ESRI Discussion Paper No.335南海トラフ巨大地震の被害想定地域における社会移動
〜DID(差分の差分)法による影響の検証〜
2017年3月
- 直井道生
- 慶應義塾大学経済学部准教授
- 佐藤慶一
- 専修大学ネットワーク情報学部准教授
- 田中陽三
- 内閣府経済社会総合研究所研究官
- 松浦広明
- 松蔭大学副学長兼学術総合センター長
- 永松伸吾
- 関西大学社会安全学部教授
要旨
本研究では、住民基本台帳に基づく人口動態データと、内閣府による南海トラフ巨大地震の被害想定データを収集・整理して、差分の差分(Difference-in-Differences, DID)推定量による分析を行った。結果として、公表された津波高は社会増減に対して負の影響があることが確認された。さらに、転出に対する影響は公表直後に観測されるのみであるが、転入に対する影響は、公表後の各年で継続して負の影響が出ていることが明らかとなった。被害想定の公表によって、期待されていた避難訓練や耐震化といった防災行動を超え、津波高の引き上げ幅が高い地域への転入減やそうした地域からの転出増という形での人口減少を通じて、人々がリスク回避を図っている可能性がある。また、防災業務に携わる関係機関の人口集中地区への集約度を考慮した推計では、集約度が高い市区町村ほど、転入に対する津波高の負の影響が弱まるという結果を得た。
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南海トラフ巨大地震の被害想定地域における社会移動〜DID(差分の差分)法による影響の検証〜(PDF形式 1.27 MB)
全文の構成
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1ページ要旨
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2ページ目次
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3ページ1. はじめに
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4ページ表1 地震の危険性の計測方法、内容、目的
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4ページ2. データ収集と社会増減の傾向
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4ページ2.1 データ収集
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6ページ表2 収集した市区町村単位のデータ一覧
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7ページ2.2 社会増減の傾向
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7ページ図1 特別強化地域区分ごとの社会増減率( 2008年~2015年)
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8ページ図2 特別強化地域区分ごとの転入率( 2008年~2015年)
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8ページ図3 特別強化地域区分ごとの転出率( 2008年~2015年)
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9ページ3. 災害リスク情報の公表と人口移動に関する実証分析
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9ページ3.1 災害リスク情報の公表:先行研究
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10ページ3.2 分析に用いるデータ
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11ページ表3 記述統計量
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11ページ表4 市区町村別の津波高の引き上げ幅分布
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12ページ3.3 分析の枠組み
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13ページ3.4 分析結果
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14ページ表5 社会増減率・転入率・転出率に関する推計結果
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17ページ図4 津波高の引き上げ幅が社会移動に与える影響
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18ページ表6 年度ごとの推計
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21ページ表7 記述統計量
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22ページ表8 社会インフラ施設の集約度による影響の違い
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23ページ4. まとめ
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23ページ4.1 結論と考察
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23ページ4.2 今後の課題
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26ページ謝辞
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27ページ参考文献
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28ページ付表1 平行トレンドの検証
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29ページ付図1 分析対象自治体
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