ESRI Discussion Paper No.365 銀行への公的資本注入政策が与信配分と企業投資に及ぼす影響について。日本における銀行危機の事例から

2021年7月
笠原 博幸
University of British Columbia
澤田 康幸
Asian Development Bank, 東京大学
鈴木 通雄
内閣府経済社会総合研究所, 東北大学

要旨

本稿では、90年代後半の日本の銀行危機において、財政難に陥った銀行への政府の資本注入が信用配分と企業投資に与えた効果を検証する。標準的な投資理論では、資本注入によって生産性の高い企業への銀行融資が増加し、投資が促進されると考えられている。一方,Peek-Rosengren(2005)は、銀行は深刻な財政問題を抱えた企業への融資を増加させるインセンティブを持っていると指摘した。この2つの理論の相対的な重要性を評価するために、日本の製造業企業の貸借対照表データと銀行の貸借対照表データを組み合わせ、資本注入の効果が全要素生産性(TFP)やゾンビ企業(銀行への利払いに援助を受けていると考えられる企業)であるかによって異なるかどうかを検証する。回帰分析の結果、資本注入は、生産性が高い非ゾンビ企業と生産性が低いゾンビ企業という、非常に異なる2つのタイプの企業への信用供給を増加させた。一方で、資本注入によって誘発された信用供給は、高TFP企業の投資を促進するだけで、ゾンビ企業の投資を促進しないことがわかった。 この結果は、資本注入による効率的な信用配分を促進するメカニズムと、(低生産性の)ゾンビ企業への融資を引き起こすメカニズムの両方が、日本政府の資本注入の影響を説明する上で定量的に重要であることを示している。


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  • 1. Introduction
    page3
  • 2. Banking Regulation and Recapitalization Policies in Japan
    page8
  • 3. Data Source and Variable Denition
    page10
  • 4. Empirical Analysis
    page14
  • 5. Conclusion
    page25