第2回GDP速報値検討委員会議事概要

1. 日時:平成12年5月19日(金) 10:00~12:00

2. 場所:経済企画庁官房特別会議室 (729号室)

3. 出席者:

栗林 世 委員長、 新居 玄武、 大平 純彦、 中村 洋一、 西村 清彦、 舟岡 史雄、 宮川 努、 渡辺 源次郎  の各委員

貞広経済研究所長、 加藤経済研究所次長、法専総括主任研究官、奥本総括主任研究官、 浜田国民経済計算部長、嶋田企画調査課長、丸山国民支出課長 他

4. 議題:

1.民間最終消費支出の現行推計における供給側統計を用いた推計部分の拡充の可能性の検討

2.季節調整法の再検討

5. 議事内容:

議題1.民間最終消費支出の現行推計における供給側統計を用いた推計部分の拡充の可能性の検討

 浜田国民経済計算部長よりSNAの民間最終消費支出におけるパソコンの推計方法について説明。その後、自由討議。委員からの主な意見は以下のとおり。

○民間最終消費支出におけるパソコンの推計について、販売・出荷等の供給側の統計を追加する場合、各統計において家計向けの規模をどのように把握するかが問題となってくる。

○自動車やパソコン等の耐久消費財の消費動向に、サンプル換えが行われる家計調査を用いて推計するのはなじまない。

○パソコン消費の名目値の推計において、供給側からアプローチを図ることには賛成である。QEにおいては実質値の推計も重要となってくる。デフレータ―として採用している卸売物価指数(WPI)はヘドニック・アプローチを用い、質の調整を行っているが、パソコンの需要構造の大きな変化に対して上手くマッチングしているかという問題がある。数量指数によるデフレータ―の作成等も考慮してはどうか。

○デフレータ―として何を利用するかについては慎重であるべきである。ある機種の価格を追跡するのは、銘柄のスイッチの問題もあり、難しい。

○デフレータ―に関しては、ヘドニック・アプローチ以外にも、連鎖指数を作成する、銘柄変更を頻繁に行うなどの工夫が考えられる。

○現行の消費者物価指数(CPI)には、パソコンに対応するものが存在しないため、WPIをデフレーターとして採用しているが、卸売と消費者向けでは価格は異なる動きをする。CPIの平成12年基準改訂の検討状況も注視すべきであろう。

○例えばアメリカの統計では全体の出荷から企業向けと家計向けをどのような情報によって区別しているのか、参考にしてはどうか。

○日本電気大型店協会(NEBA)「家電製品小売金額」における販売店のうち、家計向け販売の高いところと低いところの色分けは可能か。一般に、郊外の店舗では家計向けが高いと思われるが、可能であれば、それを家計向け出荷数の把握に利用できないか。また、NEBA統計は大型店舗を調査対象としているが、通信販売やインターネットショッピングなど、購入形態が変化してきていることにも留意すべきである。

○前年同期比で見ると、生産統計とNEBA統計の乖離が98年以降広がっているようにみえる。家計のパソコン普及率の動きをチェックしてみる必要がある。

○生産面の統計は輸出も含んだものであり、その違いが販売統計との前年同期比の違いに反映されていると思われる。通産省「生産動態統計」など生産側の統計を使用する場合には、輸出入の調整が必要となる。

○これまでの議論では、年次推計の問題と、四半期速報推計の問題が混在している。コモディティフロー法により工業統計表を使用する年次推計の方法を前提とすれば、パソコン消費における名目値の推計方法の改善はQEのみの問題といえる。一方、デフレータ―の問題は、WPIが年次、および四半期の両推計に用いられていることから、双方の問題といえるが、QE推計に着目するのであれば、当委員会としては、名目値の推計手法に検討を絞るべきであろう。

議題2.季節調整法の再検討

 浜田国民経済計算部長より季節調整法の再検証結果について説明。その後、自由討議。委員からの主な意見は以下のとおり。

○X12-ARIMAにはいくつかのオプションが存在し、「標準」とよべるモデルがない。これをQEの季節調整法として採用する場合には、透明性を確保するためにも、統計審議会の場などで標準モデルを決めるなどガイドラインを示すことが肝要であろう。

○統計審議会の指標部会では、季節調整手法について、「統計毎に利用目的は異なるので、統計によってオプションを使い分けるべき」というガイドラインが示されている。X12-ARIMAはいってみればX11プラスα(オプション)であり、オプションをどれだけ使うかが問題となってくる。

○季節調整法の再評価を行う場合、ユーザーとしてはGDP全体の動きに興味がある。

○X12-ARIMAを採用するかどうかはオプションをどれだけ使用するかという問題なので、改善が明らかに予想される需要項目についてはそれぞれオプションを採用、そうでない場合にはオプションを使用しないといった対応が望ましい。

○現在は、確報時の年一回季調替えを行い、その他の四半期については予定季節指数が前年同期差の2分の1だけ変化するという仮定を置いている。この場合と四半期毎に季調替えを行った場合とのパフォーマンスの比較も重要である。

○今後は、統計プログラムが普及し、季節調整法として何を使用するかは各ユーザーが判断することで、原系列の公表こそが重要となるという考え方もある。

○一般的には、閏年、曜日調整を行っていない手法よりも、これらの調整を行っているというほうが安心感、信頼度が高くなる。ARIMAを採用するかどうかなど議論のあるところは除き、現在のX11による季節調整値と閏年、曜日調整のみを行ったX12によるそれとの比較を検討する必要がある。

○月次統計の場合には、一度モデルを固定すれば、相当複雑なオプションでない限り、季節調整期間を追加してもパフォーマンスは悪化しないということが経験的にいえる。

以上

 なお、本議事概要は速報のため、事後修正の可能性があります。