平成14年度調査:企業行動に関するアンケート調査(平成15年(2003年)4月28日公表)                         「デフレ下の日本企業」 Annual Survey of Corporate Behaviors

調査の背景

デフレの悪化、長期化に伴い、企業の経営環境は厳しさを増している。デフレに対する企業の対応は、リストラを含む抜本的なものにも及んでいるが、このことが短期的にはさらなるデフレ圧力となり、景気を下押ししている。特に深刻なのが、資産価格の下落であり、企業の会計上の利益を削ぎ、最終的には設備投資意欲を減退させている。

今回の「企業行動に関するアンケート調査」では、従来からの調査を継承して、わが国企業の経営環境と経営基本方針を調査(第1章)するとともに、「物価の下落と日本企業」(第2章)、「資産価格下落の影響」(第3章)において物価と資産価格の二つのデフレが企業にもたらす影響と企業の対応策を明らかにし、「経済政策に対する期待・希望」(第4章)において調査対象企業がどのような経済政策を期待・希望しているのかを調査することを狙いとした。

まず、「経営環境と経営基本方針」においては、継続調査を実施することにより、企業行動が時系列でどのように変化してきているかを調査した。「物価の下落と日本企業」では、販売価格の下落状況、その要因と対策を、「資産価格下落の影響」においては、株価や地価の下落が経営にもたらす影響を調査した。「経済政策に対する期待・希望」においては、望ましいデフレ対策として、どのようなものが企業の念頭にあるのかを調査した。

調査要領

調査時期
平成15年1月
調査事項
1.経営環境と経営基本方針、2.物価の下落と日本企業、3.資産価格下落の影響、4.経済政策に対する期待・希望
調査対象
東京、大阪、名古屋の証券取引所第1部及び第2部上場企業のうち、金融・保険業を除く企業(2,331社)
調査方法
所定の調査票による郵送・自計申告方式
回答企業数
1,270社(製造業755社、非製造業515社)
回答率
54.5%

調査結果のポイント

  1. 企業が予想する実質経済成長率は、単年度の見通しで0.3%、今後3年間(平成15-17年度)では0.7%(年度平均)、今後5年間(平成15-19年度)では1.0%(年度平均)となった。単年度、今後3年間の予想成長率は昨年度調査の水準を上回ったものの、今後5年間の予想成長率は昨年度の水準をさらに下回り、過去最低を更新した。

    設備投資は今後3年間の年度平均伸び率は全産業平均で2.4%と前回調査の1.2%から伸び率が増加した。IT投資の年度平均伸び率は、過去3年間は7.7%であったのに対し、今後3年間は6.6%と前回調査からさらに伸び率が鈍化する見通しになっている。

    海外現地生産比率は、製造業全体でみると平成12年度実績11.1%から、13年度実績13.8%、14年度実績見込み14.6%、19年度見通しは17.9%と引き続き上昇傾向にある。

    輸出企業の採算円レートは、114.9円/ドルと若干上昇したものの、調査直前の円レート(14年12月の円レート122.3円/ドル)との乖離幅は昨年度調査より縮小した。

    従業員数は今後3年間では年度平均1.1%減(製造業1.7%減、非製造業0.1%減)とマイナス幅は縮小する見通しとなっている。

  2. 物価の下落が企業収益に与える影響について、まず、販売価格とコストの関係から質問したところ、75.5%の企業が「販売価格の下落がコストの引き下げ以上に進んでおり、収益を圧迫している」と回答した。このような販売価格の低下要因としては、「同業他社もしくは輸入品の販売価格の引き下げ」が67.0%と最も多かった。販売価格の設定方法としては「調達コストの低下(上昇)のトレンド」とする企業が最も多い。販売価格低下への対策としては、企業はとりうる手段はすべて尽くそうとしており、中でも「人件費の抑制」を最も多くの企業が選択した。

  3. 地価の下落は企業経営に対し、「特段影響はない」と60.0%が回答した。「特別損失の発生を通じ、会計上の収益を圧迫している」と回答した企業は22.1%に止まり、比較的に緩やかな影響しか与えていないことが分かった。一方、株価の下落は、72.2%が、「特別損失の発生を通じ、会計上の収益を圧迫している」と回答しており、深刻な影響を与えている。さらに資産価格下落による特別損失と設備投資の関係について質問したところ、「特別損失が発生した結果、内部留保が積み上がらないため、設備投資を手控えている」とした企業も16.8%に及んだが、それ以上に、「設備投資より、債務の圧縮を優先している」(27.9%)、「資産価格にかかわらず、そもそも十分な収益を期待できる投資案件が見当たらない」(16.2%)といった設備投資意欲の冷え込みが目立つ結果となった。

    金融機関の貸出態度については、多くが「特に変化はない」(62.5%)と回答したものの、厳しくなってきている(15.9%)と回答した企業だけでなく、取引先経由で間接的に影響を受けている(18.0%)企業をあわせると約34%が影響を受けているとの結果となった。資本市場からの調達も、あわせると約30%の企業が以前と比べて難しくなっていると回答している。

  4. 望ましい物価上昇率は、1%以上2%未満と回答する企業が最も多く、その理由は、保有する債権(資産)の価格が上昇するというものであった。デフレと不良債権は75.9%が「悪循環に陥っている」と考え、マクロの対策としては財政・金融の「両方」が用いられることを望んでいる。規制緩和政策についても、デフレ問題とは別であると考え、積極的に継続することを望んでいる。

結果の概要

  1. 経営環境と経営基本方針

    (1)実質経済成長率の見通し

    我が国企業は、平成15年度の実質経済成長率について、全産業平均で0.3%を見込んでいる。中期的な見通しについては、今後3年間(平成15-17年度)では0.7%(年度平均)、今後5年間(平成15-19年度)では1.0%(年度平均)を見込んでいる。単年度、今後3年間の予想成長率は昨年度調査の水準を上回ったものの、今後5年間の予想成長率は昨年度の水準をさらに下回り、過去最低を更新した(第1-1-1図)

    (2)輸出企業の採算円レート

    輸出企業の採算円レートは114.9円/ドルと若干上昇したものの、調査直前の円レート(14年12月の円レート122.3円/ドル)と比べ約7円の円高方向への乖離となり、昨年度調査よりその乖離幅は縮小した。業種別にみると、全ての業種で採算円レートを調査直前の円レートより円高に設定している。しかし、鉄鋼業の採算円レート122.1円/ドルをはじめとして調査直前の為替レートと比較し余裕のない業種も多く、資本金別では、資本金10億円未満の企業の採算円レートが123.6円/ドルと採算割れになっている(第1-2-2図)

    (3)設備投資の見通し

    今後3年間の設備投資の年度平均伸び率は全産業平均で2.4%(製造業2.1%、非製造業2.8%)と前回調査の1.2%(製造業0.8%、非製造業1.9%)から伸び率が増加した。2年連続で製造業が非製造業の伸び率を下回る見通しとなっている(第1-3-1図)

    業種別にみると、回答企業が5社以上であった27業種中、21業種がプラス、6業種がマイナスとなり、「倉庫・運輸」、「小売業」、「精密機器」が6%以上の高い伸びを見通している一方で、「電気・ガス」は4%以上のマイナスを見通している。また、資本金規模別にみると、資本金100億円以上の企業が最も低い伸びとなっている(第1-3-2図)

    (4)IT投資の見通し

    設備投資額の総額に占めるIT投資の割合は、全産業平均で過去3年間は16.3%、今後3年間は18.2%となっている。業種別にみると、過去3年間では、製造業が12.5%であるのに対し、非製造業は22.1%と約2倍となっている。今後3年間でも、製造業は14.1%、非製造業は24.6%と、前回調査に引き続き非製造業でIT投資比率が高い。非製造業のうち特に卸売業、サービス業でIT投資比率が高く、過去3年間ではそれぞれ33.4%、32.2%、今後3年間ではそれぞれ36.7%、33.5%となっている(第1-4-1図)

    (5)海外現地生産

    全企業ベース(注)の海外現地生産比率(生産高)は、製造業全体でみると平成12年度実績11.1%から、13年度実績13.7%、14年度実績見込み14.6%、19年度見通しは17.9%と引き続き上昇傾向にある。業種別では、加工型業種の伸びの方が大きくなっている(第1-5-2図)

    (注)「全企業ベース」とは、海外現地生産比率を0%と記入した、つまり海外現地生産を行っていない企業を含んだ数値

    (6)雇用者数の現状と見通し

    従業員数の変化は、過去3年間では年度平均3.0%減(製造業4.1%減、非製造業1.4%減)で、マイナス幅が前回調査から再び拡大した。一方で、今後3年間では同1.1%減(製造業1.7%減、非製造業0.1%減)とマイナス幅は縮小する見通しとなっている(第1-6-1図)

  2. 物価の下落と日本企業

    (1)販売価格の低下

    デフレが企業収益にどのような影響をもたらすか、まず販売価格とコストの関係に注目して質問したところ、「販売価格の下落が、コストの引き下げ以上に進んでおり、収益を圧迫している」との回答が全体の4分の3(75.5%)を超えた(第2-1-1図)。このような販売価格の低下要因としては、「同業他社もしくは輸入品の販売価格の引き下げ」と回答する企業の割合が67.0%に及んだ。次いで割合が高かったのは「消費者が価格に対して敏感になったこと」(12.3%)であった(第2-2-1図)

    (2)販売価格の設定方法

    販売価格の設定方法については「調達コストの低下(上昇)のトレンド」とする企業の割合が最も高かった(31.1%)。「販売価格は市場で決まっており、価格設定を行う余地がない」とする回答も多く(25.2%)、物価水準のトレンドを参考にする企業の割合も19.1%に及んだ。一方、平均給与水準の動向をあげるところはほとんど存在しなかった。また「専門家もしくは、専門機関による物価水準の見通し」及び「専門家もしくは、専門機関による給与水準の見通し」は、ほとんど参考にされておらず、企業が販売価格を引き上げる際には、よほど明白な物価上昇要因や、実際にコストの上昇や市況の回復が実現されることが必要となっている(第2-3-1図)

    (3)販売価格低下への対策

    販売価格低下への対策については、設問の選択肢のすべてにおいて回答する企業の割合が高く、企業があらゆる手段を尽くそうとしている姿が見て取れる。その中でも回答した企業の割合が高いのが、「人件費の圧縮」(75.7%)と「調達先の見直し」(71.4%)であり、7割以上の企業が選択している(第2-4-1図)

    人件費の圧縮方法としては、「新規採用の縮減・凍結」が最も高く(62.8%)、つぎに「給与体系の見直し」(58.5%)、「残業の削減」(57.6%)という順番であったた(第2-4-3図)。中高年の失業率に影響の大きい「早期退職の勧奨」は、電気機器(50.0%)、非鉄金属(50.0%)、医薬品(50.0%)、建設(49.4%)などで割合が高い。

  3. 資産価格下落の影響

    (1)地価・株価の下落の影響

    地価の下落については60.0%の企業は「特段影響はない」と回答した(第3-1-1図)。一方、時価会計が義務づけられていない土地資産と異なり、株価の下落は、厳しく経営に影響を与えている。72.2%の企業が「特別損失の発生を通じ、会計上の収益を圧迫している」と回答した(第3-2-1図)

    (2)資産価格下落による特損と設備投資の関係

    資産価格下落が設備投資に与える影響としては、「設備投資より、債務の圧縮を優先している」と回答する企業が27.9%に及んだ。相対的な借入金利負担の高まりという形で、設備投資に影響が出ていると考えられる。「特別損失が発生した結果、内部留保が積み上がらないため、設備投資を手控えている」と回答した企業の割合は16.8%、「借入が困難となっており、設備投資を手控えざるを得ない」という割合は6.1%となっており、資産価格の下落により、約半分の企業が設備投資への悪影響を訴えている。一方、「設備投資のための資金調達に困難を感じていない」と回答する企業の割合も32.9%に及んでいる。「資産価格にかかわらず、そもそも十分な収益を期待できる投資案件が見当たらない」も16.2%に達している(第3-3-1図)

  4. 経済政策に対する期待・希望

    (1)望ましい物価上昇率

    望ましい物価上昇率としては1%以上2%未満と回答する企業の割合が最も高かった。次に0%前後、そして、0%以上1%未満という回答が高く、0%から2%の間に、ほとんどの回答(86.4%)が集まった(第4-1-1図)。企業が物価上昇を選好する理由として、最も回答した企業の割合が高かったのが保有する債権(資産)の価格が上昇するから(62.0%)であった(第4-1-2図)

    (2)デフレと不良債権問題・規制緩和との関係

    デフレと不良債権問題の間の因果関係について、企業の多くは、両者は「悪循環にある」と考えており(75.9%)、どちらかが原因とする回答は少なかった(第4-2-1図)。規制緩和は個別価格の下落をもたらすものの、規制緩和による価格の下落はデフレとは別であるとする意見や、規制緩和に好意的な回答が多かった(第4-3-1図)

    (3)デフレとマクロ経済政策の関係

    デフレ対策として有効と考えるのは財政政策か金融政策かという問に対し、企業の51.1%が「両方」と回答した(第4-4-1図)。金融政策が有効であると答えた企業が、デフレ対策として効果のある金融政策として最も多く取り上げたのは「インフレターゲティングの導入」であった(33.0%、第4-4-3図)。財政政策が有効であると答えた企業が、デフレ対策として効果のある財政政策として最も多く取り上げたのは「法人税の恒久減税」であった(44.4%、第4-4-5図)

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