はじめに

平成12年10月27日に、日本の国民経済計算の体系が22年ぶりに改定されることとなりました。
 ご承知のとおり、この国民経済計算、いわゆるSNA(System of National Accounts)とは、一国の経済を構成する諸側面を系統的・組織的に把え、それを記録するマクロ経済統計です。しかし、そのマクロ経済統計の仕組みが各国で差異があった場合、国際比較可能性は失われてしまいます。
 そのため、国際連合は、この国民経済計算(SNA)のフレームワークについて、共通の基準(モノサシ)を提示し、加盟国にその採用を促してきました。
 これまで日本は、1968年第15回国際連合統計委員会において採択された「国民経済計算の体系(68SNA)」を採用し、1978年8月以降、22年余りにわたって同体系に基づいた国民経済計算を推計してきました。しかしながら、1980年代に入り、経済社会のグローバリゼーションや情報化の進展、さらには金融機関や金融市場の多様化・複雑化など、国連が1968年に採択した68SNAの勧告当時は想定していなかった環境の変化の進展等がみられるようになりました。こうした中、68SNAの見直しの気運が世界中で高まってきました。
 これを受けて、1983年3月に国連統計部をはじめとする各国際機関の統計部局からなるワーキンググループが設置され、本格的な改定作業が進められた結果、1993年の第27回国連統計委員会において、新たな国民経済計算の基準として、「1993年国民経済計算体系(System of National Accounts 1993:(以下93SNA)」が採択され、同年7月開催の国連経済社会理事会において、この93SNAを採用するよう勧告が出されました。
 日本では、国連の93SNA勧告を受け、1994年以降、「国民経済計算調査会議」(学識経験者により構成)を中心に、日本が導入するに相応しい 93SNAの内容の検討が進められましたが、そうした検討の結果を踏まえ、経済企画庁は、2000年10月に、従来5年毎に行われている国民経済計算の基準改定と併せて、93SNAへと移行しました。
 この冊子では、今回の93SNAへの移行に関し、特に話題となっている論点を中心に変更点を説明し、そうした変更を経た国民経済計算の姿を紹介します。
 本冊子が、日本の経済の循環と構造を明らかにする新しい93SNAの理解の一助となれば幸いです。