ESRI Discussion Paper No.401 働く女性の更年期症状に影響を及ぼす因子の解明に向けて:インターネットパネルに基づく分析

2025年6月
出口 恭子
内閣府経済社会総合研究所
牛込 陽菜
秋田大学大学院医学系研究科衛生学公衆衛生学講座
野村 恭子
秋田大学大学院医学系研究科衛生学公衆衛生学講座、内閣府経済社会総合研究所

要旨

 日本では45~54歳の女性の就業率が80%を超え、職場における健康課題として更年期対策が必要になっているが、働く女性の更年期症状の改善や予防に役立つエビデンスの蓄積は少ない。そこで、本研究は、インターネットパネルを分析し、働く女性の更年期症状に有意に関連する因子などについて検討した。
 2021年9月、民間インターネット調査会社にパネルとして登録している45~56歳の働く女性を対象に、更年期に関連する症状について自記式で調査し、更年期症状の程度は簡略更年期指数(SMI:Simplified Menopausal Index)で評価した。3645名の有効回答から、週の有償労働20時間未満の者と薬剤性無月経者を除外し2731名を分析対象とした。SMIが26点以上の中等症~重症の者は1093名(40.0%)であった。また、更年期症状の緩和や予防のため、市販薬を含む医薬品等を使用する者は530名(19.4%)であり、更年期症状に対する医薬品等を使用しながら働く女性は少なくなかった。
 SMIが25点以下の症状なし~軽症群をレファレンスとして、SMIが26点以上の中等症~重症群の更年期症状有訴リスク比を多重ロジスティック回帰分析により算出すると、SMI26点以上の更年期症状有訴リスク増加に対して、肥満度レベルが過体重~肥満(BMI ≧25)、婦人科疾患の既往歴を有すること、更年期(閉経移行期、閉経期)にあること、5kg 以上の重量物の持ち上げが1日1回以上ある労働環境、月1回以上の深夜勤務といった5因子との有意な関連が認められた。45~56歳の就労女性の更年期症状の有訴リスクに対し、肥満度や婦人科疾患の既往歴などの個人の身体状況のほか、重量物の持ち上げや深夜勤務といった労働環境が有意に関連していたことは、セルフケアの取組みや労働環境の改善が就労女性の更年期症状の緩和につながる可能性を示唆するものである。


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全文の構成

  1. 要旨
    3ページ
  2. 1. 背景
    5ページ
  3. 2. 目的
    8ページ
  4. 3. 調査方法
    9ページ
  5. 4. 結果
    12ページ
  6. 5. 考察
    14ページ
  7. 6. 結論
    19ページ
  8. 参考文献
    21ページ
  9. 図表・付表
    26ページ