平成15年度調査:企業行動に関するアンケート調査(平成16年(2004年)4月28日公表)                         「構造改革下における日本企業のダイナミズム」 Annual Survey of Corporate Behaviors

調査の背景

日本企業は、長引くデフレと経済の低迷の下で収益力や国際競争力が低下したと言われている。これに対し、政府による構造改革の下、企業は収益力・競争力向上のためさまざまな経営改革努力を続け、2002年度決算においては多くの企業が増益に転じることに成功した。

増益に転じた主な要因は、費用の抑制である。早期退職の勧奨や賃金カット、分社化等による人件費の抑制や調達先の見直しなどが実施された。しかしながら、人員削減、賃金カット、取引先の変更等、コストカットにより利益を生み出す経営スタイルには一定の限界があると考えられる。

今回の「企業行動に関するアンケート調査」では、従来からの調査を継承して、わが国企業の経営環境と経営基本方針を調査(第1章)する。そして、「利益回復の構造と課題」(第2章)、「国際競争力の改善に向けた努力」(第3章)において、コストカットにより利益を生み出す経営の進展状況とその効果、今後のさらなるコストカットの余地について調査し、このような経営努力が国際競争力の強化につながっているのかどうかを把握する。

まず、「経営環境と経営基本方針」においては、継続調査を実施することにより、企業行動が時系列でどのように変化してきているかを調査した。「利益回復の構造と課題」では、企業の収益動向や利益を上げるための施策、費用を削減するための施策、今後の経営方針について調査した。「国際競争力の改善に向けた努力」においては、外国製品との競合状況や国際競争力を生じさせる要因、そして今後の展望を調査した。

調査要領

調査時期
平成16年1月
調査事項
1.経営環境と経営基本方針、2.利益回復の構造と課題、3.国際競争力の改善に向けた努力
調査対象
東京、大阪、名古屋の証券取引所第1部及び第2部上場企業(2,473社)
 (注)本年度調査より金融・保険業を新たに調査対象として加えている。
調査方法
所定の調査票による郵送・自計申告方式
回答企業数
1,243社(製造業689社、非製造業554社)
回答率
50.3%

調査結果のポイント

  1. 予想経済成長率、設備投資は改善

    企業が予想する実質経済成長率は、単年度の見通しで1.4%、今後3年間(平成16-18年度)では1.5%(年度平均)、今後5年間(平成16-20年度)では1.6%(年度平均)となった。単年度、今後3年間、今後5年間すべての予想成長率が昨年度調査の水準を上回った。

    設備投資は、今後3年間の年度平均伸び率が全産業平均で3.1%となり、前回調査の2.4%から伸び率が増加した。IT投資の年度平均伸び率は、過去3年間は6.4%であったのに対し、今後3年間は5.9%と前回調査から伸び率が鈍化する見通しとなっている。

    海外現地生産比率は、製造業全体でみると平成13年度実績13.7%から、14年度実績13.2%と若干低下した。ただ、15年度実績見込みは14.1%、20年度見通しは17.8%と先行きの見通しは依然上昇傾向にある。

    輸出企業の採算円レートは、105.9円/ドルとなった。

  2. 増収増益企業が4割。雇用の削減は一段落

    企業の収益状況は、売上高が増加し営業利益が増加した増収増益企業が39.4%、増収減益企業が8.3%、減収増益企業が17.1%、減収減益企業が28.7%となった。営業利益を伸ばすために最も効果があった施策は、企業の43.6%が「固定費用の削減」、24.0%が「売上数量の増加」、20.7%が「変動費用の削減」、5.7%が「売上単価の上昇」と回答し、多くの企業で費用の削減が営業利益の増加に最も貢献したことが分かった。

    費用削減のために採用した施策のうち最も効果があった施策は、「人件費の削減」が47.9%と最も多い。また、過去3年間の正社員数の増減率は3.4%減、パート、派遣社員数の増減率は2.2%増となり、企業は正社員を減らしパート、派遣社員を増やす傾向にあった。今後3年間の見通しは、正社員数が0.8%減、パート、派遣社員数は2.3%増となり、正社員数の減少率は縮小するみこみである。

    企業のリストラの進展状況は、「より一層リストラを行う必要がある」と回答した企業が43.1%、「(リストラできる余地は限られてきており)これ以上のリストラは困難である」が31.4%、「そもそもリストラを行う必要がない」が18.7%となった。

  3. 中国のプレゼンス拡大。国際競争力は3年前より強まった企業が多い

    日本企業の主要製品が外国企業と競合している地域は、「中国(香港除く)」(79.2%)、「NIES」(75.7%)、「北米」(74.4%)、「欧州」(70.7%)の順で高い。平成13年度調査と比較すると、全ての地域で競合割合は高まっているが、アジア地域、特に中国での競合割合が高まっている。日本企業の製品がどの地域の製品と競合しているかについては、「欧州」(68.5%)、「北米」(67.5%)、「中国(香港除く)」(63.7%)、「NIES」(60.7%)の順で高くなっている。平成13年度調査との比較では、全ての地域の製品との競合割合が高まっており、北米製や中国製、NIES製で上昇幅が大きい。

    国際競争力の推移を過去3年間と比較すると、「3年前と比較して競争力は強まった」とする企業は32.0%となり、「3年前と比較して競争力は低下した」(21.1%)を上回った。国際競争力が強まった原因は、「ライバル企業よりも製品開発力が優っていたため」が60.5%と最も多く、反対に国際競争力低下の原因は、「ライバル企業の費用削減努力が優っていたため」が42.6%で最多となった。今後の国際競争力の展望は、「ライバル企業と互角の競争力をもつとの見通しを持っている」とする企業が59.4%となり、大半の企業は今後も外国企業と互角の競争力を持つと考えていることが分かる。一方、26.4%の企業が「ライバルを凌ぐ見通しを持っている」と回答し、「ライバル企業にはまだ及ばない見通しを持っている」と回答した企業(10.3%)を上回った。

結果の概要

  1. 経営環境と経営基本方針

    (1)実質経済成長率の見通し

    我が国企業は、平成16年度の実質経済成長率について、全産業平均で1.4%を見込んでいる。中期的な見通しについては、今後3年間(平成16-18年度)では1.5%(年度平均)、今後5年間(平成16-20年度)では1.6%(年度平均)を見込んでいる。単年度、今後3年間、今後5年間すべての予想成長率が昨年度調査の水準を上回った。(第1-1-1図)

    名目成長率については、平成16年度は0.7%、今後3年間は0.9%、今後5年間は1.2%と予想しており、すべての期間で実質成長率を下回ったが、乖離幅は縮小していく見通しとなっている。

    (2)輸出企業の採算円レート

    輸出企業の採算円レートは105.9円/ドルと前回調査の114.9円/ドルから上昇した。(第1-2-2(1)図)

    業種別にみると、全ての業種で採算円レートを調査直前の円レートより円高に設定している。しかし、個別業種では繊維業や鉄鋼業などの採算円レートは調査直前の円レートよりも円高水準にあり、また全体のおよそ4割の企業の採算円レートは調査直前の円レートよりも円安水準にあった。(第1-2-2(2)図)

    (3)平均仕入価格と平均販売価格の動向

    今後1年間の平均仕入価格と平均販売価格の変化については、製造業全体で平均仕入価格が0.3%の上昇、平均販売価格が1.3%の低下を見込んでいる。業種別にみると、平均仕入価格については素材型業種で1.4%の上昇、その他製造業で0.8%の上昇となる一方、加工型業種では1.0%の低下となった。平均販売価格については全ての業種で低下する見通しとなった。(第1-3-1図)

    (4)設備投資の見通し

    今後3年間の設備投資の年度平均伸び率は全産業平均で3.1%(製造業3.0%、非製造業3.2%)と前回調査の2.4%(製造業2.1%、非製造業2.8%)から伸び率が増加した。3年連続で製造業が非製造業の伸び率を下回る見通しとなっている。(第1-4-1図)

    業種別にみると、回答企業が5社以上であった30業種中、25業種がプラス、5業種がマイナスとなり、「その他金融業」、「倉庫・運輸」、「小売業」が7%以上の高い伸びを見通している一方で、「医薬品」、「ゴム製品」、「電気・ガス」などでマイナスの見通しを持っている。また、資本金規模別にみると資本金10億円未満の企業が最も低い伸びとなっている。(第1-4-2図)

    (5)IT投資の見通し

    設備投資額の総額に占めるIT投資の割合は、全産業平均で過去3年間は19.1%、今後3年間は20.4%となっている。業種別にみると、過去3年間では、製造業が12.6%であるのに対し、非製造業は27.9%と約2倍となっている。今後3年間でも、製造業は13.8%、非製造業は29.6%と、前回調査に引き続き非製造業でIT投資比率が高い。(第1-5-1図)

    (6)海外現地生産

    全企業ベース(注)の海外現地生産比率(生産高)は、製造業全体でみると平成13年度実績13.7%から、14年度実績13.2%と若干低下した後、15年度実績見込み14.1%、20年度見通しは17.8%と上昇傾向にある。業種別では、加工型業種の伸びが大きくなっている。(第1-6-2図)

    (注)「全企業ベース」とは、海外現地生産比率を0%と記入した、つまり海外現地生産を行っていない企業を含んだ数値

  2. 利益回復の構造と課題

    (1)企業の収益状況

    平成14年度の売上高が増加したとする企業は48.5%(製造業51.5%、非製造業44.6%)、営業利益が増加したとする企業は59.0%(製造業63.3%、非製造業53.7%)となった。増収増益となった企業は39.4%、増収減益が8.3%、減収増益が17.1%、減収減益が28.7%であった。(第2-1-3図)

    営業利益を伸ばすために採用した施策のうち、最も効果があったのは固定費用の削減(43.6%)であり、次に売上数量の増加(24.0%)、変動費用の削減(20.7%)となり、売り上げ単価の上昇(5.7%)はわずかで、多くの企業で費用の削減がより利益の増加に貢献してきたと考えられる。(第2-1-5図)

    (2)費用削減の方法と効果

    企業が費用削減のために採用した施策では、「人件費の圧縮」(78.2%)、「合理化・省力化投資」(57.3%)、「調達先の見直し」(55.4%)、「物流コストの引き下げ」(51.6%)を採用したとする企業が50%を超える高い割合となり、企業が費用削減のために様々な手法を用いてきたことが分かる。そのうち最も効果があった施策としては「人件費の圧縮」が最も多く(47.9%)、次いで「合理化・省力化投資」(16.2%)、「調達先の見直し」(9.9%)、「物流コストの引き下げ」(6.1%)、「国内拠点の統廃合」(6.1%)などとなった。半数近くの企業で人件費を削減することがコストカットに最も効果があったという回答となったが、それ以外にも様々な施策がコストカットに貢献してきたことがうかがえる。 (第2-2-2図)

    (3)販売価格低下への対策

    今後3年間の売上単価に関する方針については、「現在の水準の維持」が46.3%、「引き上げ」が27.6%、「引き下げ」が16.7%となった。多くの企業で単価を維持する方針となったものの、引き上げると回答した企業が引き下げるとする企業を上回った。(第2-3-1図)

    売上数量を伸ばすための施策としては、「新製品の開発」36.6%(製造業52.5%、非製造業15.7%)、「商品の差別化によるブランド力の向上」30.8%(製造業27.7%%、非製造業34.9%)などとなった。製造業では新製品の開発、非製造業ではブランド力の向上が売上を伸ばすために有効と考えられる。(第2-3-3図)

    (4)雇用過剰感と労働需給の見通し

    正社員数は過去3年間で年度平均3.4%減(製造業4.2%減、非製造業2.3%減)、今後3年間では年度平均0.8%減(製造業1.2%減、非製造業0.3%減)となり、減少幅は大幅に縮小する見通しである。(第2-4-1図)

    パート、派遣社員数は過去3年間で年度平均2.2%増(製造業1.5%増、非製造業3.2%増)、今後3年間では年度平均2.3%増(製造業1.9%増、非製造業2.7%増)となり、今後も増加は続けるものの非製造業では増加率が低下している。(第2-4-3図)

    (5)調達先見直しの効果と今後の展望

    過去3年間に調達先の見直しを行った企業は、全産業で75.9%(製造業80.3%、非製造業69.1%)となり、リストラの一環として調達先の見直しは一般的な手法となっていることが分かる。(第2-5-1図)

    具体的な調達先の見直し方法は、「海外からの調達」が52.7%(製造業64.1%、非製造業32.2%)、「系列外の企業からの調達」が32.0%(製造業32.6%、非製造業31.1%)、「インターネットを利用した入札」が15.0%(製造業、14.3%、非製造業16.3%)となり、製造業において海外の企業から調達を実施する動きが浸透していることが分かる。(第2-5-5図)

    (6)分社化の効果

    過去3年間に分社化を実施した企業は30.9%であった。(第2-6-1図)

    資本金規模別では、資本金100億円以上の企業の46.1%が分社化を実施し、50億円以上100億円未満では29.7%、10億円以上50億円未満では18.4%、10億円未満では13.7%となった。(第2-6-2図)資本金額の大きい企業では、分社化は企業の収益構造を強化するための手法として広く行われていると考えられる。

    (7)リストラの進展状況

    日本企業全体のリストラの進展状況は「より一層のリストラを行う必要がある」が53.3%と最も多く、「(リストラできる余地は限られており)これ以上のリストラは困難である」は39.7%、「そもそもリストラを行う必要がない」は2.2%にとどまった。(第2-7-1図)

    個別企業のリストラの進展状況は「より一層のリストラを行う必要がある」は43.1%、「(リストラできる余地は限られており)これ以上のリストラは困難である」は31.4%となった。「そもそもリストラを行う必要がない」は18.7%と日本企業全体のリストラの進展状況と比べて高い割合となっている。(第2-7-3図)

  3. 国際競争力の改善に向けた努力

    (1)競合企業が所在する国・地域の変遷

    日本企業の主要製品が外国企業と競合している地域は、「中国(香港除く)」が79.2%と最も多く、次いでNIES(75.7%)、北米(74.4%)、欧州(70.7%)と続いた。これを平成13年度と比較すると、中国やNIES等のアジア市場の伸びが大きい(第3-1-5図)

    どの地域の製品と競合しているかについては、欧州製(68.5%)、北米製(67.5%)、中国製(63.7%)、NIES製(60.7%)が高い。平成13年度との比較ではすべての地域の製品で競合する割合は高まっており、中国製や北米製、NIES製では10ポイント以上の伸びとなっている。(第3-1-7図)

    (2)国際競争力の推移

    企業の国際競争力が3年前と比較してどのように変化したかについては、製造業全体で32.0%の企業が「競争力は強まった」と回答し、21.1%の企業が「低下した」と回答。「変化しなかった」と回答した企業は45.0%となった。競争力が高まったとする回答割合が平均よりも高い業種は、輸送用機器(47.9%)、金属製品(45.0%)、その他製造(44.4%)、電気機器(35.8%)であった。また、資本金規模が大きい企業ほど競争力が強まったとする企業が多い。(第3-2-2図)

    競争力が強まった要因としては、製品開発力を挙げた企業が全体の60.5%に上り、反対に競争力が低下した要因としては、42.6%の企業が費用削減の面でライバル企業が優れていたためと回答した。

    (3)国際競争力の展望

    日本企業の製品が外国企業の製品よりも優れている点として「品質」と回答した企業は77.1%となり、反対に劣っている点としては68.3%の企業が「価格」と回答した。今後の国際競争力の展望については、59.4%の企業がライバル企業と互角の競争力を見通しており、強まるとした企業は26.4%、低下するとした企業は10.3%となった。競争力が強まると見通している業種として、その他製造業(42.3%)、電気機器(31.6%)、輸送用機器(31.1%)、金属製品(30.0%)などで高い割合となっている。また、資本金規模が大きい企業ほど国際競争力が強まる見通しを持っている。(第3-3-3図)

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