ESRI Discussion Paper No.334貸出、債券と株式の間で「裁定」は十分働いているか
―株式による資金調達に対する金融政策の波及について―

2017年3月
坪内
内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官
中山奈津美
内閣府大臣官房政策評価広報課課長補佐
吉岡徹哉
内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部企画調査課研究専門職

要旨

本稿では、金融資産間の「裁定」を通じて金融政策が株式による企業の資金調達に影響を与えているかどうかについて検証を行った。その結果、2000年前後から、銀行システムを通じて金融政策の影響が直接及ぶ債券と株式の間で「裁定」が十分働いているとはいえなくなっていることがわかった。その背景として、近年株式市場において存在感を増している海外投資家が日本の債券と株式の間で「裁定」を行っていないことが原因となっている可能性がある。

一方、海外投資家は日本の株式と海外の株式との間で「裁定」を行っており、日本の株価は海外の株価や為替レートの影響を受けやすくなっている。

全文ダウンロード

貸出、債券と株式の間で「裁定」は十分働いているか―株式による資金調達に対する金融政策の波及について―(PDF形式 1.20 MB)PDFを別ウィンドウで開きます

全文の構成

  1. 1ページ
    要旨
  2. 1ページ
    1. 問題意識
  3. 4ページ
    2. 金利と株式投資収益率の関係
    1. 4ページ
      (1) モデル
    2. 5ページ
      (2) データ
    3. 5ページ
      (3) 推計結果
      1. 5ページ
        (3.1) 基本的な推計
      2. 7ページ
        (3.2) 債券と株式の間で「裁定」が働いていた期間を同時に推計する場合
  4. 8ページ
    3. 金融資産の保有と取引の現状
    1. 8ページ
      (1) 貸出、債券の保有と取引の状況
    2. 8ページ
      (2) 株式の保有と取引の状況
    3. 9ページ
      (3) 国内部門の株式保有
    4. 10ページ
      (4) 日本銀行の資産、負債及びそれらの保有状況
    5. 11ページ
      (5) まとめ(現状の整理)
  5. 11ページ
    4. 日本の株価、米国の株価、為替レートの関係
  6. 13ページ
    5. おわりに
  7. 15ページ
    (参考文献)
  8. 16ページ
    1. 16ページ
      図1-1-1 金利と民間企業設備投資
    2. 16ページ
      図1-1-2 日銀当座預金残高と民間企業設備投資
    3. 16ページ
      図1-2 民間非金融法人企業の負債フロー
    4. 17ページ
      図1-3 国債金利と株式投資収益率(東証一部)
    5. 17ページ
      図2-1 貸出金の部門別残高構成比
    6. 18ページ
      図2-2 貸出金の部門別取引量
    7. 18ページ
      図2-3 債券(長期・短期含む)の部門別保有割合
    8. 19ページ
      図2-4 債券(長期・短期含む)の部門別取引量
    9. 19ページ
      図2-5-1 海外部門の債券保有内訳(ストック)
    10. 20ページ
      図2-5-2 海外部門の債券取引内訳(フロー)
    11. 20ページ
      図2-5-3 海外投資家による国債の売買(グロス)
    12. 21ページ
      図2-6 上場株式の部門別保有割合
    13. 21ページ
      図2-7 株式の部門別取引量
    14. 22ページ
      図2-8-1 海外部門の株式取引と株価
    15. 22ページ
      図2-8-2 国内部門の株式取引と株価
    16. 22ページ
      図2-9 家計の資産保有内訳
    17. 23ページ
      図2-10 株式と債券・貸出の部門別保有割合
    18. 23ページ
      図2-11 日本銀行の資産、負債及びそれらの保有状況
    19. 24ページ
      図3-1 米国株価と日本株価
    20. 24ページ
      図3-2 海外投資家の株式売買比率(グロス)
    21. 25ページ
      (参考)株式の投資部門別売買(グロス)
    22. 25ページ
      図3-3 NYSE総合指数・為替レートの係数