93SNAへの移行についての説明会議事概要

1.日時

  • 平成12年9月21日(木)14:05~15:55

2.場所

  • 経済企画庁官房会議室(708、709号室)

3.出席者

  • (1)民間企業(シンクタンク、金融機関)のエコノミスト等 計56名
  • (2)経済企画庁側
  •  国民経済計算部長、国民支出課長、分配所得課長、国民資産課長 他

4.概要

  • 冒頭、浜田国民経済計算部長より、多数の出席を謝し、資料に基づき説明。以後質疑応答。

5.資料

  • (1)「93SNAの移行について」
  • (2)「93SNAへの移行のポイント」
  • (3)「我が国国民経済計算体系における主な変更点とその概要」

6.質疑応答

  • Q.平成2年より前のデータはいつごろを目途にどれくらい前まで公表するのか。また平成2年以降のデータは現行と同範囲で10月末に公表するのか。
  • A.国内総支出の系列については1980年からのデータを10月末目途に公表するが、80年代は概念調整的な方法を用いた90年代より簡易な推計方法を使ったデータとなる。それ以外の系列は90年以降のデータのみ10月末に公表する。残りの遡及系列については、来年以降できる限り迅速に推計作業を行いたいが、いつまでに公表できるとは現時点では申し上げられない。平成2年以降のデータは原則現行の年報同様に公表するが、93SNAへの移行により、現行と同じ表になるわけではなく、また、10月末には、一部の表を出せない可能性もある。
  • Q.今回の改訂で非金融法人企業と金融機関をそれぞれ公的・民間に分けるのに伴い、純固定資産についてもそれぞれ公的・民間に分けて表章するのか。
  • A.実物資産については、非金融法人企業、金融機関別に公的・民間を分けることはしないので、純固定資産についてもそうなる。
  • Q.社会資本ストックに固定資本減耗の概念が適用されることになるが、社会資本ストック額そのものを公表するのではなく、減耗額のみ公表されるのか。
  • A.社会資本ストックやその減耗額を分けて表章することはせず、一般政府のストックや減耗の中に含まれる形になる。
  • Q.現行の雇用者所得のうち、年金の雇主負担分が切り離されて新しく雇用者報酬となるのか。
  • A.社会負担分の雇主負担分も雇用者報酬に含まれ、雇用者報酬と雇用者所得とは概念・中身も同じである。名称変更の理由は、SNAマニュアルに基づき、より原語に近いものを採用するためである。
  • Q.所得支出勘定のうち、家計の可処分所得の使用勘定に出てくる貯蓄の(総)と(純)の違いは何か。
  • A.それぞれ、モトとなる可処分所得の方に固定資本減耗を含む(総)か、除いている(純)かの違いである。
  • Q.昨年7月に公表された表章形式(案)には、所得支出勘定の対家計民間非営利団体の第1次所得の配分勘定に、「営業余剰」があるが、これには何が含まれているのか。
  • A.あくまで概念的なものとして記載したものであり、対家計民間非営利団体については営業余剰は存在しないため、93SNAでの表章はしない。
  • Q.社会資本の固定資本減耗の計上は、政府の貯蓄投資バランスに影響を及ぼすのか。
  • A.それによって、グロス(総)の産出は増えるが、ネット(純)になる段階で、固定資本減耗が控除されるため、政府の貯蓄投資バランスは不変である。
  • Q.SNA産業連関表や資本ストックは93SNAベースに移行するのか。また、遡及はいつまでに行う予定か。
  • A.SNA産業連関表は、時期は未定だが、93SNAベースに移行する予定である。また、資本ストックについても移行する。なお、総固定資本形成に計上されるコンピューター・ソフトウェアは、別掲する。さらに、90年以前の遡及については、いつ行うか未定だが、可及的速やかに行いたい。
  • Q.ソフトウェアの計上の仕方について、1)68SNAで政府に計上されているというのは一体型だけだという理解でよいか、2)インハウス(自社開発)ソフトウェアは投資としているのか、3)基礎統計は何を使っているのか。
  • A.1)68SNAにおいては、一体型でないソフトウェアであっても政府の購入する分は、政府産出のコストとなるため、政府最終消費支出として政府に計上されている。93SNAでは、政府の投資へと振り替えることになる。2)93SNAにおいては、受注型ソフトウェアは投資とみなすが、自社の内部で作成したようなインハウス型のソフトウェアについては企業の中間消費としている。3)通産省が公表している「特定サービス産業実態調査報告書」を使用している。
  • Q.公的固定資本形成について、大蔵省、自治省からより精度の高いデータを提供してもらうように申し入れたとのことだが、どうなったか。
  • A.関係省庁からいただけることになったが、まだ、長い期間の分はなく、数ヶ月程度の分である。今後そうしたデータが揃ってくれば、活用を検討していきたいと考えている。
  • Q.今年出した「QEハンドブック」のような推計解説書を、93SNAベースでも公表する予定はあるのか。
  • A.具体的にいつまでとは申し上げられないが、93SNAで変わったところもあるため、できるだけ速やかに作成・公表したいと考えている。
  • Q.93SNAの計数の発表形式は、紙、電子媒体等、どう行うのか。
  • A.紙媒体のみならず、経済研究所のホームページでも掲載する予定。
  • Q.正式な93SNAの表章形式があれば教えていただきたい。
  • A.現在もまだ検討中のものがあるため、計数の公表と同時としたい。
  • Q.「市場生産者」「非市場生産者」の区別の判断となる「経済的に意味のある価格」とは何か。
  • A.93SNAのマニュアルにも具体的に示されているわけではなく、我々も検討したが、産業の主体と同じような価格で販売しているような主体を市場生産者とみなすとか、販売コストをカバーすることなどが基準になる。
  • Q.デフレーターの連鎖指数の本格的な導入はいつか。
  • A.参考系列としている連鎖指数については、利点もあるが、内訳項目の足し上げがそのまま全体にならないといった加法性の問題等があり、本体をこちらに差し替えるのは慎重にならざるを得ない。
  • Q.産業連関表から調べればいいということもあるが、国民経済計算の観点から、ITの把握を経済企画庁でも検討してみてはいかがか。
  • A.基礎統計そのものがITに合わせて分類されているわけでもなく、なかなか難しい問題がある。ただし、皆様もご関心のある項目であるため、研究は始めたいと考えている。
  • Q.消費概念の2元化について、現実最終消費と最終消費支出はQEで両方表章するのか。
  • A.2本立てということはQE推計では行わない。最終消費支出の方が、メインの概念であり、こちらを表章することとしている。
  • Q.季節調整法X-12-ARIMAにするのか。
  • A.現在GDP速報値検討委員会の方で検討しているところであるが、93SNAの計数がまだできていないので、結論が出ていない。10月末の93SNA移行前には結論を出したい。
  • Q.個別消費支出と集合消費支出についてお伺いしたい。
  • A.個別消費支出とは、医療・教育など、支出が政府であっても個々人に便益が帰着するもの。集合消費とは、外交・防衛など、支出が政府であり、個々人に便益を帰着することができないもの。
  • Q.例年、12月のQEは上旬に発表されるが、今回は上中旬となっているのは、遅れる可能性が高いからか。また、公表日は事前に知らせてくれるのか。
  • A.可能性が高いとまでは言えないが、93SNAという大きな改訂の後の最初のQEということもあり、推計に時間がかかる恐れがある。また、QE公表日は、従来どおり1週間前に公表したい。
  • Q.80年代の分配面の計数は、支出系列と同時の発表はしないのか。雇用者所得等は間に合わないのかどうか確認したい。80年代まで遡及しないのか。
  • A.残念ながら、80年代の分配面については、ご指摘のとおり間に合わない。できるだけ早期に遡及したいと考えている。
  • Q.90年以降の支出系列の表章項目はどうなるのか。
  • A.年報ベースに対応する詳細まで出す予定。
  • Q.日本の場合、93SNAへの移行により、GDPの水準は具体的に何%ぐらい上昇するのか。また、その内訳についてはどうか。
  • A.推計作業中のため、大雑把なことしか申し上げられないが、ソフトウェアで0.5%ぐらい、社会資本の固定資本減耗で2%弱ぐらいになるのではないかと思われる。これらも確たることではない。
  • Q.QEの推計方法を解説したものは、7-9期のQE公表時にも間に合わないのか。
  • A.「QEハンドブック」に相当するものを出せるかどうかは、当方の作業状況もあり不明だが、何らかの形で情報を提供していきたいと考えている。
  • Q.国連の勧告でもあったサテライト勘定について、どのような形で位置付け、どのような形で今後本体系に組み込むことになるのか。
  • A.国連の勧告でも、サテライト、という名前どおり、本体に組み込むというものではないため、今回の我々の改訂でも年報の中に入れるということはしない。ただし、これまでも環境や介護といった勘定を試算として公表しており、今後も研究し、公表していきたい。

以上