ESRI Discussion Paper No.398 Heterogeneous Effects of ICT on Students Outcomes
- 宗像 扶早子
- 内閣府経済社会総合研究所研究官
- 内海 友子
- 内閣府経済社会総合研究所客員研究員、創価大学国際教養学部准教授
要旨
学校における情報通信技術(ICT)の利用は、近年世界的に増加の一途をたどっており、ICTの利用に関する研究も数多く行われている。先行研究の多くはICTが学業成績に及ぼす全体的な影響に焦点を当てているが、ICT利用の異質的な効果を検証する研究は少ない。
昨年、当研究所ではMunakata and Utsumi(2024)の研究成果(DP No.394)として、ICT環境の整備や利用は児童生徒の自己効力感ややり抜く力を変化させる可能性があり、それは年齢・男女差・SESといった異質性により異なることを報告した。この結果を踏まえ、本研究では、生徒特性として児童生徒の学力層、学校特性として教員研修の多さ・教員間の協力・学校規律の問題の程度に着目し、ICT利用におけるこれらの影響の違いを分析した。
固定効果推定に基づく分析の結果、授業でのICTの恒常的な利用は、生徒の非認知スキル及び認知スキルの両方に効果がある可能性を示す結果が得らえた。更に検証を進めると、ICTがこれらの非認知スキル及び認知スキルに及ぼす効果は、生徒の学力層や学校特性に依存することが明らかになった。例えばICTの利用はすべての学力層において生徒の自己効力感と正の相関があることが分かったが、特に低い学力層の生徒の自己効力感が高まる傾向が見られた。また、これまでの先行研究の結果と同様に児童生徒の国語と数学のテストスコアに対する全体的な効果は見られなかった一方、学校規律に問題がある学校ではICT環境の導入により学力に正の相関があるという結果が得られた。
本研究より、ICT利用の効果には異質性が見られたことから、政策立案に関しては効果の異質性を考慮することの重要性が明らかになっただけでなく、ICTは教員の補完的役割を果たし教育の質を上げ得る可能性が示唆されたのでこれを報告する。
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Heterogeneous Effects of ICT on Students Outcomes(PDF形式:592KB)
全文の構成
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Introductionpage 2
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Conceptual Frameworkpage 3
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Datapage 5
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Empirical Frameworkpage 7
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Results for Non-Cognitive Skillspage 9
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Results for Cognitive Skillspage11
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Conclusionpage12
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Referencespage15
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Tablespage18
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Figurepage24
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Appendixpage25