ESRI Discussion Paper No.405 夫婦間分業の利益と離婚の意思決定:年金分割制度導入に基づくエビデンス

2026年1月
濱秋 純哉
内閣府経済社会総合研究所客員研究官
法政大学経済学部准教授
小川 禎友
関西学院大学経済学部教授

要旨

本論文では,2007年に導入された厚生年金の合意分割制度が離婚の意思決定に与えた影響を分析した。制度導入前の日本では,多くの夫婦が伝統的な性別役割分担に基づいて分業の利益を享受していたと考えられる。すなわち,主たる稼得者が企業等での労働に従事する一方,配偶者は家事労働を担い,その成果を夫婦間で交換するという分業が行われていた。ところが,2007年4月に施行された合意分割制度では,主たる稼得者が婚姻期間中に支払った厚生年金保険料の最大半分に基づく年金受給権を配偶者が離婚時に受け取ることが可能となった。これにより,主に家事労働に従事していた配偶者は,婚姻関係を継続しなくても分業の利益を享受できるようになった。本論文では,このことを自然実験として,「夫婦間分業の利益の減少が離婚を増やした」という仮説を検証した。分析の結果,分業の利益の減少が大きかった夫婦では,制度導入年とその後3年間における離婚が10~20%増加したことが分かった。この結果から,分業の利益が夫婦の離婚の意思決定に重要な役割を果たしていることが示唆される。


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全文の構成

  1. 1 Introduction
    Page 2
  2. 2 Institutional background
    Page 9
  3. 3 Theoretical analysis
    Page 18
  4. 4 Data description
    Page 32
  5. 5 Empirical strategies
    Page 41
  6. 6 Results
    Page 46
  7. 7 Conclusion
    Page 65