平成20年度調査:企業行動に関するアンケート調査(平成21年(2009年)4月22日公表) Annual Survey of Corporate Behaviors

本調査の趣旨

我が国経済は、2002年1月に谷をつけた後、世界経済の高成長にも支えられ景気回復を続けてきた。この間、企業においても、米国向けや中国等の新興国向け輸出が堅調であったことなどから、企業収益は2007年央には過去最高水準に達した。

しかし、原油・資源価格の高騰による収益圧迫、米国の住宅バブルの崩壊等により需要が鈍化する中で、企業をめぐる環境は徐々に厳しさを増し、とりわけ、昨年後半から金融危機の深刻化により需要が世界的に急減速するなど、わずか2年弱の間に一転して企業の経営環境は極めて厳しい状況となった。

本調査では、こうした厳しい状況下において企業が、収益確保にどのような取組をしてきたのか、今後の日本経済の成長率や自らの業界の需要をどのように見通しているか、また、今後の景気動向を左右するであろう設備投資、従業員の雇用や賃金に対してどのようなスタンスを持っているのか等について調査した結果を取りまとめている。

調査結果の概要

  1. 平成21年度の予想経済成長率は実質・名目ともに−1.5%

    予想実質経済成長率は、21年度−1.5%、今後3年間(21-23年度)0.2%、今後5年間(21-25年度)1.0%となり、次年度(21年度)、今後3年間については昭和60年度調査以降最低水準、今後5年間についても過去最低水準となった14年度調査と同水準となった。

    予想名目経済成長率は、21年度は−1.5%、今後3年間では0.0%、今後5年間では0.8%となり、いずれも15年度調査以降最低水準となった。

    実質と名目を比較すると、21年度は一致する一方、今後3年間及び5年間の見通しでは、名目が実質を下回り、若干の物価下落が見込まれている(第1-1図第1-1表)。

    業界需要成長率は、21年度−2.7%、今後3年間−0.2%、今後5年間0.6%となり、いずれも比較可能な昭和60年度調査以降最低の水準となった(第1-2図第1-2表)。

  2. 1年後の予想円レートは97.0円/ドル、輸出企業の採算円レートは97.3円/ドル

    1年後の予想円レートは97.0円/ドルと調査直前月(21年1月90.4/円ドル)に比べ円安を予想しているが、昭和61年度調査開始以来初めて100.0円/ドルを割る円高予想となった(第2-1図)。

    輸出企業の採算円レートは、97.3円/ドルと前年度調査(104.7円/ドル)から円高へ移行、調査直前月の円レートに比べると、前年とは逆に円安方向へ乖離している。また、直近月(21年3月97.9円/ドル)とほぼ同水準である(第2-2図(1)(2))。

  3. 平均仕入価格、平均販売価格ともに下落

    製造業の1年後の平均仕入価格は、1.2%下落(前年度調査は5.4%上昇)、平均販売価格は2.4%下落(同1.8%上昇)となり、ともに15年度調査開始以来、最も低い見通しとなった。この結果、平均販売価格と平均仕入価格の変化を比較した交易条件は悪化となった(第3-1表)。

    非製造業の1年後の平均仕入価格は、1.2%下落、平均販売価格は、企業・団体向けが2.1%下落、個人・消費者向けが1.8%下落となり、この結果、交易条件は悪化となった(第3-3表)。

  4. 今後3年間の設備投資伸び率の見通しは−1.2%

    今後3年間の設備投資の見通しは−1.2%となり、昭和62年度調査開始以来初めてマイナスの見通しとなった(第4-1図)。

  5. 今後3年間の雇用者数の見通しは減少へ

    今後3年間の雇用者数の見通しは−0.2%となり、全産業、製造業についてはマイナスに転じ、非製造業もプラスを見込んでいる(第5-2図)。

  6. 海外現地生産比率はほぼ横ばいに

    製造業の海外現地生産を行う企業の割合は、19年度67.3%(実績)、20年度67.1%(実績見込み)、25年度見通し66.1%とやや低下する見通しとなっている(第6-1図)。

    海外現地生産比率は、19年度17.3%(実績)、20年度17.5%(実績見込み)とほぼ横ばいとなった。ただし、25年度見通し19.3%となり、やや上昇が見込まれている(第6-2図)。
    逆輸入比率については、19年度25.2%(実績)、20年度24.6%(実績見込み)、25年度見通し23.8%と低下する見通しとなっている(第6-4図)。

  7. 業況は、20年度は大幅な「悪い」超、21年度も「悪くなる」と見込む企業が多い

    自社の業況の現状(「良い」-「悪い」と回答した企業の割合)をみると、前年度調査の1.8%ポイントから−63.7%ポイントと大幅な「悪い」超となり、比較可能な16年度調査以降最低となった。21年度については−47.1%ポイントとなり、「悪くなる」と見込む企業が多くなっている。産業別にみると、現状では全ての産業で「悪い」超となり、前年度調査に比べて大幅に悪化した。21年度も製造業、非製造業ともに「悪くなる」と見込む企業が多くなっている(第7-1図)。

  8. 自社の賃金上昇率は、21年度は上昇幅が縮小する見込み

    自社の賃金上昇率は、20年度1.25%、21年度見通しが0.52%となり、引き続きプラスであるものの、プラス幅が縮小する見込みとなっている。業況と賃金上昇率の関係をみると、21年度は業況が「良くなる」と回答した企業では20.7%、「変わらない」と回答した企業では36.3%、「悪くなる」と回答した企業では43.2%となっており、業況が悪くなると見込んでいるほど賃金上昇率見通しはマイナスになっていることがわかる(第8-1図第8-3図)。

  9. 物価上昇、景気減速に対する利益確保の取組みとして多いのは、「生産工程・作業工程等の効率化」、「原材料・燃料・商品等の調達先の見直し」など

    物価上昇、景気減速に対する利益確保の取組み(複数回答)をみると、「生産工程・作業工程等の効率化」(67.4%)が最も多く、次いで「原材料・燃料・商品等の調達先の見直し」(60.5%)となっている。また、最も重要なもの(1位回答)についてみると、「生産工程・作業工程等の効率化」(26.9%)が最も多く、次いで「販売価格の引上げ」(21.9%)、「設備投資の抑制」(13.9%)の順となっている(第9-1図第9-2図)。

    物価下落が企業収益の圧迫要因の一つとなっていた状況において、企業が講じた取組みを過去の企業行動アンケート調査(14年度、15年度)でみると、「人件費の圧縮」(14年度75.7%、15年度78.2%)が最も多くなっている。経済状況が異なるなど、単純には比較できないが、当時は「人件費の圧縮」が8割近くを占め、最も多かったのに対し、現状では「雇用調整」は45.9%となっており、当時と比べれば、現時点では雇用の影響は大きくないが、今後3年間の雇用者数の見通しが減少となっているなど、経済情勢の悪化の影響が今後、雇用にもさらに波及していく可能性がある(第9-3図)。

    業況と利益確保の取組みの関係をみると、業況が「悪い」と回答した企業では、「生産工程・作業工程の効率化」(27.5%)、「販売価格の引上げ」(20.0%)、「設備投資の抑制」(15.8%)、「雇用調整」(10.7%)、一方、「良い」と回答した企業では、「販売価格の引上げ」(30.6%)、「生産工程・作業工程の効率化」(26.4%)の順となっている。両者を比較すると、「悪い」と回答した企業では、「設備投資の抑制」、「雇用調整」を行っている割合が高く、「良い」と回答した企業では、「販売価格の引上げ」を行っている割合が高い(第9-4図)。

  10. 雇用調整を行っている企業では、「残業削減」の割合が最も高く、「解雇」は最も低い

    前述の利益確保の取組みとして「雇用調整」の方法についてみると、正社員・正社員以外ともに「残業削減」(正社員85.0%、正社員以外65.7%)が最も多い。次いで、正社員は「採用抑制」(50.1%)、「賃金調整」(40.7%)、「その他」(8.0%)、「解雇」(4.7%)、正社員以外は「採用抑制」(61.2%)、「解雇」(29.7%)、「賃金抑制」(17.3%)、「その他」(12.4%)となっており、「解雇」をとる企業の割合が、正社員よりも正社員以外の方が多い(第10-1図第10-2図)。

    利益確保の取組みのうち、業況と雇用調整の取組みの関係についてみると、業況が「悪い」とした企業の割合が最も高いのは、正社員では、「残業削減」(44.0%)、「採用抑制」(25.8%)、「賃金調整」(22.8%)、「その他」(4.6%)、「解雇」(2.7%)の順となっている。一方、「良い」とした企業の割合が高かったのは、「残業削減」(57.1%)、「採用抑制」(35.7%)、「賃金調整」(7.1%)の順となっている。両者を比較すると業況が「悪い」と回答した企業で「賃金調整」や「解雇」の割合が高くなっている(第10-4図)。

  11. 原材料価格をはじめとする物価上昇下では、仕入価格全体の上昇率が0%超10%未満と回答した企業が4割程度

    原油や穀物等の原材料価格をはじめとする物価上昇下で、2年前と比べて仕入価格全体がどの程度上がったのかについてみると、仕入価格が「0%超10%未満」と回答した企業は40.7%、「10%以上20%未満」が22.2%となっている(第11-1図)。また、仕入価格の上昇を、主力製品・サービスの販売価格へどの程度転嫁できているかを仕向け先別(国内・海外向け)にみると、国内・海外向けともに「0%超10%未満」と回答した企業が最も多く(国内30.9%、海外31.6%)、次いで、「0%」となっている(同19.8%、同23.9%)。また、転嫁率が「100%」と回答した企業は、国内向けが4.2%、海外向けが3.2%となっている(第11-2図)。

  12. 円高局面における主力製品の海外での価格設定は「維持した」の割合は6割程度

    円高局面における主力製品の海外での価格(現地通貨建て)設定の方法についてみると、全産業、製造業(素材型業種、加工型業種、その他の製造業)、非製造業のいずれも価格を「維持した」企業の割合が約60%を占めている。「引き上げた」企業は約30%、「引き下げた」企業は約7%となっている(第12表)。

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