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1996年の無償労働の貨幣評価について

平成10年5月21日(公表)
同年11月5日(一部改訂)
経済企画庁経済研究所
国民経済計算部

1.経緯

 当庁では、平成9年5月15日に「無償労働の貨幣評価について」を公表し、1981年、1986年及び1991年時点の「無償労働」の貨幣評価の結果を明らかにしている。
本資料は、その後、平成9年9月に総務庁が公表した「平成8年社会生活基本調査」の結果を基礎データとして、前回と同様の方法で1996年の無償労働の貨幣評価を行ったものである。
なお、本資料は、平成10年5月21日の公表後、イギリスの無償労働評価額について新たな情報が入手できたため、「4.(7)イギリスの無償労働評価額との比較」が改訂されたものとなっている。

2.背景

 私たちの生活は、市場経済活動のみならず、炊事・洗濯等の家事労働やボランティア活動などによって支えられている。これらの労働は、家族や他者に対価を要求することなく労働力を提供するという意味で、市場で労働力を提供して対価を得る「仕事」=「有償労働」に対して、「無償労働」と呼ぶことができる。
無償労働は、私たちの生活の中で重要な役割を果たし、経済的にも大きな価値を有していると考えられるが、これまでの経済統計では十分に把握・評価されていない。国民経済計算体系(SNA)は一国の経済活動全体を記録し、GDP(国内総生産)といった経済指標を提示するものであるが、市場を介さず、無償で行われる無償労働はSNAには記録されない。このため欧米諸国では、SNAとは別に、無償労働の貨幣評価額を推計して市場経済活動と比較可能な形にし、GDPと比較する等の試みが行われている。
また、家事労働などにおいては、これまで女性が大きな役割を果たしてきており、その経済的価値と女性の負担状況を他の経済指標と比較可能な形で明らかにすることも意義がある。
こうしたことから、経済研究所国民経済計算部では、平成9年と今回の2回の作業により、1981年から1996年までの5年毎4時点について無償労働の貨幣評価額を推計した。
なお、無償労働の範囲や評価方法等を定めるに当たっては、平成8~9年に「無償労働に関する研究会」(座長 鵜野公郎慶応義塾大学教授)を開催し、専門家のご助言をいただいた。
注)推計に当たっての計算業務は、(株)住友生命総合研究所が行った。

3.無償労働の範囲及び貨幣評価の方法

  1. 無償労働の範囲
    本推計における「無償労働」の範囲は、無償労働のうちサービスを提供する主体とそのサービスを享受する主体が分離可能(すなわち、そのサービスの提供を第三者に代わってもらうことができる)で、かつ市場でそのサービスが提供されうる行動とした。これは「第三者基準」と呼ばれ、国際的に用いられている基準である。
    具体的には、推計の基礎となる統計の調査項目を踏まえ、無償労働を以下の行動に区分して推計を行った(注1)。
    家事(炊事、掃除、洗濯、縫物・編物、家庭雑事)、介護・看護、育児、買物、社会的活動(注2)
  2. 貨幣評価の方法
    無償労働の貨幣評価額を推計するに当たっては、家事や社会的活動等が産み出すサービスの価値を直接把握し、評価することが困難なため、人がそれらの行動に費やしている時間をベースにし、これを賃金で評価することとした。
    無償労働の貨幣評価額=1人当たり無償労働時間×時間当たり賃金×人口
    (利用統計…無償労働時間:「社会生活基本調査」(総務庁)の15歳以上の人の生活時間調査結果。「6.基礎データ」参照
    時間当たり賃金:後記及び「6.基礎データ」参照
    人口:「社会生活基本調査」(注3))
    したがって、どのような賃金を使うかによって貨幣評価額は大きく異なることになるが、本推計では、以下の3つの考え方に従い、3種類の賃金を使って推計を行った。
    a.機会費用法
    b.代替費用法
    • b-1 スペシャリスト・アプローチ
    • b-2 ジェネラリスト・アプローチ
    a.機会費用法(Opportunity cost method;以下「OC法」という。)
    無償労働を行うことにより、市場に労働を提供することを見合わせたことによって失った賃金(逸失利益)で評価する方法である。本推計では、性別・年代別の時間当たり平均賃金を使って評価した。
    この方法については、無償労働の内容ではなく、誰が無償労働を行ったかによって評価が変わるという問題が指摘されている。
    (利用統計…「賃金構造基本統計調査」(労働省))
    b.代替費用法(Replacement cost method)
    無償労働によって生産しているサービスと類似のサービスを市場で生産している者の賃金で評価する方法である。
    b- 1 代替費用法スペシャリスト・アプローチ(以下「RC-S法」という。)
    市場で類似のサービスの生産に従事している専門職種(注4)の賃金で無償労働を評価する方法である。
    この方法については、無償労働と専門職種の労働では、規模の経済性や資本装備率の違いによる生産性の格差が存在するという問題が指摘されている。
    (利用統計…「賃金構造基本統計調査」)
    b- 2 代替費用法ジェネラリスト・アプローチ(以下「RC-G法」という。)
    無償労働を家事使用人の賃金で評価する方法である。
    この評価方法については、家事使用人は無償労働のすべてを行うわけではないこと、及び社会的活動の評価には適さないという問題が指摘されている。
    (利用統計…「一般在宅等勤務者の賃金実態調査」((社)日本臨床看護家政協会))
    注1)「社会生活基本調査」(総務庁)では家事が細分されていないため、「国民生活時間調査」(NHK)の家事の内訳(炊事、掃除、洗濯、縫物・編物、家庭雑事)の時間比率を使って、社会生活基本調査の家事を分割している。
    注2)
    • 「家庭雑事」
      「国民生活時間調査」では炊事、掃除、洗濯、縫物・編物以外の家事のことを指しており、「社会生活基本調査」の「家事」の内容でこれに対応するものとしては「布団干し、家族の身の回りの世話、家計簿の記入、銀行・市役所等の用事、車の手入れ、家具の修繕等」が挙げられる。
    • 「介護・看護」
      「社会生活基本調査」では「家族あるいは他の世帯にいる親族に対する日常生活における入浴・トイレ・屋内の移動・食事等の動作の手助け」とされ、一時的に病気などで寝ている家族に対する介護・看護を含むが、家族以外の人に対する無報酬の介護・看護は「社会的活動」になる。
    • 「育児」
      「社会生活基本調査」では「乳児のおむつの取り替え、乳幼児の世話、子供のつきそい、子供の勉強の相手、授業参観、子供の遊びの相手、運動会の応援」とされ、子供の教育に関する行動を含むが、就学後の子供の身の回りの世話は「家事」になる。
    • 「社会的活動」
      「社会生活基本調査」では「地域の道路や公園の清掃、施設の慰問、災害地等への援助物資の調達、婦人・青少年活動、労働運動、政治活動、宗教活動等」が挙げられている。
    注3)人口は、「社会生活基本調査」の人口を「人口統計月報」(総務庁)のデータで補正して使っている。
    注4)代替費用法スペシャリスト・アプローチにおいて、無償労働の種類に対応させた専門職種は下表のとおり。
    「炊事」は、食事の準備と後片付けの双方を含んでおり、一般的な家庭における調理技術も考慮して、「調理士見習」とした。
    「介護・看護」は、ベッドメーキング、検温、食事の世話等が中心で、医療行為の周辺部分のみと考えられるため、「看護補助者」とした。
    「社会的活動」は、対応職種が定められないため、「個人サービス業」、「協同組合」、「社会保険社会福祉」、「政治経済文化団体」の産業別賃金の加重平均を用いた。
無償労働に対応する専門職種
無償労働の種類 対応職種
炊事 調理士見習
掃除 ビル清掃員
洗濯 洗濯工
縫物・編物 ミシン縫製工
家庭雑事 用務員
介護・看護 看護補助者
育児 保母・保夫
買物 用務員
社会的活動 サービス業加重平均

4.推計結果

  1. 無償労働の総評価額
    1996年のわが国における無償労働の総評価額(年間・15歳以上人口分)は約76~116兆円で、対GDP(国内総生産)比では約15~23%の規模であった。1996年の対GDP比は、過去に比べ若干上昇している。
    無償労働の評価額は労働の価値を評価したものであることから、GDPの労働者への分配額である賃金・俸給(有償労働の評価額とみることができる)と比較してみると、その約32~49%の規模であった。
    ちなみに、無償労働と有償労働を時間で比較すると、無償労働に費やされる時間は、有償労働時間の5割程度であった。
    表1 無償労働の総評価額と対GDP比        (単位:10億円、%)
    暦年 GDP OC法 RC-S法 RC-G法
    総額 GDP比 総額 GDP比 総額 GDP比
    1981 257,962.9 53,264 20.6 48,538 18.8 37,339 14.5
    1986 335,457.2 71,828 21.4 62,857 18.7 49,037 14.6
    1991 458,299.1 98,858 21.6 84,027 18.3 66,728 14.6
    1996 499,861.0 116,115 23.2 99,776 20.0 76,069 15.2
    表2 無償労働の総評価額の対賃金・俸給比       (単位:10億円、%)
    暦年 賃金・俸給 評価額の賃金・俸給比 (参考) 労働時間比較(一日当たり)
    OC RC-S RC-G 無償労働 有償労働 無償/有償
    1981 124,186.0 42.9 39.1 30.1 2時12分 4時35分 48.0
    1986 157,112.7 45.7 40.0 31.2 2時15分 4時27分 50.6
    1991 212,337.6 46.6 39.6 31.4 2時16分 4時20分 52.3
    1996 239,377.8 48.5 41.7 31.8 2時13分 4時10分 53.2
    (注)時間データは、「社会生活基本調査」の15歳以上の行動の種類別の総平均時間(週全体)から週平均の一日一人当たり時間として作成しており、当該行動をしなかった人を含めた平均時間である。
    「有償労働時間」は同調査における「仕事」の時間である。
    以上の点は、本資料の他の部分でも同様である。
  2. 無償労働の行動別評価額
    1996年の総評価額を無償労働の行動種類別にみてみると、無償労働時間を反映して、家事のうちの炊事の評価額が最も大きく、約23~34兆円で総評価額の約27~31%を占めた。
    炊事に続いて、買物、家庭雑事、洗濯の順で構成比が高く、日常的に誰もが行う必要のある無償労働の評価額が高くなっている。
    これに対して、介護・看護や育児は、行う必要がある人とない人がいるため、総評価額に占める割合は低いが、行う必要がある人における構成比は高くなるものと考えられる(p.10「(4)介護・看護と育児の無償労働評価額」参照)。
    また、社会的活動の評価額は約2~4兆円であり、無償労働の中に占める比率は低く、対GDP比では1%以下の水準であった。

    表3 無償労働の行動別評価額と労働時間(1996年)

  3. 無償労働の男女別評価額
    ①無償労働の総評価額の男女別内訳
    1996年の無償労働の総評価額を男女別にみてみると、女性の評価額が全体の約85~89%を占めており、無償労働の大部分は女性に担われていることが評価額上も明らかである。経年的には、徐々に男性の構成比が上昇している。
    表4 無償労働の総評価額の男女別内訳       (単位:10億円、%)
    暦年 OC法 RC-S法 RC-G法
    男性 女性
    (構成比)
    男性 女性
    (構成比)
    男性 女性
    (構成比)
    1981 5,082 48,182 (90.5) 3,465 45,073 (92.9) 2,395 34,945 (93.6)
    1986 8,150 63,678 (88.7) 5,373 57,485 (91.5) 3,844 45,192 (92.2)
    1991 14,528 84,330 (85.3) 9,724 74,303 (88.4) 7,044 59,684 (89.4)
    1996 18,011 98,104 (84.5) 13,016 86,761 (87.0) 8,673 67,396 (88.6)
    ②無償労働の行動別評価額の男女別内訳
    1996年の無償労働の行動別評価額について、RC-S法により男女別にみてみると、女性は、家事が無償労働全体の70%近くを占めており、特に炊事は全体の約30%を占めた。
    一方、男性の家事は全体の約32%(炊事は4%以下)であり、最も構成比が高いのは買物の約40%であった。

    表5 無償労働の行動別評価額の男女別内訳(1996年RC-S法)

    ③無償労働の男女別一人当たり年間評価額
    1996年の無償労働評価額を一人当たりに換算し、男女別にみてみると、女性の評価額は男性の5~7倍であり、評価額の最も高いOC法では、男性約35万円、女性約180万円であった。
    経年的にみると、男女の格差は徐々に縮小している。
    参考までに、男女別に無償労働評価額(OC法)と市場賃金の合計額(年間総労働評価額とみることができる)を算出してみると、男性の方が少し多いが、有償・無償の労働時間の合計(総労働時間)は女性の方が少し長い。
    表4 無償労働の総評価額の男女別内訳       (単位:10億円、%)
    暦年 OC法 RC-S法 RC-G法
    男性 女性
    (構成比)
    男性 女性
    (構成比)
    男性 女性
    (構成比)
    1981 11.6 103.8 7.9 97.1 5.5 75.3
    1986 17.4 128.7 11.5 116.2 8.2 91.4
    1991 29.2 160.7 19.6 141.6 14.2 113.8
    1996 34.9 179.8 25.2 159.0 16.8 123.5
    (参考) 市場賃金、及び市場賃金と無償労働評価額(OC法)の合計
    (単位:万円)
    暦年 市場賃金 合計額
    男性 女性 男性 女性
    1981 282.4 156.6 294.0 260.4
    1986 337.0 190.7 354.4 319.4
    1991 408.7 234.8 437.9 395.5
    1996 439.3 265.6 474.2 445.4
    (注)市場賃金は、「賃金構造基本統計調査」の産業計の「きまって支給する現金給与額」の12倍。
    (参考) 一日当たり労働時間
    暦年 無償労働 有償労働 労働時間合計
    男性 女性 男性 女性 男性 女性
    1981 0時17分 4時 1分 6時 4分 3時11分 6時21分 7時12分
    1986 0時22分 4時 2分 5時58分 3時 2分 6時20分 7時 4分
    1991 0時30分 3時57分 5時46分 2時59分 6時16分 6時56分
    1996 0時31分 3時50分 5時36分 2時48分 6時 7分 6時38分

    ④男女別一人当たり年間評価額の属性別比較
    1996年の男女別一人当たり年間無償労働評価額(OC法)を配偶者の有無別・就業の有無別にみてみると、女性・有配偶・無業(いわゆる専業主婦)の無償労働評価額が最も高く平均303万9千円、最高額は30~34歳代の410万4千円であった。
    一方、女性・有配偶・有業の評価額も平均199万3千円に達しており、男性・有配偶・有業の平均36万6千円の5倍以上と、働く既婚女性は無償労働の負担も大きいことがわかる。
    参考までに、働く既婚女性の年間総労働評価額という意味で、前記の額に女性の平均市場賃金を加えてみると、464万9千円になる。
    なお、本推計に使用したOC法では、男女の賃金格差を反映して、男性の評価額が高めに、女性の評価額が低めに見積られることに留意する必要がある。

    表7 無償労働の一人当たり年間評価額の属性別比較(1996年OC法)(単位:万円)
      平均 15-19歳 20-24歳 25-29歳 30-34歳 35-39歳
    女性 有配偶 有業 199.3 54.8 132.9 183.3 244.8 243.2
    無業 303.9 212.6 283.7 355.2 410.4 409.6
    無配偶 76.5 18.5 35.8 54.7 86.1 107.2
    男性 有配偶 有業 36.6 14.4 30.5 33.3 41.4 45.3
    無業 68.4 0.0 86.2 29.6 69.9 96.9
    無配偶 23.9 9.2 14.5 17.3 23.9 28.8
      40-44歳 45-49歳 50-54歳 55-59歳 60-64歳 65-69歳
    女性 有配偶 有業 226.9 206.7 186.4 170.3 152.3 151.7
    無業 369.8 331.0 316.6 280.1 244.7 232.0
    無配偶 125.6 130.1 135.3 138.1 148.4 152.3
    男性 有配偶 有業 40.9 34.6 35.7 33.6 30.7 31.4
    無業 85.0 69.4 68.3 100.4 86.1 72.0
    無配偶 37.2 50.1 66.0 77.7 89.3 77.7
  4. 介護・看護と育児の無償労働評価額
    わが国は今後、本格的な少子・高齢化社会を迎えると言われており、今後一層重要な社会的課題になると予想される介護・看護や育児は、無償労働によって支えられるところが大きい。
    そこで、介護・看護と育児について、さらに細かく無償労働の貨幣評価を試みた。なおここでは、推計の便宜上、家事については対応する専門職種の平均賃金を使って貨幣評価額を推計する、いわゆる簡易RC-S法を用いた。
    ①有介護者の介護・看護の評価額
    ふだん家族を介護・看護をしているか否かで有介護者・無介護者に区分し、性別・年代別に、介護・看護の評価額をみてみる。
    有介護者の無償労働評価額全体に対して介護・看護が占める割合は、男性平均36%、女性平均21.5%と相当高く、さらに、無償労働評価額全体も無介護者より有介護者の方がかなり大きくなっている。
    男女別では、やはり女性の方が介護・看護の評価額が大きいものの、家事における男女差よりもその差は小さい。
    年代別にみると、女性は30歳代から介護・看護の評価額が大きくなっているが、男性は60歳代で急激に評価額が大きくなっている。

    表8 介護・看護の性別・年代別一人当たり年間無償労働評価額と一日当たり労働時間(1996年、簡易RC-S法)

    ②夫婦世帯の育児の評価額
    夫婦と子供だけ(夫婦の両親とは別居)の世帯について、共働きか夫のみ有業かに区分し、夫婦の育児の評価額をみてみる。
    共働き世帯と夫のみ有業世帯の無償労働評価額を比較すると、共働き世帯の無償労働評価額は夫のみ有業世帯の約60%であり、中でも育児の評価額は約22%と特に比率が下がっている。
    共働き世帯では、育児を中心に無償労働サービスの外部化(保育所を利用する等)が進んでいると考えられるが、最も育児に手間がかかる乳幼児期には妻が離職し、共働き世帯ではなくなっている場合があることも影響している可能性がある。
    なお表9では、参考として世帯別の夫婦の有償・無償の労働時間を掲げた。
    表9 育児の世帯属性別一人当たり年間無償労働評価額と一日当たり労働時間
    (1996年、簡易RC-S法)             (単位:万円、時:分)
      育児 家事 無償労働 有償労働 労働時間計
    共働き 2.3
    (0:03)
    4.4
    (0:07)
    18.7
    (0:24)

    (7:26)

    (7:50)
    14.8
    (0:19)
    134.7
    (3:35)
    184.9
    (4:37)

    (4:30)

    (9:07)
    合計 17.1
    (0:22)
    139.1
    (3:42)
    203.6
    (5:01)

    (11:56)

    (16:57)
    夫のみ有業 6.2
    (0:08)
    3.1
    (0:05)
    23.6
    (0:30)

    (7:12)

    (7:42)
    70.0
    (1:30)
    189.2
    (5:02)
    312.9
    (7:37)

    (0:03)

    (7:40)
    合計 76.2
    (1:38)
    192.4
    (5:07)
    336.5
    (8:07)

    (7:15)

    (15:22)
  5. 無償労働と産業活動等のサービス生産比較
    家計において無償労働が生産するサービスの額と産業活動等が家計に提供するサービスの額の比較を試みる。
    ここでは、無償労働の貨幣評価額はサービス産業等の産出額を構成する賃金・俸給に相当する(注)とみなして、無償労働と同種のサービスを生産する産業等の「産出額/賃金・俸給比」を用い、無償労働評価額をサービス産出額に換算している。なおこの場合、無償労働と産業活動等の生産性の格差は無視した。
    本推計によると、「炊事」は「外食産業」の6.2倍、「洗濯」は「洗濯業」の30倍、「介護・看護と育児」は「非営利団体」の6.3倍のサービスを家計に提供していることとなり、無償労働の経済的価値の大きさ、日常生活における役割の大きさがわかる。
    (注)サービス産業の産出額
    =中間消費+賃金・俸給+社会保障等の雇主負担+固定資本減耗+純間接税+営業余剰
    表10 無償労働が生産したサービスの評価額と産業活動等との比較(1996年RC-S法)
    ①「炊事」と「外食産業」              (単位:10億円)
      炊事 外食産業 炊事/外食産業
    無償労働評価額 26,634
    サービス産出額 96,764 15,237 6.2倍
    (注1)外食産業とは、一般飲食店、喫茶店及び遊興飲食店である。
    (注2)炊事のサービス産出額
    =無償労働評価額× 3.558(外食産業産出額/同賃金・俸給)
    基礎データは、平成2年産業連関表による。
    (注3)外食産業のサービス産出額は、外食産業の産出額のうちの家計による最終消費額である。
    ②「洗濯」と「洗濯業」       (単位:10億円)
      洗濯 洗濯業 洗濯/洗濯業
    無償労働評価額 12,065
    サービス産出額 34,458 1,143 30倍
    (注1)洗濯のサービス産出額
    =無償労働評価額× 2.856(洗濯業産出額/同賃金・俸給)
    基礎データは、平成2年産業連関表による。
    (注2)洗濯業のサービス産出額は、洗濯業の産出額のうちの家計による最終消費額である。
    ③「育児と介護・看護」と「保育・老人福祉団体等」
    (単位:10億円)
      育児と介護・看護 保育・
    老人福祉団体等
    育児等/
    福祉団体等
    無償労働評価額 11,776
    サービス産出額 19,925 3,185 6.3倍
    (注1)保育・老人福祉団体等とは、「平成8年度民間非営利団体実態調査」(経済企画庁)における児童福祉事業、老人福祉事業、精神薄弱・身体障害者福祉事業、更生保護事業及びその他の社会保険・社会福祉である。
    (注2)育児と介護・看護のサービス産出額
    =無償労働評価額× 1.692(保育・老人福祉団体等産出額/同賃金・俸給)
    基礎データは、平成8年度民間非営利団体実態調査による。
  6. 無償労働の地域ブロック別比較
    無償労働の一人当たり年間評価額を地域ブロック別に算出し(OC法を用い、時間データ、賃金データとも都道府県別のものを使用)、当該地域ブロック毎の一人当たり雇用者所得と比較してみた。
    近畿ブロックの年間評価額が最も高く、対雇用者所得比率も最も高い。これは、当該地域の無償労働時間が長く、賃金水準も高いためと考えられる。
    一方、無償労働時間の最も短い北海道・東北ブロックは、年間評価額が最も低く、対雇用者所得比率も最も低いが、有償労働時間は、東海・北陸ブロックとともに最も長い。
    表11 無償労働の一人当たり年間評価額の地域ブロック別比較と雇用者所得(1996年OC法)
    (単位:千円、%)
      無償労働の
    年間評価額
    雇用者所得
    (1995年度)
    対雇用者
    所得比率
    (参考)労働時間
    (一日当たり)
    無償労働 有償労働
    北海道・東北 881 4,344 20.3 2時 6分 4時24分
    関東・甲信 1,261 5,661 22.3 2時13分 4時13分
    東海・北陸 1,050 4,730 22.2 2時13分 4時24分
    近畿 1,273 5,436 23.4 2時23分 4時 1分
    中国 1,030 4,805 21.4 2時16分 4時14分
    四国 951 4,640 20.5 2時12分 4時11分
    九州・沖縄 952 4,455 21.4 2時12分 4時 8分
    全国 1,094 5,089 21.5 2時13分 4時10分
    (注)「雇用者所得」は、「賃金・俸給」、「社会保障雇主負担」及び「その他の雇主負担」からなり、1996年の数値がないため、1995年度の数値(「平成7年度県民経済計算」(経済企画庁))を使用。
    地域ブロック別の労働時間は、都道府県別一日一人当たり時間の単純平均を使用。
    (ブロック区分)
    北海道・東北 (北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、新潟)
    関東・甲信 (茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、長野)
    東海・北陸 (静岡、富山、石川、岐阜、愛知、三重、福井)
    近畿 (滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
    中国 (鳥取、島根、岡山、広島、山口)
    四国 (徳島、香川、愛媛、高知)
    九州・沖縄 (福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)
  7. イギリスの無償労働評価額との比較
    イギリスの国立統計局は、"A HOUSEHOLD SATELLITE ACCOUNT FOR THE UK"(L. Murgatroyd and H. Neuburger, Office for National Statistics Economic Trends No.527 October 1997)において、1995年のイギリスの無償労働の総評価額(対象人口16歳以上)を公表している。
    イギリスの無償労働の貨幣評価の方法は次のとおりであり、日本の方法と全く異なっている。
    ①生活時間調査結果から、無償労働と有償労働の時間比率を算出する。
    無償労働時間(326分)÷有償労働時間(168分)=1.94
    ②SNA概念の「賃金・俸給」等、すなわち有償労働に対する総支払額に、この時間比率を乗じて、無償労働評価額を算出する。
    例えば、"Unpaid work valued as paid based on Wages and salaries"=6460億ポンド(対GDP(要素費用表示)比106%)は、賃金・俸給の3330億ポンドに1.94を乗じて算出される。
    なお、"Valued as paid by gender"や"Valued at pay rate for industry work"など、日本のOC法やRC-S法に似ていると考えられる評価方法は、男女別の時間比を使用した上で、男女賃金比や産業別賃金比によるウエイト付けをして評価額を算出するもの、とのことである。
    さらに、イギリスが設定した無償労働の範囲は、日本の無償労働の範囲より相当幅広くなっており、これも単純な比較ができない(参考表)。
    したがって、日本の無償労働の範囲をできるだけイギリスに合わせた上で、イギリスと同様の貨幣評価方法を採ると、次のような結果となる。
    無償労働時間295分÷有償労働時間250分=1.18
    1996年の賃金・俸給は239兆3778億円
    したがって、1996年の日本の無償労働評価額は282兆4658億円 対GDP(要素費用表示)比 62%
    1995年のイギリスの無償労働評価額(6460億ポンド;1ポンド200円で換算)129兆2000億円 対GDP(要素費用表示)比106%
    このように対GDP比に大きな差が生じているのは、イギリスの無償労働の範囲が依然として日本より広い上に、日本の有償労働時間がイギリスより長いため、無償労働と有償労働の時間比がイギリスと日本で大幅に違うことが主たる理由であり、加えて、推計の基礎となった賃金・俸給の対GDP比がイギリスは 55%、日本は52%であることも若干影響している。

    (参考)イギリスの生活時間調査と日本の比較

5.留意事項

本推計の取扱に当たっての留意事項を列挙する。

  1. 非経済的価値の位置づけ
    無償労働は、無償の献身的行為であるという意味で行為者や受益者にとって特別の価値を有し、あるいは特別の効果を持つことが往々にしてある。例えば、育児は、親の子に対する愛情表現の一形態であり、かつ親子の情愛を形成する効果を持っているであろう。このような意味で、無償労働は、ある種のサービスの提供という経済的価値以外の非経済的価値をも有する場合があると考えられる。
    本推計は、このような非経済的価値まで計測しようとするものではない。機会費用法による貨幣評価額は、それだけの価値のある時間を無償労働に費やす判断をしたという意味で行為者の主観的な価値評価を含んだ推計とも言えるが、受益者の無償労働に対する敬意や感謝、さらには家事労働が家族の情愛を形成する効果などについて評価し、推計しているものではない。
  2. 無償労働の範囲の問題
    無償労働の範囲は、基本的に第三者基準によって判断しているが、もう少し広い範囲を無償労働とする考え方もある。
    例えば、「学業」や「学習・研究」は、自分の将来の稼得能力を向上させるという意味で労働的要素があるため、無償労働に含めるべきという考え方がある。
    また、無償労働のための「移動」は、付随行動として無償労働に含める諸外国の推計例があるが、本推計では、通勤・通学以外の「移動」が何のために行われているか把握できていないという利用統計上の問題もあり、「移動」全体を無償労働の範囲から除外した。
  3. 生活時間調査データの限界
    本推計は、総務庁が5年に1度行っている「社会生活基本調査」のうちの国民の生活時間の配分に関する調査結果を基礎データとしている。この調査は、無償労働の把握を目的として行われる調査ではないため、無償労働の貨幣評価を行うに当たっては、前述の「移動」の問題に加え、次のような限界がある。
    一つには、理論的には無償労働に含まれる行動であるが、社会生活基本調査の行動分類に入っていないため、独立した項目として貨幣評価できないものがある。具体的には、諸外国では住宅のメンテナンスや園芸を無償労働として推計対象にしているが、社会生活基本調査では「家事」又は「趣味・娯楽」の時間の中に含まれていると考えられ、無償労働の貨幣評価額は、諸外国に比べ過少推計になっている可能性がある。また、本推計では家事の内訳まで推計しているが、社会生活基本調査にはこの内訳がなく、NHKの「国民生活時間調査」を援用して算出しているため、家事の内訳値は必ずしも正確な推計とは言い難いところがある。
    さらに、家事をしながら育児を行うといった「ながら行動」は、無償労働においてよく行われる行動パターンであるため、的確に把握することが望ましく、諸外国でも「ながら行動時間」をダブルカウントして推計している例があるが、社会生活基本調査では主たる行動のみが調査対象となっているため、本推計でも主たる行動のみが推計対象となっている。
  4. 適用賃金の問題
    機会費用法(OC法)は、性別・年代別の平均賃金を使用して貨幣評価を行うため、男女の賃金格差がそのまま無償労働の貨幣評価額に反映されることになる。すなわち、無償労働時間は女性の方が長い場合でも、当てはめる賃金が男性の方が高いため、貨幣評価額では、男女差が小さく見える、場合によっては逆転するといったことが起きる。単に無償労働の男女の負担状況を見るためには、生活時間データそのものを見た方がわかりやすい。
    また、代替費用法スペシャリストアプローチ(RC-S法)において無償労働に対応させるべき専門職種については、人によって見解が異なり、一義的に定めることは困難である。このため本推計では、利用可能な統計の範囲で対応付けを行った。さらに、代替費用法で使用する専門職種又は家事使用人の賃金は、職種別賃金の中で比較的低い額であるため、代替費用法による貨幣評価額は機会費用法によるものに比べて低い額になる傾向がある。
  5. アウトプット評価の問題
    本推計では、時間×賃金で無償労働を貨幣評価しているため、実際に無償労働が生み出したサービスの量や質にかかわらず、労働時間が長く、または適用賃金が高ければ、高い貨幣評価がなされることになる。
    本来、市場経済におけるサービスの価値は、その量と質を踏まえた市場価格で計られるものであり、無償労働の貨幣評価においても、無償労働が生み出したサービス(アウトプット)そのものの価値を評価する方法が模索されている。
    このようなアウトプット評価については、外国の研究レベルで若干の成果がみられるものの、まだ確立した手法がなく、実際の推計に当たっても相当の基礎データを要することから、今後の研究課題となっている。

6.基礎データ

1996年の無償労働の貨幣評価の基礎となった時間データ及び賃金データの概要を掲げる。

  1. 時間データ
    「平成8年社会生活基本調査」(総務庁)の生活時間調査結果を基礎とし、家事時間の内訳は「国民生活時間調査1990」(NHK)の家事内訳時間比率(注)をもとに家事時間を按分して作成した。
    なお、同時に二つ以上の行動をした場合は、主な行動の時間として記録される。
    (注)家事内訳時間比率は、1995年のNHKの同調査(アフターコード方式)のデータを使って調整し、1996年の家事内訳時間比率を推計している。

    表 15歳以上一日一人当たり生活時間

  2. 賃金データ
    ①OC法
    「平成8年賃金構造基本統計調査」の企業規模計・産業計・性別・年代別の所定内給与額を所定内実労働時間数で除して算出した、性別・年代別の時間当たり賃金を基礎データとした。
    なお、同様の方法で全労働者平均時給を算出すると1,749円、男性平均は1,976円、女性平均は1,255円となる。
    (単位;円)
    年齢 男性 女性
    15-19 957 894
    20-24 1,174 1,083
    25-29 1,464 1,270
    30-34 1,784 1,376
    35-39 2,057 1,418
    40-44 2,272 1,369
    45-49 2,450 1,342
    50-54 2,543 1,327
    55-59 2,311 1,253
    60-64 1,742 1,167
    65- 1,568 1,169
    ②RC-S法
    「平成8年賃金構造基本統計調査」の企業規模計・職種別の所定内給与額を所定内実労働時間数で除して算出した職種別の時間当たり賃金を基礎データとした。
    なお、簡易RC-S法では、家事(炊事、掃除、洗濯、縫物・編物、家庭雑事)に対して、これらに対応する専門職種の平均賃金(1,030円)を当てはめ、それ以外の行動にはRC-S法と同じ賃金を当てはめている。
    (単位;円)
    行動種類 炊事 掃除 洗濯 縫物・編物 家庭雑事
    専門職種 調理士見習 ビル清掃員 洗濯工 ミシン縫製工 用務員
    賃金 1,004 913 1,075 807 1,350
    行動種類 介護・看護 育児 買物 社会的活動
    専門職種 看護補助者 保母・保父 用務員 サービス業加重平均
    賃金 1,056 1,278 1,350 1,626
    ③RC-G法
    「平成8年度一般在宅等勤務者の賃金実態調査」の地域別の家事援助サービスの賃金から全国平均賃金(880円)を算出して、基礎データとした。
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