3.93SNA移行による影響

なお、以下の説明には、93SNA移行と同時に行われた5年毎の基準改定の影響による効果も含まれておりますので、 必ずしも全てが93SNA移行の影響というわけではありません。

(1)支出面の名目国内総生産(GDP)の水準と成長率への影響

 改定期間(平成2~11年度)の水準の開差率は、平均で2.72%の上方改定となっています。一方、改定期間の成長率の開差率は、平均で0.14%の上方改定となっており、概ね小幅な改定にとどまっています。
 ただし、直近の平成10年度、平成11年度は、受注型コンピューター・ソフトウェア購入(額にして6兆円強、成長率の寄与度にして0.1%程度)や社会資本の固定資本減耗(額にして8兆円強、成長率の寄与度にして0.1%程度)が成長の押上げ要因となっていることもあり、比較的大幅な上方改定がなされていることが分かります。

図11

(2)支出面の実質国内総生産(GDP)の成長率への影響

 改定期間(1991~99年度)の成長率を平均すると、名目成長率同様、概ね小幅な改定にとどまっています(期間平均0.12%の開差率)。
 ただし、直近の98年度、99年度については、前記名目成長率の上方改定にみられた要因に加えて、平成2年基準から平成7年基準へと変更したデフレーター(物価指数)の下方改定要因により、比較的大幅な上方改定がなされていることが分かります。

図12

(3)調整勘定の細分化による分析結果

 平成3年以降の非金融資産(土地等)、金融資産(株式等)の調整勘定の動きのうち、大半が実質保有利得の動きによって説明可能であることがわかります。

図13

(4)諸外国における93SNA導入によるGDPへの影響

 ここでは、資料が入手可能なイギリス、フランス、オランダ、ドイツ、カナダ、オーストラリア及びアメリカの7カ国について、93SNA導入に伴うGDPへの影響について紹介します。
 これら7カ国とも、93SNA(ESA95)の導入は、日本の場合と同様に、基準年変更や産業連関表等の基礎統計の更新を受けた「基準改定」と同時に取り組まれているようです。このため、93SNA移行に伴うGDPへの純粋な影響を見るために、概念調整に伴うGDP変更分とその他統計上の要因による変更分を分けて考える必要があります。次頁の表、図14には、7カ国の基準改定/93SNA移行による、ある比較年次におけるGDP水準の変更率(開差率)が、93SNA移行による概念調整分とともに示されています。
 図14の表から把握できるように、93SNA移行を含めた基準改定により、各国の名目GDPは1.2~4.1%増加しており、その影響はまちまちですが、一様に上方改定がなされているといえるでしょう。このうち93SNA移行による概念調整分は、0.3~3.3%となっており、イギリスを除き、基準改定による変更分全体の2分の1ないしそれ以上を説明しているといえます。
 次に概念変更の項目別にGDPへの影響を見ますと、まず、コンピューター・ソフトウェアについては、各国の名目GDPを0.2~1.5%押し上げたことがわかります(カナダについては1993年の基準改定以前から受注型ソフトウェアを総固定資本形成に含めているため、下の表においては影響を考慮していません)。
 また、道路、ダム等といった社会資本に新たに固定資本減耗を計測するという概念変更については、イギリス、オランダ、ドイツの3カ国で影響が観測されましたので、それを示しています(その他の諸国については、アメリカを含め、それぞれの基準改定以前の段階で、既に社会資本の固定資本減耗を政府最終消費支出に含めています)。この概念変更による名目GDPへの影響は、イギリスの0.2%からオランダの1.4%と、影響の大きさはそれぞれ異なっています。

図14
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