ESRI Discussion Paper No.356 バブル期における住宅価格の変動が世帯の生涯効用に与えた影響
2020年8月
- 新関 剛史
- 内閣府経済社会総合研究所客員研究員、愛媛大学法文学部准教授
- 菅史彦
- 内閣府経済社会総合研究所客員研究員、九州大学経済学部助教
要旨
本研究の目的は、日本のバブル期における住宅価格の変動が、家計の資産蓄積と生涯効用に与えた影響を推定することにある。そのために、まず担保・借り入れ制約の下での家計の消費/貯蓄および住宅に関する選択を明示的に導入したモデルを構築した。次に、我々が独自に推計した住宅資産価値の情報を含む、総務省『家計調査』データを用いて、モデルを推定した。推定したモデルを用いて、バブル期の住宅価格の変動がなかった場合の反実仮想シミュレーションを行うことで、バブル期の住宅価格変動が生涯効用に与えた影響を定量的に評価することができる。分析の結果、38.6%の家計が、住宅価格変動の恩恵を受け、生涯効用の上昇幅は3.3%であった。一方で、61.4%の家計が効用の減少を経験し、減少幅は平均で2.4%であった。全体で平均すると、住宅価格変動によって0.2%の生涯効用が失われた。これは生涯所得の1.3%相当する。
全文ダウンロード
バブル期における住宅価格の変動が世帯の生涯効用に与えた影響(PDF形式:698KB)
全文の構成
-
1. Introduction2ページ
-
2. Background and Related Literature4ページ
-
3. Life-cycle Model6ページ
-
4. Data10ページ
-
5. Estimation Procedure14ページ
-
6. Estimation Results17ページ
-
7. Counter-factual Simulation19ページ
-
8. Conclusion20ページ
-
References22ページ