ESRI Discussion Paper No.337日本の子どもの貧困分析
2017年4月
- 明坂弥香
- 大阪大学社会経済研究所 特任研究員
- 伊藤由樹子
- 公益社団法人日本経済研究センター 主任研究員
- 大竹文雄
- 大阪大学社会経済研究所 教授
元内閣府経済社会総合研究所客員 主任研究官
要旨
本研究は、日本の子どもの貧困について、世帯属性の特徴とその変化を明らかにするため、『就業構造基本調査』を用いた分析を行った。本研究では、貧困指標として「相対的貧困」と「絶対的貧困」の2種類を用いた。この2種類の貧困状態をもとに、どのような特性を持つ世帯が貧困状態にあるのか、また、どのような要因によって貧困率が変化しているのかを明らかにした。さらに、貧困リスクと子どもの高校就学の関係についても分析した。
本研究の結果から、次の三点が明らかになった。第一に、子どもが貧困になっている確率が高い世帯の特徴は、1歳以下の小さな子どもがいる、世帯主が女性、世帯主の年齢が低い、世帯主の学歴が低い、子どもの数が多い、大人が一人の場合であった。第二に、1997年と2012年の間で貧困率の変化を要因分解すると、世帯属性の分布の変化は貧困率を引き下げる影響を与えた。一方、同一世帯属性での貧困確率の変化は貧困率を引き上げる影響を与えた。第三に、貧困リスクが高い子どもほど、高校就学率が低く、就業率が高い傾向にあった。ただし、高校生の年齢層における非就学・就業の割合は、1997年以降低下傾向にある。
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全文の構成
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1ページ要約
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2ページ1. はじめに
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3ページ2. 貧困率の定義
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4ページ(相対的貧困)
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4ページ(絶対的貧困)
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5ページ3. データ
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5ページ(1)『就業構造基本調査』について
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6ページ(2)分析データの構築
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8ページ4. 推定方法
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8ページ(1)モデルの定式化
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8ページ(2)Blinder-Oaxaca分解の非線形モデルへの適用
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10ページ4. 推定結果
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10ページ(1)貧困状態にある子どもと世帯の特徴
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11ページ(2)貧困率上昇の要因分解
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13ページ(3)貧困リスクと就学・就業との関係
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14ページ5. 結論
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16ページ【参考文献】
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17ページ表1:記述統計
(子ども個人及び子どもがいる世帯に限ったサンプルの記述統計)
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19ページ表2:記述統計
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20ページ表3:ロジット分析による貧困確率の推計(個人データを対象にした分析)
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21ページ表4:ロジット分析による貧困確率の推計(世帯データを対象にした分析)
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22ページ表5:貧困率変化の要因分解(個人データを用いた分析)
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24ページ表6:貧困率変化の要因分解(世帯データを用いた分析)
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26ページ表7:非就学・就業の決定要因
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27ページ表8:非就学率変化の要因分解
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28ページ表9:就業率変化の要因分解
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30ページ図1:1980年代以降の日本の相対的貧困率
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31ページ図2:相対的貧困率の定義
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32ページ図3:相対的貧困線の推移
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33ページ図4:国民生活基礎調査における貧困率との比較
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34ページ図5:ロジット分析における限界効果の変化(個人データを用いた分析)
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35ページ図6:ロジット分析における限界効果の変化(世帯データを用いた分析)
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36ページ図7:貧困リスクと非就学の関係
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37ページ図8:貧困リスクと就業の関係
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38ページ図9:貧困リスクと年間100日以上就業の関係
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