ESRI Discussion Paper No.403 主観的金融政策ショックが消費に与える影響

2025年8月
丹後 健人
内閣府経済社会総合研究所研究官、
横浜市立大学大学院国際マネジメント研究科客員講師
中園 善行
内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官、
横浜市立大学大学院国際マネジメント研究科教授

要旨

本論文は、金融政策ショックの新たな概念として「主観的金融政策ショック(Subjective Monetary Policy Shocks)」を提案する。これは、家計レベルで金融政策の認識の異質性を捉えるものである。本研究では、マクロ経済見通しと消費支出に関する高頻度スキャナーデータを接続した独自のパネルデータを構築したうえで、家計ごとに金融政策ショックを識別し、その消費行動への影響を推定した。具体的には、まず家計それぞれが形成したマクロ経済見通しに基づいてテイラールールを推定し、その回帰残差を主観的金融政策ショックとして識別したうえで、局所線形予測(Local Linear Projection)法により、ショックが通時的に消費に与えるインパルス応答を推定した。分析の結果、以下の二点が明らかとなった。第一に、金利動向に対して高い関心(Attention)を示す家計のみが、金融政策ショックに対して統計的に有意に消費を変化させていた。第二に、負債を抱える家計(若年層)と資産を保有する家計(高年層)では、金融引き締めショックに対する消費反応が異なり、前者は消費を減少させたのに対し、後者は逆に消費を増加させていた。これらの結果は、Heterogeneous Agent New Keynesian(HANK)モデルにおいて強調される、金利や物価を通じた再分配チャネルと整合的である。家計レベルで観測される金融政策ショックに対して消費が異質的に反応することは、金利への関心の度合いや金利エクスポージャーの違いが、金融政策の波及メカニズムを左右することを示唆している。


全文ダウンロード

主観的金融政策ショックが消費に与える影響(PDF形式:442KB)PDFを別ウィンドウで開きます

研究のポイント(PDF形式:661KB)PDFを別ウィンドウで開きます

全文の構成

  1. 1 Introduction
    Page 2
  2. 2 Theoretical Motivation
    Page 5
    1. 2.1 Heterogeneity in Perceived Policy Shocks
      Page 5
    2. 2.2 Heterogeneity in Consumption Responses
      Page 6
  3. 3 Data
    Page 6
    1. 3.1 Consumers’ Economic Outlooks and Updating Frequency of the Information Sets
      Page 7
    2. 3.2 Survey on Consumption Expenditure
      Page 9
      1. 3.2.1 Home Scanner Data
        Page 9
      2. 3.2.2 Imputed Consumption
        Page 11
  4. 4 Identification Strategy
    Page 13
    1. 4.1 Estimating the Taylor Rule
      Page 13
  5. 5 Empirical Results: Consumption Responses to Subjective Monetary Policy Shocks
    Page 15
    1. 5.1 Average Effects and Baseline Dynamics
      Page 15
    1. 5.2 Heterogeneity by Attention and Financial Exposure
      Page 15
    1. 5.3 Heterogeneity by Lifecycle Position
      Page 16
    1. 5.4 Robustness Checks
      Page 17
  6. 6 Conclusion
    Page 18