個人を指す。例えば、居住者たる個人とは、主として当該領土内に6か月以上の期間居住しているすべての個人をいい、国籍のいかんを問わない。また、一般に、国外に2年以上居住する個人は非居住者とされる。
国民総所得は、概念上、当該国の居住者主体によって受け取られた所得の総額を示すもので、国内総生産に海外からの所得(雇用者報酬、財産所得)の純受取を加えたものである。
国民総所得
Gross National Income, GNI)
国民総所得(GNI)は、概念上、各制度部門が生産過程へ参加した結果として受け取る所得(雇用者報酬、営業余剰・混合所得、生産・輸入品に課される税(控除)補助金)と、生産のために必要な資産の貸借により発生する財産所得の受払からなる「第1次所得バランス(総)」(固定資本減耗を含む)を居住者全体に合計したものである。実際の推計上は、名目GNIは、支出側から計測される名目GDPに、海外からの所得(雇用者報酬、財産所得)の受取を加え、海外への所得の支払を控除したものとして計算される(このため、第1次所得バランス(総)の一国合計とは統計上の不突合の分だけ異なる)。
一方、実質GNIは、国内総所得(GDI)の実質値に、海外からの所得の純受取の実質値を加算したものとして計算される。ここで、実質GDIは、支出面から推計される実質GDPに交易利得・損失を加算したものに等しい(「交易利得・損失」の項を参照)。また、海外からの所得の実質化は、国内需要デフレーターにより行う。
固定資産
Fixed Assets
固定資産とは、非金融資産のうち、生産活動の結果として生み出される生産資産に含まれるものであり、財貨・サービスの生産のために、原則として1年を超えて繰り返し使用される資産である。固定資産は、形態別には大きく、(1)住宅、(2)その他の建物・構築物、(3)機械・設備、(4)防衛装備品、(5)育成生物資源、(6)知的財産生産物から成る。
固定資本減耗
Consumption of Fixed Capital
固定資本減耗は、建物、構築物、機械設備、知的財産生産物等からなる固定資産について、これを所有する生産者の生産活動の中で、物的劣化、陳腐化、通常の破損・損傷、予見される滅失、通常生じる程度の事故による損害等から生じる減耗分の評価額を指す。他方、大災害による滅失のように予見しえない固定資産の毀損額については、固定資本減耗には含まれず、「調整勘定」の「その他の資産量変動」として記録される。
固定資本減耗は、企業会計における減価償却費が簿価で記録されるのとは異なり、全て時価(再調達価格)で評価される。具体的には、固定資産ごとに、対応する資本財別の期中平均デフレーターを用いて評価されている。
個別消費支出(Individual Consumption Expenditure)と集合消費支出(Collective Consumption Expenditure)) 非市場生産者の最終消費支出は、個々の家計の便益のために行った「個別消費支出」と、社会全体のために行った「集合消費支出」という2つの概念から成る。
具体的には、「個別消費支出」は、「現物社会移転」(社会保障制度の医療費や介護費のうち保険給付分等の「現物社会移転(市場産出の購入)」と「現物社会移転(非市場産出)」から成る)と一致する。一方、「集合消費支出」は、外交、防衛、警察等の社会全体に対するサービス活動に要する消費支出である。
一般政府の最終消費支出については、個別消費支出と集合消費支出に区分される。一方、対家計民間非営利団体の最終消費支出は、全て個別消費支出とする。
雇用者報酬
Compensation of Employees
雇用者報酬は、生産活動から発生した付加価値のうち、労働を提供した雇用者(employees)への分配額を指すもので、第1次所得の配分勘定では、家計部門の受取にのみ計上される。雇用者とは、市場生産者・非市場生産者を問わず生産活動に従事する就業者のうち、個人事業主と無給の家族従業者を除くすべての者であり、法人企業の役員、特別職の公務員、議員等も含まれる。雇用者報酬は、内訳として、「賃金・俸給」と「雇主の社会負担」に分かれ、後者はさらに「雇主の現実社会負担」と「雇主の帰属社会負担」に分かれる。
賃金・俸給は、現金と現物の給与の双方を含む。このうち現金給与は、所得税や社会保険料のうち事業主負担分等の控除前の概念であり、一般雇用者の賃金、給料、手当、賞与等のほかに、役員報酬(給与や賞与)、議員歳費等が含まれている。現物給与は、自社製品等の支給など、主として消費者としての雇用者の利益となることが明らかな財貨・サービスに対する雇主の支出であり、給与住宅差額家賃も含まれる。このほか、賃金・俸給には、雇用者ストックオプション(権利付与され、権利確定前のもの)が含まれる(「金融派生商品・雇用者ストックオプション」の項参照)。
雇主の現実社会負担は、概念上、雇主の現実年金負担と雇主の現実非年金負担から成る。雇主の現実年金負担は、社会保障制度を含む社会保険制度のうち年金制度に係る雇主の実際の負担金を指し、社会保障基金のうち公的年金制度への雇主の負担金とともに、厚生年金基金や確定給付企業年金、確定拠出企業年金等の年金基金への雇主の負担金が含まれる。ここで、年金基金への雇主の負担金の中には、雇主による退職一時金の支払額のうち、発生主義の記録の対象となる部分も含まれる。一方、雇主の現実非年金負担には、社会保障制度のうち、医療や介護保険、雇用保険、児童手当に関わる雇主の負担金等が含まれる。
雇主の帰属社会負担は、概念上、雇主の帰属年金負担と雇主の帰属非年金負担から成る。雇主の帰属年金負担は、企業年金のような雇主企業においてその雇用者を対象とした社会保険制度(雇用関係をベースとした社会保険制度)のうち確定給付型の退職後所得保障制度(年金と退職一時金を含む)に関してのみ計上される概念であり、企業会計上、発生主義により記録されるこれら制度に係る年金受給権のうち、ある会計期間における雇用者の労働に対する対価として発生した増分(現在勤務増分)に、これら制度の運営費(「年金制度の手数料」と呼ばれる)を加えたものから、これら制度に係る雇主の現実年金負担を控除したものとして定義される。一方、雇主の帰属非年金負担には、発生主義での記録を行わない退職一時金の支給額や、その他無基金により雇主が雇用者に支払う福祉的な給付(私的保険への拠出金や公務災害補償)が含まれる。

さ行

用語 解説
債権者による不良債権の抹消
Write-off of Bad Debts by Creditors
債権者による不良債権の抹消は、金融機関(債権者)による貸出債権のうち、借り手(債務者)の破産等により債権がもはや回収できないため、債権者によって貸借対照表から除却される価額を指す。具体的には、金融機関による不良債権の直接償却額が「調整勘定」の「その他の資産量変動」に記録される。
在庫、在庫変動
Inventories, Change in Inventories
在庫は、固定資産と並ぶ生産資産の一形態であり、当期あるいはそれ以前の会計期間に出現した財貨・サービスのうち、その後の会計期間において販売、生産等のために使用することを目的として保有されるものを指す。在庫変動は、会計期間中における在庫への繰入額から引出額を差し引き、さらに在庫品として保有中の財貨に対して当該会計期間内に生じた反復性のある損失額(通常予想される範囲の劣化、紛失等)を差し引いたフローの概念である。在庫は、形態別としては、原材料、仕掛品、製品、流通品の4つの形態から成る。制度部門としては、非金融法人企業、一般政府、家計(個人企業分)にのみ計上される。仕掛品は、育成生物資源の仕掛品(肉用牛や民有林の立木等)とその他の仕掛品(半製品)から成る。また、支出側のGDPを示す主要系列表1等では、在庫変動は民間と公的に分けて表章される。このうち、公的在庫(公的企業在庫及び一般政府在庫)の例としては、国の原油備蓄や食料安定供給特別会計(食糧管理勘定)の備蓄米、防衛装備品のうち弾薬類等が挙げられる。
在庫品評価調整
Inventory Valuation Adjustment
国民経済計算においては、発生主義の原則がとられており、在庫変動は、当該在庫の増減時点における価格で評価すべきものとされている。しかし、入手可能な在庫関係データは企業会計に基づくものであり、先入先出法や平均原価法等、企業会計上認められている様々な在庫評価方法で評価されている。したがって、期末在庫残高から期首在庫残高を差し引いて得られる増減額には、期首と期末の評価額の差分も含まれている。
そこで企業会計から得られたデータをもとに国民経済計算を作成する場合、両者の評価の相違を調整する必要が生じ、その額を在庫品評価調整額と呼んでいる。すなわち、企業会計における評価額(簿価ベース)-国民経済計算における評価額(時価ベース)=国民経済計算における在庫品評価調整額という関係にある。この評価額の差分を除くための調整が在庫品評価調整である。
在庫品評価調整は、具体的には以下のように行う。
  1. 企業会計に基づく基礎資料から名目在庫残高(簿価ベース)を求める。
  2. 当該在庫の価格指数を作成し、これを基礎に、企業の棚卸評価方法と在庫回転率に対応した在庫残高デフレーターを求める。
  3. 名目在庫残高(簿価ベース)を在庫残高デフレーターで除すことにより、期末、期首の実質在庫残高を求め、両者の差をとって実質在庫変動を算定する。
  4. 在庫価格指数から期中平均価格指数を求め、これを3で計算した実質在庫変動に乗じて、在庫品評価調整後の名目在庫変動(時価ベース)を算出する。
なお、1の名目在庫残高(簿価ベース)の期末から期首を差し引き、在庫品評価調整前の名目在庫変動(簿価ベース)を求め、これから4の在庫品評価調整後の名目在庫変動(時価ベース)を差し引いたものが在庫品評価調整額となる。
財産所得
Property Income
財産所得は、第1次所得の配分勘定において「第1次所得バランス」を構成する所得項目で、金融資産の所有者である制度単位が他の制度単位に対して資金を提供する見返りとして受け取る「投資所得」と、土地等の所有者である制度単位が他の制度単位に対してこれを提供する見返りに受け取る「賃貸料」から成る。財産所得の受払は、全ての制度部門に記録される。財産所得は、さらに内訳として、「利子」、「法人企業の分配所得」、「海外直接投資に関する再投資収益」、「その他の投資所得」(以上が投資所得)、「賃貸料」に分かれる(各項目の内容についてはそれぞれの項を参照)。
最終消費支出(Final Consumption Expenditure)と現実最終消費(Actual Final Consumption 最終消費とは、各制度単位が財貨・サービスを使い尽くす活動と定義される「消費」のうち、個々の家計あるいは社会全体(コミュニティ)によってそれらの個別的ないし集合的な必要性と欲求を満足させるために費消される財貨・サービスの価額である(一方、生産者がある会計期間内の生産過程の中で費消する財貨・サービスの価額は「中間消費」という)。最終消費は、制度部門では、一般政府、家計、対家計民間非営利団体にのみ記録される。
最終消費は、各主体がその費用を負担するというベースなのか、各制度単位がその便益を享受するというベースなのかによって、二つの概念に分かれる(最終消費の二元化)。費用負担ベースの最終消費は「最終消費支出」、便益享受ベースの最終消費は「現実最終消費」と呼ばれ、最終消費支出は「可処分所得の使用勘定」の支払側に、現実最終消費は「調整可処分所得の使用勘定」の支払側に記録される。
家計の現実最終消費は、家計の最終消費支出に、対家計民間営利団体の個別消費支出である最終消費支出及び一般政府の個別消費支出を加えたものである。また、一般政府の現実最終消費は、同部門の現実最終消費である。対家計民間非営利団体の最終消費支出は全て個別消費支出であり、現実最終消費は存在しない。
再評価勘定
Revaluation Accounts
再評価勘定は、調整勘定の内訳の一つであり、会計期間中の資産等(資産、負債、正味資産)の変化のうち、資本勘定や金融勘定、その他の資産量変動勘定では記録されない、価格変動の要因による変化分を記録する勘定である。再評価額は「名目保有利得または損失」とも呼ばれ、いわゆるキャピタルゲイン/ロスの価格を示す。再評価勘定は、さらに2つの勘定に細分化される。「中立保有利得または損失勘定」は、再評価額のうち、資産価格が財貨・サービスの一般的な価格変動と同じだけ変化したと想定した場合の変化分を記録する勘定である。また、「実質保有利得または損失勘定」は、再評価額のうち、財貨・サービスの一般的な価格に対して、当該資産の相対的な価格変化による資産等の価額の変化分を記録する勘定である。
債務証券
Debt Securities
債務証券は、発行主体に償還義務のある証券形態の金融債権を指す。具体的には、証券形態の金銭債権として、金融商品取引法上の有価証券のほか、同法の対象とならない私法上の有価証券が含まれる。具体的には、国庫短期証券、国債・財投債、地方債、政府関係機関債、金融債、事業債、居住者発行外債のほか、CP(コマーシャル・ペーパー)、信託受益権、債権流動化関連商品が含まれる。
産業連関表
Input-Output Table
投入産出表ともいう。産業(商品)間の投入と産出を行列表示することにより、全ての財貨・サービスの生産とその処分に至る過程を把握しようとするものであり、アメリカの経済学者W・レオンチェフによって初めて作成された。
産業連関表は生産活動を記録する内生部門と最終需要及び粗付加価値を表わす外生部門の二つの部門に分かれる。産業連関表の列(縦)は、各産業あるいは商品の費用構成を示し、生産のためにどのような財貨・サービスが使用(投入)されたか、また粗付加価値、営業余剰、雇用者所得、資本減耗引当、間接税(除関税)、(控除)経常補助金等がどれだけ発生したかを表している。一方、産業連関表を行(横)にみると、各財貨・サービスがどの部分にどのように販売されたかが示されており、これは中間需要と呼ばれる。外生部門の購入は最終需要といい、家計、政府等の最終消費、資本形成、輸出等からなり、それぞれの各列はその財貨・サービス別の構成を示す。各産業(商品)の行和と列和は等しく、その産業(商品)の総産出額である。
我が国の産業連関表は昭和26年に初めて作成されて以来、30年以降、関係府省庁の協力によって原則5年ごとに作成されている(公表窓口は総務省)。産業連関表は生産の相互関係を明らかにするとともに、産業構造、雇用構造、分配構造、あるいは価格構造についての分析や予測等多方面で利用されている。
なお、国民経済計算は産業連関表を体系内に包摂しており、産業連関表に相当する部分は(1)財貨・サービスの供給と需要、(2)経済活動別の国内総生産・要素所得、(3)経済活動別財貨・サービス産出表、(4)経済活動別財貨・サービス投入表で構成されている。ただし、国民経済計算と産業連関表は概念上の差異があるため、国民経済計算ではこれを調整した上で、約5年ごとの基準改定の際に産業連関表を取り込んでいる。
C.I.F.(Cost Insurance and Freight)建てとF.O.B.(Free on Board)建て C.I.F.建てとは、貨物代金のほか仕向け先までの運賃・保険料などを含む価格である。一方、F.O.B.建てとは、このような運賃・保険料など輸出船積み以降のコストを含まない価格である。
国民経済計算の海外勘定及び「国際収支統計」(財務省、日本銀行)では、財貨の所有権が移転した時点で輸出入を記録されることとなっており、計上される金額は、輸出、輸入ともF.O.B.建てとなっている。一方、「貿易統計」(財務省)では、記録時点は通関時であり、また計上される金額は通関金額となるため、輸出はF.O.B.建て、輸入はC.I.F.建てとなっている。
資金源泉主義(Fund Fount Approach)と最終支出主体主義(Final Expenditure Entity Approach 購入された財貨・サービスの帰属する主体を区分する方法としては、支出に充てた資金の出所によって行う方法(資金源泉主義)と、最終的な購入者によって行う方法(最終支出主体主義)とがある。
地方政府が中央政府から4分の1の国庫補助を受けて道路建設を行った場合を例にとると、資金源泉主義では、資金の出所に従って、4分の1は中央政府の総固定資本形成、他の4分の3を地方政府の総固定資本形成として計上する。一方、最終支出主体主義の場合、4分の1の国庫補助は、中央政府から地方政府への資本移転として計上されたうえで、全額が地方政府の総固定資本形成となる。
国民経済計算では資金源泉主義にはよらず最終支出主体主義を採っている。
資金循環勘定
Flow of Funds Accounts
国民経済の金融面の動きを、経済部門別、各種金融取引項目別に相互間の流れとして捉えたものである。M・コープランドが作成したマネーフロー表(Money Flow Table)がその原形となっている。
国民経済計算は資金循環勘定を体系内に包摂している、資金循環勘定に相当する最も詳細な表は、フロー編の付表24「金融資産・負債の取引」及びストック編の付表6「金融資産・負債の残高」である。推計に当たっては日本銀行作成の「資金循環統計」を基礎にしている。
市場価格表示および要素費用表示
At Market Prices,At Factor Cost
市場価格表示とは、文字通り市場で取引される価格による評価方法であり、消費税等の生産・輸入品に課される税及び補助金(控除)を含んだ価格表示のことである。
一方、要素費用表示とは、各商品の生産のために必要とされる生産要素に対して支払われた費用(雇用者報酬、営業余剰・混合所得、固定資本減耗)による評価方法であり、生産・輸入品に課される税及び補助金(控除)を含まない価格表示のことである。
我が国の国民経済計算では、国内総生産、国民可処分所得は市場価格表示で、国民所得は市場価格表示と要素費用表示の両方で評価されている。
市場生産者、非市場生産者
Market Producers, Non-market Producers
財貨・サービスの生産者について、これらを経済的に意味のある価格で供給する場合を「市場生産者」に、これらを無料ないし経済的に意味のない価格で供給する場合を「非市場生産者」に区分する。具体的には、市場性の判断の基準としては、原則として、売上高が生産費用の50%以上であれば市場性があるとして、50%未満であれば市場性がない(非市場である)とする(いわゆる「50%基準」)。ただし、売上高が生産費用の50%以上であっても、政府に対して財貨・サービスを販売する機関の場合、対象機関が当該財貨・サービスの唯一の売り手であり、かつ政府が唯一の買い手である場合には、市場性がないと判断する。制度部門ごとに見ると、非金融法人企業、金融機関、家計(個人企業)は市場生産者、一般政府、対家計民間非営利団体は非市場生産者として扱われている。
四半期速報(Quarterly Estimates)と年次推計(Annual Estimates 国民経済の活動状況を多面的・総合的に表わす指標としての国民経済計算は、その作成にあたって経済実態を正確に反映するという「正確性」を要請されるとともに、カレントな景気判断の基礎として、「速報性」を要請されている。
しかし国民経済計算は、各種の基礎統計を利用して推計する加工統計であるため、「速報性」を高めようとすれば、利用しうる基礎統計の範囲は限られたものとなり、推計精度は後退せざるを得ない。こうした「速報性」と「正確性」のトレード・オフ関係に対して、統計利用者の便宜を図るためには、計数の公表をいくつかの段階にわけるとともに、それぞれの段階で推計精度の向上を図っていくことが必要とされる。
国民経済計算においては、公表時期を出来るだけ早めるために、早期に利用できる基礎資料を用いて推計するとともに、より精度の高い基礎資料の入手に応じて、段階的に推計値を改定し、統計の「正確性」を一層高めていくこととしている。それを公表時期の早いものから順にみると、以下のようになる。
  1. 1次速報
    1次QE(Quarterly Estimates)と呼ばれており、支出系列及び雇用者報酬について、ある四半期の約1か月2週間程度後に公表される。速報推計は、第一次年次推計などの年次推計と比べ、推計に利用できる基礎資料に制約があるため、年次推計で得られた結果を極力活用しつつも、供給側統計及び経済主体側で把握された支出側統計を用いた独自の方法で行っている。
  2. 2次速報
    2次QEとも呼ばれる。当該四半期終了の2か月10日程度後に、1次速報によって公表した支出系列及び雇用者報酬について、新たに利用可能となった基礎資料による改定を行う。
  3. 第一次年次推計
    国民経済計算の計数全般について、詳細な基礎資料を用いて、ある年度の終了後約9か月後に公表するもの。支出系列については、コモディティ・フロー法を主体に推計し、産業別国内総生産は、付加価値法を主体に推計する。
  4. 第二次年次推計
    第一年次推計公表の1年後に、「工業統計(確報)」(経済産業省)等の新たなデータの入手により推計値を改定する。
  5. 第三次年次推計
    第二次年次推計公表の1年後に、「供給・使用表」の枠組みを活用して、コモディティ・フロー法等により推計された財貨・サービス別の中間消費と、付加価値法等により推計された財貨・サービス別の中間投入の計数を統合することで第二次年次推計の推計値を改定する。
  6. 基準改定
    「産業連関表」、「国勢統計」等が約5年に1回公表されることから、最新の経済構造を反映するため、国民経済計算においてこれらの基礎資料を取り込み、過去に遡って計数を改定する。あわせて実質値の金額表示の基準となる参照年次(デフレーター=100となる年)も切り替える。また、基準改定時には、国連の定める国際基準への対応や推計手法の見直しが行われる場合がある。
資本移転
Capital Transfers
資本移転は、反対給付を伴わない移転のうち、受取側の資本形成やその他の資本蓄積あるいは長期的な支出の資金源泉となり、支払側の資産または貯蓄から賄われるような移転である。換言すれば、資本移転は一般的に、当事者の投資や資産に影響を及ぼすが、消費に対しては資産額やその構成の変化を通じて間接的な影響を及ぼすにとどまる。資本勘定において資本移転は、各制度部門の貯蓄及び資本移転による正味資産の変動側において受取額が記録されるとともに、控除項目として支払額も記録される(つまり、貸方側に純受取額が記録される)。具体的に、資本移転に含まれるものとしては、相続税や贈与税という「資本税」や、投資に対する補助金や助成金等の交付金のほか、債権者と債務者の双方の合意による負債の帳消し分(債権者から債務者への移転)、保険契約によってカバーされない大規模な損害や重篤な障害に対する補償金の支払い、複数年にわたり蓄積された多額の営業赤字を埋め合わせるための政府単位が行う公的ないし私的企業に対する移転、等がある。このうち、投資に対する交付金については、一般政府が法人企業に対して行う投資補助金や、一般政府内における公共事業の費用を賄うための中央政府から地方政府への負担金等が含まれる。
資本勘定
Capital Accounts
資本勘定は、制度部門毎に、非金融面の資本蓄積(投資)及び資本調達(貯蓄)の状況を記録する勘定であり、具体的には、借方に、各部門における蓄積(投資)の形態が示され、純固定資本形成(総固定資本形成から固定資本減耗を控除したもの)と在庫変動、土地の購入(純)が計上される一方、貸方は資本調達の源泉として、所得支出勘定から振り替えられる貯蓄、他制度部門からの資本移転の純受取が計上される。そして蓄積と資本調達の差額がバランス項目である純貸出(+)/純借入(-)として記録される。
資本税
Capital Tax
資本税は、資本移転の一部であり、不定期かつ稀な間隔で、制度単位により所有されている資産や正味資産の価値に対して課される税、あるいは、遺産相続、生前贈与等の結果として制度単位間で移転された資産の価値に対して課される税から成る。具体的には、相続税や贈与税が該当する。
社会給付及び純社会負担
Social Benefit and Net Social Contribution
社会給付は、病気・失業・退職・住宅・教育あるいは家族の経済的境遇のような一定の出来事あるいは状況から生じるニーズに対する備えとなることを意図して家計に支払われる経常移転と定義され、(1)社会保障制度の公的年金等の「現金による社会保障給付」、(2)企業年金や発生主義で記録される退職一時金を含む「その他の社会保険年金給付」、(3)発生主義により記録されない退職一時金等の「その他の社会保険非年金給付」、(4)生活保護などの「社会扶助給付」のほか、(5)「現物社会移転」のうち社会保障制度の医療保険給付及び介護保険給付、が位置付けられる。
純社会負担とは、社会給付が支払われることに備えて社会保険制度に対して行う現実または帰属の支払と定義され、(1)社会保障基金や企業年金の年金基金への雇主の実際の保険料・掛金等の負担である「雇主の現実社会負担」、(2)雇用関係をベースとする確定給付型の退職後所得保障制度(発生主義により記録される確定給付型の企業年金と退職一時金)に係る積立不足分の変動等を示す「雇主の帰属社会負担」、(3)社会保障基金等への雇用者・家計の実際の保険料・掛金負担である「家計の現実社会負担」、(4)企業年金に係る資産運用から得られる収益(概念的なものを含む)の迂回処理分である「家計の追加年金負担」の合計から、(5)企業年金等の運営費用を示す「年金制度の手数料」を控除したものとなる。
社会扶助給付
Social Assistance Benefits
社会扶助給付は、社会保険による給付と同様のニーズに応じるものであるが、社会負担によって参加が求められる社会保険制度の下で支払われるものではなく、一般政府または対家計民間非営利団体によって家計に支払われる経常移転を指す。定義上、所得の第2次分配勘定において、受取側では家計、支払側では一般政府、対家計民間非営利団体にのみ記録される。具体的には一般政府分には生活保護費(公費負担医療給付は現物社会移転に含まれるため除く)、恩給等が含まれ、対家計民間非営利団体分には無償の奨学金等が含まれる。なお、本項目は「現物社会移転以外の社会給付」の内訳項目であるが、基礎資料の制約上、現金分と現物分を区分することが困難なものがあるため、現物給付分も一部含む。
社会保障基金
Social Security Funds
社会保障基金は、中央政府、地方政府と並ぶ一般政府の内訳部門の一つであり、(1)政府により賦課・支配され、(2)社会の全体ないし大部分をカバーし、(3)強制的な加入・負担がなされる、という基準を全て満たすものと定義される。具体的には、公的年金や雇用保険を運営する国の特別会計(保険事業特別会計)のほか、地方公共団体の公営事業会計のうち医療、介護事業、公務員年金を運営する共済組合の一部、独立行政法人の一部(年金積立金管理運用独立行政法人)が含まれる。
なお、公務員等の年金制度-具体的には、国家公務員共済組合・同連合会、地方公務員共済組合・同連合会等-については、被用者年金一元化の前後で扱いに違いがある。具体的には、2015年9月以前の「長期経理」(一階部分の基礎年金分、二階部分の共済年金分、三階部分の職域加算分)については、一階部分である基礎年金分が他の被用者の基礎年金と一元的に管理されていたことや、長期経理は一つの勘定として経理され基礎年金分とそれ以外を分けることが困難であったこと等から、全体を社会保障基金として扱っていた。また、長期経理を引き継いだ2015年10月以降の厚生年金保険経理や経過的長期経理分については、さらに二階部分の共済年金分(報酬比例分)が他の被用者と一元化されたことから、やはり社会保障基金として扱っている。一方、2015年10月以降創設された、三階部分に当たる年金払い退職給付制度を取り扱う退職等年金経理分については、公務員等を対象とする独立した別個の制度であることから金融機関である年金基金に位置付けている。
住宅
Residential Buildings
住宅は、固定資産の形態の一つであり、完全にあるいは主として住居として使用される、建物あるいは建物の特定部分を指し、住宅に不可欠な設備を含む。厳密には、建築基準法に規定する建築物のうち、居住専用建築物及び居住産業併用建築物(うち居住の用に供せられる部分)を指し、総固定資本形成はその新築・増築・改築工事を含む。また、資産の取得・処分に係る費用(所有権移転費用)として、住宅・宅地に係る不動産仲介手数料も含まれる。
住宅への総固定資本形成や固定資産は、制度部門としては、主に家計(持ち家)のほか、住宅賃貸業が含まれる非金融法人企業に記録される。
純貸出(+)/純借入(-)
Net Lending / Net Borrowing
「純貸出(+)/純借入(-)」は、制度部門別の資本勘定のバランス項目であり、貯蓄及び資本移転による正味資産の変動と、非金融資産の純取得(純固定資本形成、在庫変動、土地の購入(純))の差額として導出される。額が正であれば純貸出(いわゆる貯蓄超過、黒字)であり、負であれば純借入(いわゆる投資超過、赤字)を表す。換言すれば、「純貸出(+)/純借入(-)」は、制度部門ごとに経常的な収支と資本的な収支を合計した収支尻を示すものであり、一般政府の場合は、いわゆる「財政収支」を示す指標となる。
一方、制度部門別の金融勘定においては、取引要因による金融資産の変化と負債の変化の差額として、「純貸出(+)/純借入(-)(資金過不足)」が記録される。これと、資本勘定の「純貸出(+)/純借入(-)」は概念的には一致するものであるが、実際の推計上は、基礎統計や手法の違いにより開差が生じている。
なお、海外勘定で記録される海外部門の「純貸出(+)/純借入(-)」の符号を逆転したものは、一国全体の「純貸出(+)/純借入(-)」となり、これは、金融勘定における「純貸出(+)/純借入(-)(資金過不足)」を一国に合計したものと等しい。逆に言えば、資本勘定の「純貸出(+)/純借入(-)」の一国合計とは、統計上の不突合の分乖離がある。
正味資産、国富
Net Worth,National Wealth
正味資産は、期末貸借対照表勘定におけるバランス項目であり、一国あるいは各制度部門について、非金融資産及び金融資産の総額から、負債の総額を差し引いたものを指す。一国全体の正味資産は「国富」とも呼ばれ、一国全体の非金融資産と対外純資産の合計に等しい。
所得支出勘定
Income and Outlay Accounts
所得支出勘定は、5つの制度部門別に、所得の受取と使用を記録する勘定である。制度部門別勘定を集計したものは、統合勘定における「国民可処分所得と使用勘定」として表章される。
この勘定によって、生産活動の結果生み出された所得(雇用者報酬、営業余剰・混合所得等)及び財産所得がどの制度部門に分配され、さらに受け取られた所得がどのような形式で再分配されたかが明らかになる。この勘定は、第1次所得の配分勘定、所得の第2次分配勘定、現物所得の再分配勘定及び所得の使用勘定の四つの勘定から構成されており、所得と実物の流れである消費との連結が明確にされるとともに、貯蓄を通じて資本勘定と結びつけられている。
所得・富等に課される経常税
Current Taxes on Income, Wealth, etc.
所得・富等に課される経常税は、主に、毎課税期間に定期的に支払われる家計の所得、法人企業の利潤に課される税、さらに富に課される税から成る。(支払う側から見れば)定期的に課されるわけではない相続税や贈与税は「資本税」と呼ばれ、本項目ではなく資本勘定の「資本移転」に含まれる。所得・富等に課される経常税は、所得の第2次分配勘定においては、一般政府の受取、非金融法人企業、金融機関、家計の支払に記録される。
所得・富等に課される経常税は、さらに「所得に課される税」と「その他の経常税」に分かれる。所得に課される税には、源泉所得税、申告所得税、法人税、道府県民税(所得割・法人税割、配当割、利子割)、市町村民税(所得割・法人税割)、日銀納付金等が、その他の経常税には家計の負担する自動車関連諸税、事業税(地方法人特別税を含む)、道府県民税や市町村民税の個人・均等割等が含まれる。自動車関連諸税については、家計による自動車の購入や所有は、企業の場合と異なり、生産活動と結びつくものではないため、所得・富等に課される経常税に記録される。
生産者価格表示および購入者価格表示
At Producers'Values, At Purchasers'Values
国民経済計算においては、リンゴ1個や鉄1トンといった生産数量を価額化(評価)する方法として、分析目的に応じた様々な方法を用いている。生産者価格表示とは生産物を生産者の事業所における価格で評価しようとするものである。したがって、商品が需要者に至るまでの運賃や商業マージンはすべて運輸業や商業の生産とされ、個々の商品には加算されない。生産者価格表示は産業連関表において用いられており、流通経路の相違による価格の相違を除去して生産構造そのものを捉えようとするところに狙いがある。一方、購入者価格表示とは、購入段階における市場価格で評価したものであり、個々の商品価格は運賃や商業マージンが含まれているものである。したがって、主として需要分析のための評価法である。
生産・輸入品に課される税
Taxes on Production and Imports
生産・輸入品に課される税は、原則として、(1)財貨・サービスの生産、販売、購入または使用に関して生産者に課される租税で、(2)税法上損金算入が認められ、(3)その負担が最終購入者へ転嫁されるものを指す。これは、生産者にとっては生産コストの一部を構成するものとみなされるという点で、「所得・富等に課される経常税」や「資本税」とは区別される。第1次所得の配分勘定において、一般政府の受取としてのみ記録される。
それを大別すると、「生産物に課される税」と「生産に課されるその他の税」に分かれ、前者は、財貨またはサービスの1単位当たりで支払われる税であり、「付加価値型税」、「輸入関税」、「その他」に分かれる。「付加価値型税」には消費税や地方消費税等が、「輸入関税」には関税が、「その他」には酒税、たばこ税、揮発油税等が含まれる。また「生産に課されるその他の税」は、生産者が生産に携わる結果として課税される、生産物に課される税を除く全ての税からなり、固定資産税や印紙収入税等が含まれる。
制度部門別分類
Classification of Institutional Sectors
経済活動別分類が財貨・サービスの生産についての意思決定を行う主体の分類であるのに対し、制度部門別分類は所得の受取や処分、資金の調達や資産の運用についての意思決定を行う主体の分類である。所得支出勘定、資本勘定、金融勘定、調整勘定、期末貸借対照表に用いられる。この分類による取引主体には非金融法人企業、金融機関、一般政府、家計(個人企業を含む)、対家計民間非営利団体、の5制度部門がある。金融機関が独立部門として設定されているが、これは、金融面の活動において金融機関は他の部門とは全く異なる行動をとるので金融機関を分離する必要があることによる。
政府最終消費支出
Final Consumption Expenditure of Government
政府最終消費支出は、文字通り一般政府の最終消費支出であり、(1)無料ないし経済的に意味のない価格で家計に提供することを目的に、市場生産者から購入する財貨・サービス-すなわち「現物社会移転(市場産出の購入)」-と、(2)非市場生産者としての一般政府による財貨・サービスの産出額-これは雇用者報酬、中間消費、固定資本減耗といった生産費用の積上げにより計測される-のうち、(i)家計や法人企業への財貨・サービスの販売収入で賄われる部分(「財貨・サービスの販売」と呼ぶ)や、(ii)一般政府自身の総固定資本形成に充てられる部分(「自己勘定総固定資本形成」と呼ぶ)を除いた価額から成る。ここで、(i)には、例えば、各種の手数料収入や、国公立大学(附属病院を除き一般政府に格付けされる)の学費収入等が含まれ、(ii)は、一般政府に属する機関が自ら行う研究・開発(R&D)の総固定資本形成が含まれる。言い換えると、一般政府の最終消費支出は、以下の式から導かれ、右辺第1項が上記の(2)部分を、第2項が(1)の部分を表す。(2)の部分は、一般政府により産出された財貨・サービスのうち、他の制度部門からの収入により賄われず、かつ、政府が自己消費として使い尽くした部分を示すと解することができる。

最終消費支出=[産出額-財貨・サービスの販売-自己勘定総固定資本形成]+現物社会移転(市場産出の購入)

総固定資本形成
Gross Fixed Capital Formation
総固定資本形成は、国民経済計算の体系上、生産者による会計期間中の固定資産の取得から処分を控除したものに、非生産資産の価値を増大させるような支出を加えた価額を指す。ここで、固定資産は、国民経済計算体系上の生産過程により出現した非金融資産である「生産資産」のうち、生産者によって取得され、原則として1年を超えて繰り返し生産過程に使用されるような資産である。このため、総固定資本形成は、全ての制度部門に記録されるが、家計については持ち家サービスを含む個人企業分のみが記録される(消費者としての家計が自動車等を購入してもこれは耐久消費財の最終消費支出であり総固定資本形成は記録されない)。
居住者間の中古資産の売買は、売却と購入の部門が異なる場合、原則として、売却部門のマイナスの総固定資本形成、購入部門のプラスの総固定資本形成に記録されるが、居住者の間で行われる場合、一国全体としては相殺されるため、中古売買に係るマージンのみ総固定資本形成に計上される。また、資産の取得・処分時に発生する輸送費、商業マージン、設置・取付費、解体費などの費用(所有権移転費用)についても、可能なものは総固定資本形成として扱い、当該資産のフロー(総固定資本形成)及びストック(固定資産)に含めている。
固定資本形成の対象となる固定資産は、形態別には大きく、(1)住宅、(2)その他の建物・構築物、(3)機械・設備、(4)防衛装備品、(5)育成生物資源、(6)知的財産生産物から成る。
総資本形成
Gross Capital Formation
総資本形成は、総固定資本形成と在庫変動の合計である。
総資本形成に係る消費税
Consumption Tax on Gross Capital Formation
我が国の国民経済計算においては、財貨・サービスの出荷額、産出額は、消費税等の生産に課される税を含む生産者価格で記録され、これをベースにコモディティ・フロー法により推計される財貨・サービス別の総固定資本形成は消費税分が含まれているという意味で「グロス」ベースで記録されている。一方で、税法上、課税業者の投資に係る消費税分は、他の仕入れに係る消費税とともに、当該事業者が消費税を納入する時点で納税額から控除できる制度(仕入税額控除という)が採られている。このため、この控除分は「総資本形成に係る消費税」として、総資本形成(総固定資本形成、在庫変動)については、この控除分を除いた金額で記録されている。グロスの総固定資本形成から、これら仕入税額控除分を除く処理は「修正グロス方式」と呼ばれる。生産側からGDPを計測する際も、この総資本形成に係る消費税分について控除する必要があるが、経済活動別には分割が困難であるため一括して控除処理を行っている。
その他の金融資産・負債
Other Financial Assets and Other Liabilities
「その他の金融資産」ないし「その他の負債」には、金融資産・負債のうち他に分類されないものが記録され、「財政融資資金預託金」、「預け金・預り金」、「企業間信用・貿易信用」、「未収金・未払金」、「直接投資」、「対外証券投資」、「その他の対外債権・債務」、「その他」から成る。
このうち、直接投資は、居住者企業による非居住者企業の持分取得のうち、非居住者企業の支配を目的とするものを指し、「国際収支統計」と同様、議決権ベースで持分を10%以上所有している場合が直接投資とされる。株式資本のほか、再投資収益、負債性資本(直接投資関係にある当事者間での資金貸借や債券の取得処分等)が計上される。なお、直接投資に関しては、資産側と負債側で記録の方法が異なる。具体的には、株式資本について、居住者企業が非居住者企業の持分を取得する「対外」直接投資の場合は、資産側の本項目に計上される一方、非居住者企業が居住者企業の持分を取得する「対内」直接投資の場合は、本項目ではなく、「持分」の負債側に計上される扱いとなっている。
また、対外証券投資は、非居住者が海外市場ないし国内市場で発行した株式や債券への投資である。株式取得の場合、直接投資が支配を目的とするのとは異なり、資産運用や外貨建ての資産保有を目的とするものが記録される。本項目には、外貨準備の一環としての外国証券の所有分が含まれる。なお、直接投資と同様に、居住者が非居住者の発行する株式・債券を取得する場合は、資産側の本項目に記録される一方、非居住者が居住者の発行する株式・債券を取得する場合は、「持分・投資信託受益証券」ないし「債務証券」の負債側に記録される。
その他の資産量変動勘定
Other Changes in Volume of Assets Accounts
その他の資産量変動勘定は、資本勘定や金融勘定では記録されない資産等の量的な変化分を記録する勘定である。具体的には、1.災害等による予想しえない規模の資産の損失や、2.鉱物・エネルギー資源の発見や消滅等のような資産・負債の出現・消滅、3.金融機関による不良債権(貸出資産)の抹消、4.ある資産・負債の分類の変更による変化分、5.ある制度単位の民営化等による制度部門分類の変更に伴う資産等の変化分、6.基礎統計である「資金循環統計」が改定されることによる変化分等が記録される。
ストック編におけるその他の資産量変動勘定の表章においては、(1)経済的出現・消滅、(2)災害等による壊滅的損失、(3)他に分類されないその他の量的変動、(4)分類変更、に分けて表章している((1)には上記の3.を、(2)には上記の1.を、(4)には上記の4.5.、(3)にはその他の要因による変動分が記録される)。このうち、(1)には内数として「債権者による不良債権の抹消」が記録されるが、これは、金融機関(債権者)による貸出債権のうち、借り手(債務者)の破産等により債権がもはや回収できないため、債権者によって貸借対照表から除却される価額を指す。具体的には、金融機関による不良債権の直接償却額が計上される。
その他の社会保険年金給付
Other Social Insurance Pension Benefits
その他の社会保険年金給付は、現物社会移転以外の社会給付の内訳項目であり、一般政府の運営する社会保障制度以外の社会保険のうち、雇用関係をベースとする退職後所得保障制度から支払われる現金給付を指す。具体的には、確定給付型や確定拠出型の企業年金からの給付額とともに、これと同様に発生主義により記録される退職一時金支給額を含む。本項目は、支払側では、制度を運営する立場としての金融機関(年金基金)部門、受取側では家計部門にのみ記録される。
その他の社会保険非年金給付
Other Social Insurance Non-pension Benefits
その他の社会保険非年金給付は、社会保障基金(一般政府)や年金基金(金融機関)といった外部機関を利用せず、また自己で基金を設けることもせず、雇主がその源から雇用者に支払う福祉的な給付を指し、特定の基金はなくとも雇主が支払う義務を負っているものと位置付けられる。具体的には、発生主義による記録を行わない(つまり現金主義で記録する)退職一時金のほか、私的保険への拠出金等を含み、所得の第2次分配勘定において、家計の受取、家計を除く各部門の支払に記録される。
その他の建物・構築物
Other Buildings and Structures
その他の建物・構築物は、固定資産の形態の一つであり、居住用以外の建物や構築物から成る項目であり、さらに「住宅以外の建物」、「構築物」、「土地改良」に分かれる。
住宅以外の建物は、住居用とされない建物の全体または一部を指し、これに必要不可欠な設備を含む。厳密には、建築基準法に規定される建築物のうち上記の住宅以外を指し、その新築・増築・改築工事が総固定資本形成となる。本項目の例示としては、一般的には、学校、病院、ホテル、工場、商業用建物(住宅部分を除く)、政府の庁舎等が含まれる。
構築物には、建物(建築物)以外の建設物が含まれ、具体的には、道路や橋、堤防、ダム等の社会資本(インフラ)のほか、鉄道軌道施設、発電施設、電気通信施設等が含まれる。また、プラントエンジニアリングに係る支出も構築物の新設取得時に要する費用と整理し、本項目に含めて記録している。
土地改良は、土地の量や質、生産性を大きく改善させる、もしくはその劣化を防ぐことにつながる行為の結果を指し、具体的には土地造成分が含まれる。なお、土地改良は、フローの資本勘定においては生産資産のうち固定資産に含まれるが、ストックの期末貸借対照表においては、土地という「非生産資産」に体化されるものとして記録される(土地と別箇に「土地改良」という形の固定資産が記録されない)。
その他の投資所得
Other Investment Income
その他の投資所得は、財産所得における投資所得のうち、利子、法人企業の分配所得、海外直接投資に関する再投資収益以外を指し、「保険契約者に帰属する投資所得」、「年金受給権に係る投資所得」、「投資信託投資者に帰属する投資所得」から成る。
保険契約者に帰属する投資所得には、生命保険や非生命保険といった保険契約者から受託された資産である保険技術準備金からの投資により得られる所得(保険帰属収益)及び保険契約者配当が含まれる。このうち、保険帰属収益については、現実には保険会社に留保される性格のものであるが、保険契約者に帰属するものであるため、保険会社から、保険契約者に一旦「保険契約者に帰属する投資所得」として支払われ、同額が、追加保険料として、保険契約者から保険会社に払い戻されるという迂回処理を行っている。
年金受給権に係る投資所得は、雇用関係をベースとする退職後所得保障(企業年金等)について、制度を運営する年金基金に対して、受給者たる雇用者(家計)が保有する年金受給権に関する投資所得を指し、現実には年金基金が留保するものであるが、保険契約者に帰属する投資所得と同様に、年金基金から一旦家計に支払われ、家計がこれを追加負担として年金基金に払い戻すという迂回処理が行われる。
投資信託投資者に帰属する投資所得は、投資信託の留保利益分を指す(平成24年7-9月期以降)。海外直接投資企業の留保利益と同様に、現実には投資者に配分されないものの、投資者に帰属する所得であることから、一旦、投資信託(金融機関)から投資者(家計等)に支払われ、投資者が同額を投資信託に再投資した、という迂回処理を行う。

た行

用語 解説
第1次所得バランス
Primary Income Balance
第1次所得バランスは、第1次所得の配分勘定におけるバランス項目であり、雇用者報酬(家計のみに発生)や営業余剰・混合所得(非金融法人企業、金融機関、家計のみに発生)、生産・輸入品に課される税-補助金(一般政府のみに発生)、財産所得の受取の合計(全制度部門に発生)から、財産所得の支払の合計(全制度部門に発生)を控除したものとして導出される。所得の第2次分配勘定では、税や社会保障等の経常移転による再分配が行われ、可処分所得が導出されるが、これに対して第1次所得バランスは、いわば再分配前の所得と解することができる。
第1次所得バランスは、固定資本減耗を含む(控除前の)「総」ベースと、これを含まない(控除後の)「純」ベースの双方で記録される。第1次所得バランスを5つの居住者制度部門で合計したものは、概念的には「国民(総)所得」に一致する(ただし、統計上の不突合から実際には一致しない)。また、「第1次所得バランス(純)」の一国の合計は「国民所得(NI)」(生産・輸入品に課される税-補助金を含む市場価格表示)となる。
対外資産・負債残高
Closing Stocks of External Assets / Liabilities
対外資産・負債残高(ストック編付表5)は、居住者と非居住者との間の取引の結果として生じた対外債権債務の一定時点における残高を貸借対照表の形で示したもので、フロー編の付表19「海外勘定」(3)金融取引に対応している。本表は、「本邦対外資産負債残高表」(財務省)や「資金循環統計」(日本銀行)に基づいて推計している。
対家計民間非営利団体
Private Non-profit Institutions Serving Households
対家計民間非営利団体は、政府によって支配、資金供給されているものを除き、家計に対して非市場の財貨・サービスを提供する全ての我が国の居住者である非営利団体が含まれる。具体的には、私立学校、政治団体、労働組合、宗教団体等が含まれる。
このように対家計民間非営利団体は、利益配分を行うことができない非営利団体のうち、非市場生産者かつ民間部門に属する機関から構成される制度部門と定義されるが、多数存在する非営利団体の個々について、市場性等を判断するのは実務上困難であり、こうした制約を踏まえて、日本標準産業分類上、学校教育、宗教、労働団体等に属し、かつ経営組織形態が会社以外の法人または法人でない団体について対家計民間非営利団体と位置付けている。
対家計民間非営利団体最終消費支出
Final Consumption Expenditure of Private Non-Profit Institutions Serving Households
対家計民間非営利団体最終消費支出は、非市場生産者としての対家計民間非営利団体による財貨・サービスの産出額-これは雇用者報酬、中間消費、固定資本減耗といった生産費用の積上げにより計測される-のうち、(i)家計への財貨・サービスの販売収入で賄われる部分(「財貨・サービスの販売」と呼ぶ)や、(ii)対家計民間非営利団体自身の総固定資本形成に充てられる部分(「自己勘定総固定資本形成」と呼ぶ)を除いた価額から成る。ここで、(i)には、例えば、私立学校(私立大学の附属病院を除きJSNAでは対家計民間非営利団体に格付けされる)の学費収入等が含まれ、(ii)は、JSNAの場合、対家計民間非営利団体に属する機関が自ら行う研究・開発(R&D)の総固定資本形成 から成る。言い換えると、対家計民間非営利団体の最終消費支出は、以下の式のとおり、対家計民間非営利団体により産出された財貨・サービスのうち、他の制度部門(家計)からの収入により賄われず、かつ、対家計民間非営利団体が自己消費として使い尽くした部分を示すと解することができる。

最終消費支出=産出額-財貨・サービスの販売-自己勘定総固定資本形成

他に分類されない経常移転
Other Miscellaneous Current Transfers
他に分類されない経常移転は、「その他の経常移転」のうち、非生命保険金、非生命純保険料、一般政府内の経常移転、経常国際協力を除く分を指す。具体的には、(1)一般政府により強制的に課せられた罰金・科料、(2)個人間の仕送り、贈与、寄付等の移転、(3)対家計民間非営利団体である私立学校に対する政府の助成や個人の寄付、宗教団体への個人の寄付等といった移転、(4)社会給付を除く、一般政府から他の制度部門への経常的支出を賄う観点から支払われる給付金や補助金等、(5)中央銀行の非市場サービス産出に対応する中央政府への経常移転、等が含まれる。(5)について補足すると、コスト積上げで計測される中央銀行の産出額のうち、手数料収入を除く部分(金融政策等の非市場性のサービス相当分)については、一般政府が消費するよう記録される一方、これと同額について、各部門の純貸出(+)/純借入(-)に影響を及ぼさないよう、中央銀行(金融機関)から中央政府(一般政府)の経常移転として記録している。
知的財産生産物
Intellectual Property Product
知的財産生産物とは、その知識の使用が法的またはその他の保護手段によって制限されるために、その開発者がそれを市場で販売したり、自らの利益のために生産に使用できたりする知識につながる研究、開発、調査またはイノベーションの成果と定義される。本項目は、さらに「研究・開発」、「コンピュータソフトウェア」、「鉱物探査・評価」に分かれる。
研究・開発は、人類・文化・社会に関する知識ストックを増加させ、効率や生産性を改善させたり、あるいは将来の利益を得ることを目的として体系的に実施される創造的活動を指す(いわゆるR&D)。
コンピュータソフトウェアは、システム及びアプリケーション・ソフトウェアの双方に関する、コンピュータ・プログラム、プログラム説明書およびサポート用資料から成り、受注型ソフトウェア、汎用ソフトウェア(ソフトウェア・プロダクツ)のほか、自己勘定で開発されたソフトウェアも含まれる。
鉱物探査・評価は、石油・天然ガス等の鉱床の探査、及び探査による発見に対してその後になされる評価に対する支出額(鑑定費用や試掘・ボーリング費用等)から成る。
中間投入、中間消費
Intermediate Input, Intermediate Consumption
中間投入とは、生産者による財貨・サービスの生産の過程で原材料費・光熱費・間接費等として投入された財貨やサービスを指す。生産者によるFISIM(別項参照)の消費も中間投入に計上される。一方、中間投入には、機械設備や建物等の固定資産の減価償却分や人件費は含まれず、それぞれ固定資本減耗、雇用者報酬として付加価値に含まれる。産出額から中間投入を控除したものが付加価値である。
なお、中間投入と中間消費は同義語であるが、我が国の国民経済計算においては、便宜上、コモディティ・フロー法等により財貨・サービス別に推計される計数を中間消費と、また、付加価値法等により経済活動別に推計される計数を中間投入と呼称している。これらの計数は、推計手法や基礎統計の違いにより一致しない場合があるが、第三次年次推計においては、供給・使用表の枠組みを活用することにより、これらの統合が行われ、両者の乖離(不突合)を縮減するよう推計が行われる。
調整可処分所得及び国民調整可処分所得
Adjusted Disposable Income and National Adjusted Disposable Income
調整可処分所得は、現物所得の再分配勘定におけるバランス項目であり、可処分所得に、現物社会移転の受払を加えたものとして導出される。換言すれば、可処分所得と調整可処分所得の関係は、「所得の使用勘定」における最終消費支出と現実最終消費家計の関係(消費の二元化)に対応するものであり、調整可処分所得を源泉に、現実最終消費が行われるという関係がある。制度部門別にみると、家計の調整可処分所得は、可処分所得に、一般政府や対家計民間非営利団体からの現物社会移転の受取を加えたものとなり、調整可処分所得>可処分所得となる。一方、一般政府や対家計民間非営利団体の調整可処分所得は、可処分所得から家計に対する現物社会移転を除いたものとなり、調整可処分所得<可処分所得となる。また、一国全体の調整可処分所得(すなわち国民調整可処分所得)は、それら制度部門別の所得支出勘定を統合することによって求められ、国民可処分所得と同額となる。
調整勘定
Reconciliation Accounts
調整勘定は、会計期間中の資産等(資産、負債、正味資産)の変化のうち、資本勘定及び金融勘定で記録される取引以外の要因による変化分を記録する勘定の総称であり、大きく「その他の資産量変動勘定」と「再評価勘定」に分けれ、後者はさらに「中立保有利得または損失勘定」と「実質保有利得または損失勘定」に分かれる。
貯蓄
Saving
貯蓄は、所得の使用勘定におけるバランス項目であり、可処分所得(もしくは調整可処分所得)について、年金受給権の変動調整の受払を調整した上で、財貨・サービスの最終消費支出(もしくは現実最終消費)に費やされなかった部分を示す。二元的に最終消費を記録する家計、一般政府、対家計民間非営利団体について、可処分所得と調整可処分所得の差と、最終消費支出と現実最終消費の差は、いずれも現物社会移転で同額であることから、可処分所得の使用勘定においても、調整可処分所得の使用勘定においても、貯蓄は一致する。
貯蓄は、可処分所得や調整可処分所得と、最終消費支出や現実最終消費の関係等によってプラスにもマイナスにもなりうる。資本移転を除いて考えれば、貯蓄がプラスということは、資産の取得がなされているか負債の返済・処分がなされているかのいずれかあるいは両方の状態であり、逆に貯蓄がマイナスであるということは、資産の売却・処分がなされているか、負債の増加がなされているかのいずれかあるいは両方の状態である。
なお、家計部門の貯蓄率は、以下の式により導出される。

貯蓄率=貯蓄/(可処分所得+年金受給権の変動調整)
調整貯蓄率=貯蓄/(調整可処分所得+年金受給権の変動調整)

賃貸料
Rent
賃貸料は、財産所得の一項目であり、土地等の非生産資産の所有者である制度単位(賃貸人)が、他の制度単位(賃借人)にこれを賃貸し、生産活動に使わせる見返りとして受け取る所得を指す。具体的には、土地の純賃貸料と、知的財産権等使用料のうち著作権使用料が含まれる。土地の純賃貸料は、総賃貸料から土地の所有に伴う税や維持費等の経費を控除した概念である。言い換えると、土地を賃借した使用者(賃借人)が、生産活動にこれを使用するにあたり、これらの諸経費を負担したと見なし、これを総賃貸料から控除した純賃貸料が財産所得として賃借人から賃貸人に支払われる扱いとなっている。著作権使用料については、その源泉となる著作権は、概念的には(無形の)非生産資産として扱われている関係上、その使用料については財産所得の賃貸料に含めて記録している。
デフレーター
Deflator
名目価額から実質価額を算出するために用いられる価格指数をデフレーターといい、デフレーターで名目価額を除して実質価額を求めることをデフレーションと呼ぶ。
価格指数には基準時の名目ウェイトを用いるラスパイレス型指数と、比較時の名目ウェイトを用いるパーシェ型指数がある。
我が国の国民経済計算では、デフレーターはパーシェ型指数を採用している(ラスパイレス型指数の例としては消費者物価指数や企業物価指数が挙げられる)。その計算のためには生産、消費、投資の各時点の品目別のウェイトが必要となる。国民経済計算は、コモディティ・フロー法で毎年品目別に供給と需要の推計を行っているので、これをウェイトとすることにより精緻なパーシェ型デフレーターの作成が可能になっている。
統計上の不突合
Statistical Discrepancies
国内総生産のように、概念上一致すべきものであっても、支出系列と生産系列では推計上の接近方法が異なっているため、推計値に乖離が生じることがある。この乖離を統計上の不突合といい、勘定体系のバランスを図るために表章される。
国民経済計算においては、国内総生産が、支出系列を推計する際のコモディティ・フロー法、生産系列及び分配系列を推計する際の付加価値法等という別個の方法で推計されるため、統計上の不突合を生じさせる。また、フロー編の付表1「財貨・サービスの供給と需要」に記録される輸出入と、主要系列表1「国内総生産(支出側)」に記録される輸出入において、基礎統計の違い等から乖離が生じる点も統計上の不突合の要因となる。これらの乖離については、第三次年次推計における供給・使用表の枠組みの活用等を通じて可能な限り縮減するよう推計が行われている。
なお、我が国の国民経済計算では、制度部門別資本勘定における非金融面の純貸出(+)/純借入(-)と、制度部門別金融勘定における金融面の純貸出(+)/純借入(-)(資金過不足)の間に不突合があり、これを5つの制度部門について集計したものが、統合勘定の統計上の不突合に一致するよう設計されている。
土地
Land
土地は、それを覆っている土壌および地表水を含む地面のうち、それに対して所有権が行使され、それを保有または使用することによってその所有者がそれから経済的利益を得ることができるものから成る。土地の価値からは、そこに所在する建物またはその他の構築物、育成作物・樹木・動物、鉱物やエネルギー資源、非育成生物資源等は除外される。土地は、さらに「宅地」、「耕地」、「その他の土地」に区分される。
土地の購入(純)
Purchase of Land(Net)
土地の購入(純)は、資本勘定に記録される項目の一つであり、非生産資産である土地について、購入から売却を控除したものである。なお、土地取引に要した移転費用や、土地造成に係る費用は、総固定資本形成に計上されるため、土地の購入(純)には含まれない。土地取引は、原則として、居住者の間でのみ行われるものとされる。非居住者が国内の土地を購入した場合には、居住者たる名目上の機関がこの土地の所有者となり、非居住者は、この名目上の機関に対し、土地の購入額に等しい債権(直接投資)を取得すると擬制している。したがって、国内制度部門の土地の購入(純)の合計はゼロとなる。

な行

用語 解説
年金受給権の変動調整
Adjustment for the Change in Pension Entitlements
年金受給権の変動調整とは、社会保険のうち雇用関係をベースとする退職後所得保障制度(企業年金や退職一時金)に係る純社会負担と社会給付の差額であり、所得の使用勘定において、家計の受取、金融機関の支払にのみ記録される。よって、同じ年金制度であっても社会保障制度(公的年金制度)に係る負担と給付の差額には本項目には含まれない。
ここで、年金受給権の変動調整を所得の使用勘定に記録する直感的な背景については、家計部門の観点から見れば以下のとおりとなる。まず、年金制度に係る負担や給付の受払は、企業年金であれ社会保障制度であれ、家計部門の認識としては、可処分所得に影響を与えるものである。つまり、負担の支払は可処分所得を減少させ、給付の受取は可処分所得を増加させる。経済全体として、負担-給付、つまり「超過負担額」がプラスであれば、ネットとしてマクロの可処分所得が減ることとなる。一方で、超過負担額は、金融面からみれば、「年金受給権」という家計部門にとっての金融資産の蓄積(超過負担がプラスの場合は増加、マイナスの場合は減少)、年金を運営する立場の金融機関にとっての負債の蓄積(同上)として記録されなければならない。こうした、金融面との整合性を確保する観点から、所得の使用勘定においては、純社会負担から社会給付を控除した額を「年金受給権の変動調整」として、家計の受取、金融機関の支払に記録することとしている。
ノン・パフォーミング貸付
Non-performing Loans
ノン・パフォーミング貸付とは、(1)利子や元本の支払が90日以上滞っている貸付、(2)90日以上分の利子額が資本化、追加融資または合意により支払が猶予されている貸付、または(3)延滞が90日分未満であるが破産手続き申請がなされるなど返済が全額は行われないと疑うに足る状況にある貸付を指す(一般的には不良債権と呼ばれる)。こうした貸付については、国民経済計算上の記録としては名目価値(残存元本の額面価額)で記録し、債権者部門の期末貸借対照表に参考系列として計上することを推奨している。このため、貸出・借入は、期末貸借対照表本体では、貸出を名目価値で記録し、別途、参考表として、金融機関(民間金融機関、公的金融機関)について、貸出額全体のうちノン・パフォーミング貸付の名目価値とともに、その公正価値を記録している。公正価値は、ノン・パフォーミング貸付の名目価値から毀損額として個別貸倒引当金を控除したものである。

は行

用語 解説
発生主義
Accrual Basis
国民経済計算では、取引の記録時点として、当該取引が実際に発生した時点を適用することとしており、これを発生主義の原則という。
具体的に各取引についてみると、生産活動においては、財貨の生産やサービスの提供がなされた時点、消費支出、資本形成については、財貨・サービスが購入された時点または所有権が移転した時点がとられる。また、輸出入取引は、居住者と非居住者間で所有権が移転した時点で記録される。さらに、所得の受払は、その支払義務が発生した時点、金融取引については、資産・負債の所有権が移転した時点、あるいは新たに債権・債務関係が発生した時点がとられる。
非育成生物資源
Non-cultivated Biological Resources
非育成生物資源は、生産物を1度限りもしくは繰り返し生み出す動物及びおよび植物のうち、それに対して所有権が存在するが、その自然成長または再生が制度単位の直接の支配、責任、管理の下にはないものから構成される。本項目は、さらに「漁場」と「非育成森林資源」に分かれる。このうち「漁場」の範囲は粗放養殖を除く全ての養殖漁場のうち、内水面及び外海と仕切られた沿岸における養魚池、養魚場、養殖かき及び真珠の養殖場等が含まれる。なお、養殖されている魚介類そのものは育成資産としての「仕掛品在庫」に含まれるので、漁場から控除される。「非育成森林資源」は国有林等を含む。
非金融法人企業
Non-financial Corporations
非金融法人企業は、全ての我が国の居住者のうち、非金融の市場生産に携わる法人企業や準法人企業から成る。法人企業としては、営利社団法人(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社)、医療機関等や、特殊法人等の一部が含まれる。準法人企業とは、法人企業ではないが、基本的にこれと同様に自律的に意思決定を行う主体を指し、海外の企業の国内支店や、国の特別会計の一部等が含まれる。
非金融法人企業には、市場生産に携わる非営利団体として、医療サービスを供給する医療機関(医療法人のほか、大学の附属病院や一部の独立行政法人を含む)や、介護保険による介護サービスを供給する介護事業者、さらには経済団体が含まれる。非金融法人企業は、政府による所有・支配に応じて、民間非金融法人企業か公的非金融企業に分かれる。
非生産資産
Tangible Non-Produced Assets
非生産資産とは、非金融資産のうち、生産活動の直接の成果物ではない資産であり、我が国の国民経済計算では自然資源と同義である。非生産資産(自然資源)は、形態別には大きくは、土地、鉱物・エネルギー資源、非育成生物資源からなる。土地は、さらに宅地、耕地、その他の土地から成り、非育成生物資源は、漁場と非育成森林資源(国有林等が含まれる)から成る。
なお、総固定資本形成のうち、土地の造成のように蓄積の結果が非生産資産(土地)と密接不可分なものは、土地改良として分類され、資本勘定では総固定資本形成に含まれる一方で、期末貸借対照表においては土地の価値に体化されるものとして記録される。
非生命純保険料
Net Non-life Insurance Premiums
非生命純保険料は、非生命保険に係る保険契約者ないし定型保証に係る保証対象のローンの借り手により当該会計期間の保険、保証のカバレッジを得るために支払われる保険料ないし保証料の総額から、非生命保険会社や定型保証機関へ支払われるサービスチャージ(非生命保険、定型保証の産出額)を差し引いたものであり、いわば非生命保険や定型保証のリスクコストを示す。所得の第2次分配勘定では、受取側では非生命保険会社や定型保証機関が含まれる金融機関、支払側では非生命保険の被保険者たる各制度部門ないし保証対象のローンの借り手部門(非金融法人企業ないし家計)に記録される。
なお、

非生命純保険料
=保険料(保証料)+追加保険料(追加保証料)-産出額
=保険料(保証料)+追加保険料(追加保証料)-[保険料(保証料)+追加保険料(追加保証料)-保険金(純債務肩代わり)]
=保険金(純債務肩代わり)


であり、非生命保険会社・定型保証機関としての金融機関からみれば、非生命純保険料と非生命保険金は一致する。
非生命保険金
Non-life Insurance Claims
非生命保険金は、損害保険等の非生命保険に係る保険会社から契約者への保険金の支払額や、住宅ローン保証等の定型保証に係る純債務肩代わり額を指す。所得の第2次分配勘定では、支払側では非生命保険会社や定型保証機関が含まれる金融機関に、受取側では非生命保険の被保険者たる各制度部門ないし保証対象のローンの貸し手部門(金融機関)に記録される。
なお、非生命保険金には、通常予見しえないような巨大災害が発生した際の保険金は含まれず、「資本移転」に計上される。これは、非生命保険の産出額が極端な動き(マイナス)になることを避けるという観点から国際基準において推奨されている処理である。
FISIM
Financial Intermediation Services Indirectly Measured
FISIM(間接的に計測される金融仲介サービス)は、金融サービスの一形態である。金融仲介機関の中には、借り手と貸し手に対して異なる利子率を課したり支払ったりすることにより、明示的には料金を課さずにサービスを提供することができるものがある(このような金融仲介機関に資金を貸す人々(預金者)には他の場合よりも低い利子率を支払い、資金を借りる人々にはより高い利子率を課する)。こうした金融仲介機関による明示的には料金を課さないサービスの価額を、間接的な測定方法を用いて推計したものが、FISIMである。産出されたFISIMは、需要先としては、サービスの利用者の消費(中間消費ないし最終消費支出)に配分される。
V表(経済活動別財貨・サービス産出表)
Make Matrix
V表は、行に経済活動を、列に財貨・サービスをとった産出額の行列で、各経済活動がどの財貨・サービスをどれだけ産出したかを生産者価格で記録したものであり、行和は経済活動別産出額を、列和は財貨・サービス別産出額を、それぞれ表している。V表は、国民経済計算において経済活動別財貨・サービス投入表(U表)とともに産業連関表に相当する部分を構成する。
V表の対角線に計上される計数は、ある経済活動が主産物として産出する財貨・サービスを示す。また、対角線以外に計上される計数は、主に副次生産物を示し、当該財貨・サービスを主産物として産出する経済活動が他にあることを示している。
ちなみに、副次生産物とは、「同一事業所で、主産物と生産技術的な結合関係はないが、主産物と併せて生産される場合にそのウェイトの低い方」をいう。例えば、自動車製造業で生産される航空機用エンジンがこれに該当する。また、企業内研究開発や自社開発ソフトウェアの産出は、各経済活動の副次生産物として記録される。
なお、ある1つの財の生産に当たって、生産技術上目的とした財の他に、必然的に別の財が一定量だけ生産される場合がある。その財を主生産物として生産する部門が、他にある場合は「副産物」といい、ない場合には「屑」という。
防衛装備品
Defense Equipment
防衛装備品は、一般政府の防衛サービスの生産のために必要な戦車、艦艇、航空機等で、防衛サービス目的以外には使用できない固定資産から成る。なお、弾薬類のような、防衛サービスのために使用される生産資産であるが、一回限り使用されるものについては在庫に記録される。
法人企業の分配所得
Distributable Income of Corporations
法人企業の分配所得は、財産所得の項目の一つであり、「配当」と「準法人企業所得からの引き出し」に分かれる。配当は、法人企業の発行する株式(持分)の所有者たる株主が、資金を当該法人企業が自由に使用できるように資金提供(投資)を行った結果として権利を得る投資所得を指す。ここには、一般的な株式配当金のほか、(1)投資信託からその投資家に対して実際に配分されたインカムゲインを原資とする分配金(平成24年7-9月期以降)や、(2)海外直接投資について、投資先である現地企業から投資元である直接投資家に対して実際に配分された配当金も含まれる。
準法人企業所得からの引き出しは、法人企業ではないが、これと同様に行動する制度単位である「準法人企業」について、その所有者が当該企業から引き出す資金を指し、株式会社(法人)の持分権者が受け取る配当と性質が類似するものである。具体的には、海外支店からの配分済の収益のほか、公営住宅使用料が含まれる。
保険・年金・定型保証
Insurance, Pension, Standardized Guarantee Scheme
保険・年金・定型保証は、金融機関によって仲介される所得・富の再分配の一形態である保険・年金契約等における制度の参加者の債権を指し、制度の参加者(保険であればその契約者、年金であればその受給権者、定型保証であれば保証対象となるローンの借り手)が保有する資産、仲介を行う金融機関(保険であれば保険会社、年金であれば年金基金、定型保証であれば定型保証機関)の負債として記録される。本項目には、「非生命保険準備金」、「生命保険・年金保険受給権」、「年金受給権」、「年金基金の対年金責任者債権」、「定型保証支払引当金」が含まれる。
このうち、非生命保険準備金は、積立型の損害保険に係る責任準備金(積立金のうち契約者の持分に相当する部分)等が含まれる。また、生命保険・年金保険受給権は、(1)生命保険会社(かんぽ生命や共済保険を含む)の積立型の生命保険に係る責任準備金(積立金のうち契約者の持分に相当する部分)や、(2)生命保険に係る未経過保険料、支払備金のほか、(3)生命保険会社の提供する個人年金商品に係る責任準備金等が含まれる。
年金受給権は、年金基金の加入者が、年金基金から将来年金や一時金として受け取ることのできる権利を差し、企業年金である厚生年金基金や旧適格退職年金、確定給付企業年金(いずれも確定給付型)、確定拠出企業年金のほか、国民年金基金等の私的年金制度(生命保険会社の提供する個人年金商品は除く)や、企業の退職一時金に係る受給者の持分を指す。また、年金基金の対年金責任者債権は、確定給付型の年金において企業などの年金責任者が雇用者に約束した年金受給権の負債総額と、運用される資産総額との差額を指す(いわゆる積立不足に相当)。
定型保証支払引当金は、定型保証機関が供与する小口化・定例化された保証取引において支払が見込まれる保証金額を指す。
補助金
Subsidies
補助金とは、一般的に、(1)一般政府から市場生産者に対して交付され、(2)市場生産者の経常費用を賄うために交付されるものであり、(3)財貨・サービスの市場価格を低下させるものであると考えられるものであること、という3つの条件を満たす経常交付金である。第1次所得の配分勘定では、一般政府の受取(控除項目)としてのみ記録される。市場生産者に対する支払であっても、投資を支援するための支払や運転資産の損失補填のための支払については補助金には含まれない(「資本移転」に含まれる)。また、一般政府内や対家計民間非営利団体に対する支払も、上記(1)を満たさないことから補助金には記録されない。例えば、中央政府から地方政府への公共事業負担金(補助事業に対する国庫負担金)は「資本移転」、対家計民間非営利団体に対する経常交付金(例えば、私学助成)は、「所得の第2次分配勘定」の「他に分類されない経常移転」として記録される。

ま行

用語 解説
民間最終消費支出
Private Final Consumption Expenditure
家計最終消費支出と対家計民間非営利団体最終消費支出の合計である。
持ち家の帰属家賃
Imputed Service of Owner-occupied Dwellings
帰属家賃とは、実際には家賃の受払を伴わない住宅等について、通常の借家や借間と同様のサービスが生産され消費されるものとみなして、それを市場価格で評価した帰属計算上の家賃をいう。
「持ち家の帰属家賃」は、実際には家賃の受払を伴わない自己所有住宅(持ち家住宅)について計算した帰属家賃のことである。国民経済計算では住宅自己所有者(家計)は不動産業(住宅賃貸業)を営んでいるものとされるため、「持ち家の帰属家賃」は家計の生産額に含まれ、営業余剰(=「持ち家の帰属家賃」-中間投入-固定資本減耗-生産・輸入品に課される税)は家計の営業余剰に含まれる。ここで、中間投入には修繕費や住宅ローンの借入に係るFISIM(借り手側FISIM)等、生産・輸入品に課される税には固定資産税等が含まれる。固定資本減耗は、持ち家の固定資産から生じる減耗分を指す。
また、帰属家賃には、「持ち家の帰属家賃」以外に「給与住宅差額家賃」も含まれる。これは、給与住宅に実際に支払われた家賃と市場評価額との差額分である。この差額分は、実際に支払われた家賃とともに、給与住宅提供者が不動産業(住宅賃貸業)として生産しこれを家計が購入(家計最終消費支出)するとみなすことで、生産・支出ともに市場価格での評価を行う。さらに「給与住宅差額家賃」分は、給与住宅提供者から家計への現物給与として雇用者報酬に含まれる。
持分・投資信託受益証券
Equity and Investment Fund Shares
持分・投資信託受益証券は、債権保有者が発行主体に対して残余請求権を持っているような金融資産であり、大きく「持分」と「投資信託受益証券」に分かれる。このうち、持分は、我が国において設立されている各種法人に対する持分であり、金融商品取引法上の株式会社が発行する株式のほか、特別法に基づき設置された特殊法人等に対する持分が含まれ、国民経済計算体系では、これを発行する制度単位の負債として扱われる。持分は、さらに上場株式、非上場株式、その他の持分から成る。このうち、その他の持分は、証券の形態ではない持分であり、政府による特殊法人等への出資金や準法人企業に対する持分を指す。
一方、投資信託受益証券は、投資信託委託会社が、自ら保有する投資信託受益権を分割し、投資信託の購入主体に対して発行した受益証券、及び、投資法人の発行する投資証券を指す。金融商品取引法における、投資信託及び投資法人に関する法律に規定する投資信託の受益証券及び投資証券に該当する。

や行

用語 解説
U表(経済活動別財貨・サービス投入表)
Use Matrix
U表は、行に財貨・サービスを、列に経済活動をとった投入額の行列で、各経済活動が生産のためにどの財貨・サービスをどれだけ投入したかを購入者価格で表示したものであり、列和は経済活動別中間投入額を表している。U表は、国民経済計算において経済活動別財貨・サービス産出表(V表)とともに産業連関表に相当する部分を構成する。

ら行

用語 解説
利子
Interest
利子は、特定の種類の金融資産(例えば、預金、債務証券、貸出等)の所有者である制度単位が、それを他の制度単位の自由な使用に委ねることにより受け取る所得を指す。
ただし、国民経済計算上に記録される利子のうち、預金や貸出・借入に係る利子は、「FISIM調整後」の概念である。ここで、現実に観測される利子については、貸出という資金提供の代わりに受け取る利子所得には、貸出利子率と参照利子率の差×貸出残高から求められる「借り手側FISIM」分が含まれる形、また、預金という資金提供の対価として受け取る利子所得には、参照利子率と預金利子率の差×預金残高から求められる「貸し手側FISIM」が含まれない形、すなわち「FISIM調整前」のものである。国民経済計算においては、こうした金融仲介機関が預金や貸出により提供した金融サービスに対する支払分は、財貨・サービスの取引として記録することとなっている。このため、貸出については、観測される利子所得から「借り手側FISIM」が控除された分が、預金については、観測される利子所得に「貸し手側FISIM」を加算した分が、それぞれ(FISIM調整後の)利子として記録される。
このほか、利子には、雇用関係をベースとした社会保険制度のうち確定給付型の退職後所得保障制度(企業年金、退職一時金)について積立不足が存在する場合、同制度を運営する年金基金(金融機関)が、同制度の責任主体(年金責任者)である雇主企業(非金融法人企業、金融機関)に対して金融債権(年金基金の対年金責任者債権)を有する形となる関係上、そこから発生する擬制的な利子分の受払が記録される。
歴史的記念物
Historic Monuments
歴史的記念物とは、公的機関により、歴史的に重要性をもつものとして目録に記載されている建物及びその他の構築物、彫像などである。我が国の場合、文化財保護法の規定により、重要文化財等に指定されたものを対象とし、政府のこれらの文化財保存のための支出累計額を期末貸借対照表の欄外に参考として記載している。
連鎖方式と固定基準年方式
Chain-Linking Method, Fixed-Base Method
固定基準年方式のラスパイレス指数やパーシェ指数は、相対価格の変化が大きい場合、経年変化するにつれて「指数バイアス」(あるいは「代替バイアス」)がかかることが知られている。すなわち、数量と価格に負の相関があるとき、ラスパイレス指数には上方の、パーシェ指数には下方のバイアスがかかる。一方、連鎖指数は以下の式でもわかるように隣接する2時点間の比較に着目した指数であり、毎期基準改定しているのと同じこととなるため「指数バイアス」はほとんど生じないことが知られている。このため、国民経済計算の国際基準では実質値及びデフレーターの指数算式においては連鎖方式を採用することが勧奨されている。我が国の国民経済計算では、国内総生産系列(支出側及び生産側)において連鎖方式(実質値:ラスパイレス型、デフレーター:パーシェ型)が採用されている。

連鎖方式によるパーシェ型デフレーター

t時点におけるパーシェ型連鎖デフレーターは以下の式で表すことができる。
パーシェ型連鎖デフレーターの式の画像

なお、連鎖方式では、実質値における「加法整合性」が成立しない。すなわち、固定基準年方式の場合、実質値の内訳項目を合計したものは、集計項目の実質値と一致するが(「加法整合性」が成立)、連鎖方式では一致しない。このため、我が国の国民経済計算では、主要系列表1では「開差」の欄を設けることで、またフロー編の付表2では連鎖の実質値を指数で表章することで、加法整合性の欠如を示している。
国内総生産(生産側)デフレーターはダブルデフレーションで作成されるため、主要系列表3やフロー編の付表2における連鎖デフレーターも同様にダブルデフレーション方式となっている。t時点におけるダブルデフレーションの計算式は以下の形で表すことができる。

ダブルデフレーション計算式の画像

  • 当ページに掲載の資料の一部はPDF形式のファイルであるため、閲覧するにはAdobe Reader別ウインドウで開きますが必要となります。
内閣府 Cabinet Office, Governmentof Japan経済社会総合研究所
〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館