ESRI Discussion Paper No.397 無形資産は社会資本の生産力効果を高めるか―社会資本データ、R-JIPデータベース及び地域間産業連関表を利用した推計―

2024年8月
石川 貴幸
立正大学経済学部特任准教授
岩崎 雄也
青山学院大学経済学部助教
川崎 一泰
中央大学総合政策学部教授
宮川 努
学習院大学経済学部教授

要旨

 社会資本や地域生産性のデータが更新されことを受け、我々は先行研究に従い社会資本の生産力効果を確認し、以下の2点について新たな試みを行った。第一に、社会資本の外部性に対する公的な無形資産の補完的役割を考慮した点、第二に、都道府県間の取引量を考慮したスピルオーバー効果を計測し、モデルに組み込んだ点である。 我々の研究では以下の3つのデータを使用した。「日本の社会資本」(内閣府)、「都道府県別産業生産性(R-JIP)データベース」(経済産業研究所)、「都道府県間産業連関表2011」(経済産業研究所)である。スピルオーバー効果の計測に際しては、都道府県間産業連関表の取引額でウェイト付けし、分析した点は本論文の特徴の一つである。 これらのデータセットから、地方の公共部門の無形資産の対有形資産比が民間部門や都市の公共部門と比べて増加していないことが分かった。 社会資本と公的な無形資産を含めた生産関数の推計を行うと、社会資本の外部性に関しては、正で有意な結果を得られなかった。しかしながら、産業レベルでの全国的な無形資産の増加は、社会資本の生産性向上効果を増進させることが分かった。さらに、地方においてもこの効果は正で有意な結果が得られた。また、東日本大震災や熊本地震のような大地震からの復旧に際しては、社会資本の生産力効果が働いていることが分かった。 以上の無形資産と社会資本に対する分析結果は、COVID-19パンデミックのような災害において、公的なデジタル化の不足が混乱を引き起こした我々の経験とも合致する。我々の研究は、無形資産の蓄積は民間部門だけでなく、公的部門においても必要であることを示している。


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全文の構成

  1. Abstract
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  2. 1 Introduction: Social Infrastructure and Intangibles
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  3. 2 Related Literature
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  4. 3 An Analytical Framework and Datasets
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  5. 4 Estimation Results
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  6. 5 Conclusions and Policy Implications
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  7. Appendix
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  8. References
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  9. Table
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  10. Figure
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