平成8年度調査:企業行動に関するアンケート調査(平成9年(1997年)4月28日公表)                         「構造改革下にある企業行動」 Annual Survey of Corporate Behaviors

調査の背景

最近の日本経済の動向をみると、設備投資が堅調であることに加え、個人消費も緩やかな回復傾向にあること等から、景気は民間需要を中心に緩やかな回復の動きを続けている。

しかし、日本企業の経営状況に目を向けると、企業は、バブル崩壊、それに続く不況をリストラ等の企業努力により脱却しつつあるものの、緩やかな景気回復の中で依然として将来がみえない不透明感にとらわれており、高度経済成長を牽引した日本の産業構造や「日本型経営システム」も、そのあり方が問われている。このような状況の下で現状のままの企業行動や経済システムに固執していては、日本経済の前途はないということが、官民共通の認識となっており、民間企業、政府はともに、不透明感を払拭し、経済の活力を復活させるような大胆な構造改革を求められている。

こうしたことから、今回の「企業行動アンケート調査」では、構造改革下にある企業の動向を把握するため、政府において取り組まれている「規制緩和」と企業行動との関係及び企業内部の主体的な構造改革に焦点を当てることとした。

具体的には、従来の調査を継承して、企業を取り巻く経済環境、採算円レート等について我が国企業の経営基本方針を調査するとともに、「規制緩和」「企業内スクラップアンドビルド」「グローバル化の評価」の3点について調査することとした。

調査結果の概要

  1. 企業を取り巻く経営環境

    我が国の企業は、平成9年度の実質経済成長率について、全産業平均で1.5%を見込んでいる。中期的な見通しについては、今後3年間(平成9年~11年度)では1.8%(年平均)、今後5年間(平成9年~13年度)では1.9%(年平均)を見込んでいる(図1)。前回調査では、平成8年度は1.7%、平成8~10年度は2.0%(年平均)、平成8~12年度は2.2%を見込んでおり、短期、中期見通しともに僅かながら低下している。
    なお、業界需要の実質成長率見通しについては、全産業平均で平成9年度は1.4%、今後3年間は1.8%、今後5年間は2.0%となっており、実質経済成長率同様前回調査に比べ、短期、中期見通しとも僅かながら低下している。
    また、輸出企業の平成9年1月時点での採算円レートについては106.2円と、平成2年以来、7年振りにわずかながら下落している(前回調査時は104.0円)(図2)。採算円レートを調査直前の円レートと比較すると、平成5年に同水準であった後、平成6年から8年までは調査直前の円レートを下回っていたが、今回調査では5年振りに上回っている。

  2. 企業内スクラップアンドビルド及びグローバル化の評価

    企業内部の構造改革として対内面では、新規事業進出、対外面ではグローバル化が広範に進められてきているが、今回の調査結果によれば、その過程で既存事業、海外進出からの撤退・縮小も同時に進められており、企業全体としての効率性追求や経営基盤強化が図られていることがわかる。

    (1)企業内スクラップアンドビルド

    新規事業への進出については、過去5年に実施した企業が51.5%、今後5年に進出予定があるとした企業は56.4%とともに全体の過半を占めている。過去5年の進出分野としては、「情報・通信関連」、「環境関連」などを挙げる企業が多く、今後5年については、これらの分野のほか「シルバービジネス関連」が多くなっている。

    新規事業の成果については、ほぼ目標程度となっているとする企業が売上高で50.3%、収益で47.1%と約半数を占めるが、目標を下回っているとする企業は売上高で38.1%、収益で43.0%となっており、目標を上回っているとする企業が売上高で11.6%、収益で9.9%となっているのに比べ、大幅に高くなっている(図3)

    また、新規事業展開を図るに際して、

    • 35.2%の企業が、事業分野の一層の選別等のために、自社の既存事業から撤退又は縮小を実施していること(図4)
    • 化学、非鉄金属、鉄鋼等の業種から「素材関連」への進出、精密機器、電気機器、一般機械等の業種から「機械工業関連」への進出等、それぞれ自社の事業分野と関連する事業への進出が目立つこと、
    • 外部からの資源導入(新規設備投資、中途採用等)よりも、既存資源(既存事業に関連する技術、余剰労働力等)を有効活用していること(図5)

    などから、新規事業への進出に際して企業全体としての効率性を追求している姿がうかがえる。

    ただし、今後は、新規事業展開に際して活用する資源として、業務提携、新規研究開発投資、情報化投資など外部からの資源導入への依存が若干高まっていくものとみられる(前出図5)

    (2)グローバル化の評価

    グローバル化の実施状況をみると、製造部門については58.9%、営業部門については61.7%、研究開発部門については24.3%の企業がこれまでにグローバル化を実施している。グローバル化の経営基盤への影響については、経営基盤強化の要因となっていると回答した企業(「経営基盤強化の要因になっている」、「どちらかといえば経営基盤強化の要因になっている」の合計)が、各部門とも、7割程度に達している(図6)

    一方、こうしたなかで、必ずしも順調にいかないケースも増えてきており、製造部門の25.0%、営業部門の27.9%、研究開発部門の9.1%で撤退又は縮小を経験している(図7)。撤退、縮小の要因をみると、製造部門及び営業部門では「現地市場の需要不足」(製造部門39.9%、営業部門63.9%)、「現地市場の競争激化」(製造部門28.7%、営業部門41.8%)といった現地市場の要因を挙げる企業が多く、研究開発部門では「現地パートナーとの協調の困難性」(40.0%)を挙げる企業が多くなっている(図8)

    今後のグローバル化の方針については、円安傾向であっても進展・継続していくとする企業が多くなっている(図9)。円安傾向でもグローバル化を進展・継続する理由として、製造部門では割安な労働力・原材料の調達などコスト面の要因を挙げる企業が依然最も多いものの、営業、研究開発部門も含め全般的にみると、海外市場の将来性、海外情報の収集の容易性を挙げる企業が多い(図10)。また、先にみたように、撤退・縮小の要因として現地市場の需要不足や競争激化が多く挙げられており、市場面の要因がグローバル化の成否に大きな影響を与えていることがわかる。

    以上の結果から、今後についても、撤退・縮小のリスクはあるものの、海外市場の将来性の高さからグローバル化を進展・継続しようとする企業行動がみてとれる。

  3. 規制緩和

    政府における構造改革として「規制緩和」が進められているが、日本経済全体における規制緩和の必要性については、98%の企業が必要(「是非必要」と「どちらかといえば必要」の合計)と考えている。但し、各社の事業分野については、必要と考える企業は76.3%と日本経済全体の場合をかなり下回っている(図11)

    特に、規制緩和が「是非必要」と考える企業の割合を日本経済全体と各社の事業分野について比較すると、各社の事業分野の方が半分以下となっている。これを業種別にみると、製造業では「事業活動に規制は関係ない」とする企業の多い業種で差が大きくなっている一方、非製造業では規制との関わりが大きい業種で差が大きくなっている。このことから、企業は自社との関わりでは非製造業を中心に若干慎重な姿勢を示しつつも、規制緩和の必要性を全面的に支持していることが分かる。

    また、規制緩和の進捗状況については、十分ではないと考える企業(「進んでいない」と「ある程度推進されているがまだ不十分な分野もある」)が93.5%と大多数を占めており、今後、特に運輸・物流(40.2%)、金融・保険(38.5%)、情報・通信(37.3%)といった分野での規制緩和を期待している(図12)

    今回の調査結果から企業は、規制緩和による競争の促進がもたらすメリット(「許認可の簡素化、迅速化」「新たなビジネスチャンスが生まれる」)、デメリット(「サービス・販売価格の低下」「企業間格差の拡大」)を勘案しつつ、「新製品・サービスの開発」「営業力の強化」「新規顧客・販路の開拓」等により規制緩和を新たなビジネスチャンスとして活用しようとしている姿がうかがえる(図13)(図14)

    政府においては、「規制緩和推進計画」(平成7年3月閣議決定、平成8年及び9年3月改定)や経済審議会の建議(平成8年12月)を受けて規制緩和に取り組んでいるところであるが、こうした規制緩和を望む民間企業の声を受けて、今後とも着実にこれを推進していくことが重要である。

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