おわりに

これまで紹介してきましたように、日本のSNAは、1968年に国連が定めた基準に沿った体系から、経済の制度の複雑化・成熟化、分析対象の変化・広範化などに対応するため1993年に同じく国連によって定められた93SNAへと、その姿を一層現代的な内容のものに変えることとなりました。
 新しい93SNAは、一国全体の経済の動向やその構造分析を行うに当たって、統計ユーザーの多面的なニーズに一層応えられることとなったわけですが、この指標には、社会資本の減耗分など国民の厚生の大きさを測る要素も含まれており、必ずしも市場における金銭取引によって実感されるイメージとは異なる動きを示すこともあります。したがって、好況か不況か等、実際の景気動向の判断を行うに当たっては、SNAにおける国内総生産(GDP)の動きを見るだけでなく、失業率や物価動向、金融市場に関する他の経済指標を活用して、総合的に行われる必要があります。
 93SNAのご利用にあっては、こうした93SNAの性質を十分に理解し、分析の目的に応じて、適切に活用していただきたいと思います。