平成19年度調査:企業行動に関するアンケート調査(平成20年(2008年)4月25日公表)                         「賃金改定の背景」 Annual Survey of Corporate Behaviors

特集調査の趣旨

2002年から長期的な景気回復が続く状況で、企業の雇用不足感が見られる一方、2006年後半以降賃金の伸び悩みが見られており、雇用形態の多様化等による労働市場の変化もあり、労働市場における需給逼迫が賃金上昇に結び付くという従来の関係が薄れてきているようにも見える。また賃金の伸び悩みは、家計部門の所得や消費の動向との関係でも注目されているところである。

そこで、本調査では、年齢層別、正社員・正社員以外の従業員別の賃金改定や雇用過不足感、雇用状況と密接に関係すると思われる企業の業況、雇用者数の増減、賃金を抑制する要因、団塊世代の継続雇用の状況について調査するとともに、それらの間の関係についても明らかにすることとした。

調査結果の構成

第1章では、従来からの調査を継承して、我が国の企業の経営環境と経営基本方針を把握するため、景気・需要、為替レート、仕入価格・販売価格の見通し、設備投資、雇用、海外現地生産の状況及び見通しを調査した結果をとりまとめている。

第2章では、特集として「賃金改定の背景」を把握するため、企業の業況、年齢層別・雇用形態別の雇用の不足感・過剰感、雇用者数の伸び率、賃金の改定率の動向に加え、賃金の上昇を抑制する要因、団塊世代の継続雇用の形態と継続雇用後の賃金水準について調査した結果をとりまとめている。

調査結果の概要

  1. 上場企業の我が国経済についての今後の見通しをみると、予想実質経済成長率は今後3年間(20~22年度)が1.8%(前年度調査2.1%)、今後5年間(20~24年度)が1.9%(同2.1%)、予想名目経済成長率は、ともに1.6%(前年度調査ともに1.7%)と前年度調査を下回った。名目は実質を前年度調査に引き続き下回った(第1-1-1図第1-1-1表)。業界需要の今後の見通しについては、予想実質経済成長率は今後3年間、5年間とも前年度調査を下回り、予想名目経済成長率は今後5年間は前年度調査と同水準となったが、今後3年間は前年度調査を下回り、名目が実質を引き続き下回る傾向となっている(第1-1-2図第1-1-2表)。

    1年後の予想円レートについては、全産業平均で111.0円/ドルと調査直前月の112.3円/ドルに対してはやや円高、前年度調査115.5円/ドルに対しても円高の結果となっている。また、輸出企業の採算円レートについても、104.7円/ドルと前年度106.6円/ドルよりも円高方向に変動したが、現実レートとの差は前年度調査より縮小している(第1-2-1図第1-2-2(1)図)。

    1年後の平均仕入価格、平均販売価格は、前年度調査をさらに上回る上昇が予想されており、平均仕入価格が、前年度調査2.4%から5.4%へ、平均販売価格が同0.2%から1.8%へと上昇幅が拡大した。このため、交易条件は平均販売価格の上昇幅に比べ平均仕入価格の上昇幅が大きく、前年度調査に比べ悪化した。(第1-3-1表)。

    今後3年間(20~22年度)の設備投資の見通しについては、全産業平均で5.1%と前年度調査の5.3%に比べ伸び率がやや低下(2年連続)した(第1-4-1図)。

  2. 国内と海外の生産の組み合わせについては、海外現地生産を行う企業の割合は、18年度実績が65.9%、19年度実績見込みで66.3%と上昇の後、24年度見通しは66.0%とやや低下する見通しとなったが、いずれも前年度調査(17年度実績63.2%、18年度実績見込み62.8%、23年度見通し62.4%)を上回る結果となった。

    海外現地生産比率を見ると、18年度実績17.3%、19年度実績見込み18.2%、24年度見通し19.3%といずれも前年度調査(17年度実績15.2%、18年度実績見込み16.1%、23年度見通し17.3%)を上回る結果となった。

    産業別には、加工型製造業は、海外現地生産比率は上昇しているものの、海外現地生産を行う企業の割合は19年度実績見込みは上昇、その後横ばいで推移し、素材型製造業は、海外現地生産比率が上昇する一方、海外現地生産を行う企業の割合も19年度実績見込みは上昇し、24年度見通しでは低下する見通しとなっている(第1-6-1図第1-6-2図)。これらを総合して考えれば、既に現地生産を行っている企業の海外現地生産比率の上昇が進む一方、特に素材型製造業において海外現地生産を取り止める企業が出てくる可能性があると考えられる。

    逆輸入比率(海外現地生産に占める日本向け輸出の割合)については、18年度実績が23.9%、19年度実績見込み23.5%、24年度見通し22.2%と低下する見通しとなっており(第1-6-4図)、いずれも前年度調査(17年度実績26.1%、18年度実績見込み25.5%、23年度見通し25.7%)を下回った。

    日本企業が国内に生産拠点を置く理由としては、「利用している技術が高度で、海外生産が困難だから」が24.4%と前年度調査同様最も多く、次いで「少量多種生産等の国内の需要に応じた対応が可能だから」となっている。また、産業別では素材型製造業と加工型製造業の「既存の生産設備を利用した方が、コストが安く済むから」が上昇している(第1-6-6図)。

    一方、日本企業が海外に生産拠点を置く理由としては、「現地の製品需要が旺盛又は今後の拡大が見込まれるから」が38.2%(前年度調査33.0%)と最も多く、次いで「良質で安価な労働力が確保できるから」が32.1%(同35.4%)と、前年度調査と比較すると順位が入れ替わり、産業別にみると、素材型製造業は前年度調査と同様に、「現地の製品需要が旺盛又は今後の拡大が見込まれるから」が最も多く44.4%となっている(第1-6-7図)。

  3. 以下では、賃金改定の背景にある雇用状況、企業の業況や賃金の改定率との関連などについて、年齢層別、雇用形態別にみていく。過去及び今後の企業の雇用の動向についてみると、過去3年間、今後3年間ともに雇用者数は前年度調査を上回る高い伸びとなるなど、堅調な動きとなっている。

    自社の業況(「良い」と回答した企業の割合-「悪い」と回答した企業の割合)をみると、全産業では現状については前年度調査の19.2%ポイントから1.8%ポイントとプラス幅が大幅に縮小したものの、来年度は14.3%ポイントとプラス幅が拡大する見通しとなっている。産業別にみると、現状については前年度調査から製造業はプラス幅が縮小し、非製造業はマイナスに転じた一方、来年度は製造業はプラス幅が拡大、非製造業はプラスに転じる見通しとなっている。 (第2-1-1図第2-1-2図)。

    従業員の雇用の過剰感・不足感(「不足している」と回答した企業の割合-「過剰である」と回答した企業の割合)の現状について全産業でみると、正社員は40歳代以下が不足超で、うち「20歳代以下」が55.2%ポイントと不足感が最も高く、逆に50歳代以上の年齢層は過剰超となっている。

    正社員以外の従業員についても正社員と同様の傾向となっているが、各年齢層とも正社員に比べ過剰感・不足感は小さくなっている。また製造業、非製造業の産業別にみても正社員、正社員以外の従業員とも同様の傾向となっている(第2-2-1図第2-2-2図)。

    非正規雇用者の比率について全産業平均でみると、「60歳代以上」は76.9%と圧倒的に高く、50歳代以下の年齢層では10%台と低くなっている。また産業別にみても同様の傾向となっており、各年齢層とも製造業に比べて非製造業の方が割合が高くなっている(第2-3-1図)。

  4. 今年度の雇用者数の伸び率について全産業平均(中央値)でみると、正社員では「20歳代以下」が3.2%で最も高く、「50歳代」が0.3%と最も低くなっており、正社員以外の従業員では「60歳代以上」が2.4%で最も高く、最も低いのは正社員同様「50歳代」で0.9%となっている。これを産業別にみても正社員、正社員以外の従業員ともほぼ同様の傾向となっており、また来年度についてみても同様の傾向となっている(第2-4-1図第2-4-2図)。

    現状の業況と今年度雇用者数の伸び率の関係を全産業「年齢計」でみると、雇用者数を増加させた企業の割合は、現状の業況が「良い」と回答した企業では正社員、正社員以外の従業員ともに60%台となったが、「悪い」と回答した企業ではともに40%台となっている。(第2-4-3図第2-4-4図)。

    また、雇用の過剰感・不足感と来年度の雇用者数の伸び率の関係を全産業の「年齢計」でみると、雇用者数を増加させる企業の割合は、「不足している」と回答した企業では正社員では76.2%、正社員以外の従業員では82.3%と高く、「過剰である」と回答した企業ではともに20%台と低くなっており(第2-4-5図第2-4-6図)、正社員、正社員以外の従業員とも、現在の業況、雇用の不足感と雇用者数の伸び率には正の相関がみられる。

  5. 今年度の賃金改定率を全産業平均(中央値)でみると、従業員全体、正社員では年齢層が低いほど高く、「20歳代以下」が従業員全体で2.0%、正社員で2.1%と最も高く、最も低い「60歳代以上」ではその約5分の1の改定率となっている。産業別にみても総じて同様の傾向となっている(第2-5-1図第2-5-2図)。また、正社員以外の従業員では、「20歳代以下」、「30歳代」、「40歳代」はほぼ同じ割合、次いで「50歳代」、「60歳代以上」の順で低くなっているものの、全体的に大きな差はみられない(第2-5-3図)。

    正社員と正社員以外を比較すると、全年齢層において正社員以外の従業員のほうが低く、特に「20歳代以下」では改定率が正社員の約半分の割合になっており、総じて年齢層が低いほどその差は大きく、産業別でもほぼ同様の傾向となっている。

    現状の業況と今年度の賃金改定率の関係を全産業「年齢計」でみると、プラスの賃金改定を行った企業の割合は、正社員では現状の業況が「良い」と回答した企業で91.3%、「悪い」、「良くも悪くもない」と回答した企業ではそれぞれ86.8%、84.8%となっている。また、正社員以外の従業員では、それぞれ63.9%、63.3%、60.3%と正社員に比べ低くなっている(第2-5-4図第2-5-5図)。

    現状の雇用の過剰感・不足感と今年度の賃金の改定率の関係を全産業の「年齢計」でみると、正社員、正社員以外の従業員ともに企業の雇用の不足感が強いほど賃金の改定率が高くなる関係がみられる(第2-5-6図第2-5-7図)。

  6. 賃金の上昇を抑制する要因として最も重要なもの(1位回答)は「売上げが伸びていないため」が最も多く、次いで「賃金改定における世間相場の重視」、「原材料費等の仕入価格の上昇」などが多く、上位3つの複数回答でも同様の傾向となっている(第2-6-1図第2-6-2図)。

    団塊世代の継続雇用の状況は、正社員から正社員以外への雇用形態が77.4%と圧倒的に多いが、その賃金水準は正社員の時に比べ56.2%となっている(第2-7-1表)。

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