第5回GDP速報化検討委員会議事概要

1.日時:平成11年4月5日(火)10:00~12:00

2.場所:経済企画庁官房会議室(729)

3.出席者:

栗林 世委員長、新居 玄武、外山 洋子、中村 洋一、西村 清彦、舟岡 史雄、西山 茂、宮川 努、渡辺 源次郎 の各委員

貞広経済研究所長、安原経済研究所次長、加藤総括主任研究官、土肥原国民経済計算部長、大脇企画調査課長、豊田国民支出課長 他

4.議題:

①物的アプローチによる総固定資本形成の推計について

②暫定推計値(仮称)の公表時期と代替推計及び表章形式について

③報告書スケルトン(案)について

5.議事内容:

(1)土肥原国民経済計算部長より議題①について説明。その後、自由討議。委員からの主な意見は以下の通り。

  • コモディティーフロー法を用いた物的アプローチにより総固定資本形成を推計しているが、コモ法は1年以上の期間を推計の対象とするのに適している手法であり、四半期の推計にそのまま適用するには困難がある。その意味で、建築着工統計等人的推計の要素を含めた「簡易推計」をフルに利用するほうが優れている。但し、「簡易推計」では、機械投資について通産省の資本財出荷指数1本で推計を行っているが、より詳細な品目分けを行うなどして推計する方が望ましい。

  • 機械投資について、簡易推計で粗く推計した場合と、詳細に推計した場合でどれほど違いがあるか確認するべきではないか。

  • 試算結果については、暫定値と1次QEの開差がかなりある。両推計法では資本形成の推計のための基礎的情報が違うので、これは当たり前のことであるが、公表の際には留意が必要である。問題は、暫定値の公表の仕方にあり、1ヶ月10日程度で暫定値を出す場合に、一次QEと推計アプローチが違うということをどのようなロジックで説明するかという問題がある。

  • 固定資本形成について、現行QEも従来の人的推計から物的推計に変えることは、次の基準改訂時や93SNA移行時に併せてという形であれば可能だが、中間年次の時点で変えることができるかどうかは(継続性の観点等から)疑問。

  • コモ法を用いた物的アプローチによる総固定資本形成の推計は、建設業の付加価値の伸びを考慮したものと、考慮しないものとを推計しているが、建設投資では付加価値が約5割を占めており、建設業の付加価値を構成する雇用者所得などの項目毎の伸びを加味したほうがよいのではないか。

    暫定値と1次QEの開差の大きさそれ自体よりも、暫定値と1次QEで符号がプラスからマイナス、マイナスからプラスになるということのほうが影響が大きい。符号が変わるというのは、経済の判断資料としての信頼性に関わる。

(2)議題②について土肥原国民経済計算部長より説明。その後。自由討議。委員からの主な意見は以下の通り。

  • 表章形式については、いくつかの代替案が考えられる。例えば、民間最終消費支出と政府最終消費支出は同じ「最終消費支出」という項目で括るのではなく、民間最終消費支出、国内総資本形成、政府最終消費支出、財貨・サービスの純輸出とした上で、固定資本形成と在庫品増加についても国内総資本形成に一本化するという案もある。

  • 民需、公需、外需という3つの括りで国民経済の動きが捉えられれば十分と考える。公的需要の推計精度に問題があるのであれば、その旨をきちんと説明した上で公表することが望ましい。

(3)議題③について土肥原国民経済計算部長より説明。その後。自由討議。委員からの主な意見は以下の通り。

  • 暫定値のプレゼンテーションの仕方として、あくまで「暫定的な推計値」という性格を強調するのであれば、細項目まで公表できないのは当然である。民間最終消費支出、国内総資本形成、財貨・サービスの純輸出があれば、経済のアウトラインは分かると考えられる。一方、現行QEの「早期推計システム」としての性格を強調するのであれば、ある程度詳細に公表していくほうが望ましい。

  • 暫定推計の結果は、総固定資本形成の推計方法に未だ改善の余地があるが、基本的には「早期推計」というイメージで考えていいのではないか。

    報告書の全体のトーンとしては、「早期推計」ということを強調したほうがよい。その上で、早期化の問題点(法人季報の公表時期等)を整理し、推計担当部局として採りうる最善の手法という形で暫定推計の手法を記述するのが適当ではないか。

  • 民間の利用者サイドからすると、全ての情報が含まれていなくても、足下の経済状況を把握できるだけの情報があればよいと考える。

  • カナダ統計局のコメントでもあったが、早期化した数値のみを公表するのではなく、データの信頼性に対するコメントを付すべきではないか。

  • 公的部門の推計に関して、政府の予算執行状況はどのタイミングで把握できるのか。同じ政府内の問題であるので、早期に入手することは不可能か。

  • 報告書で海外の推計方法について触れるのであれば、データに基づく記述が求められる。例えば、当該四半期終了後1ヶ月程度で公表を行う米国や英国については、その後の改訂スケジュールについても触れるべき。また我が国と諸外国の総固定資本形成の推計アプローチが違うことについても何らかのスタンス、評価が必要と考える。我が国では推計体制として人員面が劣るというのであれば、具体的に比較表などを示すべきではないか。

以上

なお、本議事概要は速報のため、事後修正の可能性がありえます。