平成16年度調査:企業行動に関するアンケート調査(平成17年(2005年)4月28日公表)                         「日本企業の人材活用・賃金体系の現状と今後」 Annual Survey of Corporate Behaviors

調査の背景

日本経済は、バブル崩壊後に長期間低迷し、企業は長きにわたって過剰雇用を抱えるようになった。そうした中、企業の人的資源管理のあり方にも変化が生じた。企業は社員を解雇するようになり、正社員・正職員を減らし、パートタイマー、契約社員、派遣労働者等の非正社員・非正職員で置き換えるようになった。また、正社員・正職員の採用についても学卒新規採用を抑え、中途採用を重視するようになった。これら解雇や雇用形態、採用方針の変化とあわせ、企業は内部における人材活用・育成の方針や処遇・賃金制度、人事考課の方法なども見直すようになった。

こうした人材活用・賃金体系の状況については、平成11年度に「収益改善努力とリストラの今後」として詳細な調査を行ったが、その後5年が経過し、その間にも前述のような変化が引き続き進んでいる。また、最近では企業の雇用過剰感はかなり緩和されている。このように、変化の一層の進展の後、新しい動きも見られる現在、企業が人材活用・賃金体系についてどのように考え、どのように見通しているのかを、今回の「企業行動に関するアンケート調査」で把握することとした。

今回の調査では、従来からの調査を継承して、我が国の企業の経営環境と経営基本方針を調査し(第1章)、「人的資源の現状と今後」(第2章)、「人材育成・確保の現状と今後」(第3章)、「賃金体系の現状と今後」(第4章)において、リストラ等の施策による5年間の人材の状況・効果・今後の方針、社内の人材の能力向上及び社外の人材の利活用状況、人材を有効活用するための能力・成果・貢献度を反映させた賃金制度の導入といった賃金制度の見直し状況及び今後の方針について調査した。

調査要領

調査時期
平成17年1月
調査事項
1.経営環境と経営基本方針、2.人的資源の現状と今後、3.人材育成・確保の現状と今後、4.賃金体系の現状と今後
調査対象
東京、大阪、名古屋の証券取引所第1部及び第2部上場企業(2,512社)
調査方法
所定の調査票による郵送・自計申告方式
回答企業数
1,031社(製造業561社、非製造業470社)
回答率
41.0%

調査結果のポイント

  1. 予想成長率は昨年度調査と同水準,設備投資は改善,雇用者数は増加へ

    企業が予想する実質経済成長率は、単年度の見通しで1.4%、今後3年間(平成17-19年度)では1.5%(年度平均)、今後5年間(平成17-21年度)では1.6%(年度平均)となった。単年度、今後3年間、今後5年間すべての予想成長率が昨年度調査と同水準となった。

    設備投資は、今後3年間の年度平均伸び率が全産業平均で4.7%となり、前回調査の3.1%から伸び率が増加した。

    今後3年間の雇用者数は12年ぶりに増加するとの見通しとなった。

    海外現地生産(生産高)比率は、製造業全体でみると平成14年度実績13.2%から、15年度実績13.1%と若干低下した。ただし、16年度実績見込みは14.0%、21年度見通しは16.7%と先行きの見通しは依然上昇傾向にある。

    輸出企業の採算円レートは、102.6円/ドルとこれまでで最も円高の水準となった。

  2. 契約社員、パートタイム・アルバイトの割合の上昇テンポは鈍化

    最も雇用の過剰感、不足感があるのはどの分野かをみると、「営業・マーケティング」、「研究開発」で不足感が過剰感を上回り、「生産」、「人事経理財務」、「情報システム」で過剰感が不足感を上回った。

    年齢層をみると、「20歳代以下」、「30歳代」、「40歳代」では不足感が過剰感を上回り、「50歳代以上」では過剰感が不足感を上回っている。

    過去3年間に雇用者数が最も増加した分野の雇用形態別構成比と減少した分野の雇用形態別構成比の差及び今後3年間に雇用者数を最も増加させる分野の雇用形態別構成比と減少させる分野の雇用形態別構成比の差をみると、「契約社員」の過去3年間は12.7%ポイント、今後3年間は4.6%ポイント、「パートタイム・アルバイト」の過去3年間は7.4%ポイント、今後3年間は1.5%ポイントとプラス、「正社員・正職員」の過去3年間は−20.2%ポイント、今後3年間は−6.1%ポイントとマイナスとなっている。雇用者に占める契約社員及びパートタイム・アルバイトなどの非正社員・非正職員の割合は引き続き高まるものの、その上昇テンポは鈍化する見通しとなっている。

  3. 増える中途採用

    過去5年間に正社員・正職員の中途採用者の割合が「上昇した」と回答した企業の割合から「低下した」と回答した企業の割合を引いた値で見ると、全産業で43.1%ポイントとなっており、正社員・正職員に占める中途採用者の割合は上昇している。今後5年間では50.3%ポイントとなっており、更に上昇する見通しとなっている。

  4. 同年代での賃金格差が拡大,賃金の年功的要素は弱まる

    40歳代の雇用者の平均賃金を100とした場合の年齢層別の最高賃金、最低賃金をみると、年齢層が高くなるにつれ最高賃金、最低賃金とも高くなっており、年功型賃金となっている。この傾向は前回の平成11年度調査でも同様であったが、各年齢層とも最高賃金が上昇し、最低賃金は低下しており、この5年間に最高賃金と最低賃金の差は拡大している。最高賃金の上昇幅は「30歳代以下」で3.0%(伸び率は2.9%)と大きく、「50歳代以上」で1.3%(伸び率は1.0%)と小さい。また、最低賃金の低下幅は「30歳代以下」で−2.9%(伸び率は−4.5%)と小さく、「50歳代以上」で−5.5%(伸び率は−6.4%)と大きい。このように各年齢層間の最高・最低賃金の差は縮小しており、賃金の年功的要素は弱まっている。

  5. 成果主義的賃金制度を導入している企業では賃金格差の拡大テンポが速い

    成果主義的賃金の割合が50%以上の企業と全回答企業とで、年齢層別に企業内の賃金格差(最高賃金÷最低賃金、倍)を比べてみると、「30歳代以下」では、全回答企業で平成11年度の1.57倍から16年度の1.69倍へと0.12倍の上昇、成果主義的賃金の割合が50%以上の企業で11年度の1.70倍から16年度の1.91倍へと0.21倍の上昇となっている。「40歳代」では、全回答企業で11年度の1.52倍から16年度の1.66倍へと0.14倍の上昇、成果主義的賃金の割合が50%以上の企業で11年度の1.64倍から16年度の1.85倍へと0.21倍の上昇となっている。「50歳代以上」では、全回答企業で11年度の1.50倍から16年度の1.62倍へと0.12倍の上昇、成果主義的賃金の割合が50%以上の企業で11年度の1.63倍から16年度の1.80倍へと0.17倍の上昇となっており、いずれの年齢層においても、成果主義的賃金の割合が50%以上の企業の方が全回答企業よりも、11年度から16年度の5年間における賃金格差の拡大テンポが速くなっている。

結果の概要

  1. 経営環境と経営基本方針

    (1)実質経済成長率の見通し(平成17年度1.4%、今後3年間1.5%、今後5年間1.6%)

    我が国企業は、平成17年度の実質経済成長率について、全産業平均で1.4%を見込んでいる。中期的な見通しについては、今後3年間(平成17~19年度)では1.5%(年度平均)、今後5年間(平成17~21年度)では1.6%(年度平均)を見込んでいる。単年度、今後3年間、今後5年間ともに予想成長率が昨年度調査と同水準となった(第1-1-1図)。名目成長率については、平成17年度は0.9%、今後3年間は1.2%、今後5年間は1.4%と予想しており、すべての期間で実質成長率を下回ったが、乖離幅は縮小していく見通しとなっている(第1-1-1表)

    (2)輸出企業の採算円レート(これまでで最も円高の水準に)

    輸出企業の採算円レートは102.6円/ドルと前回調査の105.9円/ドルから上昇した。業種別でみると、製造業、非製造業ともに採算円レートを調査直前の円レートより円高に設定している。資本金別では、資本金10億円未満、10億円以上50億円未満の企業の採算円レートが調査直前の円レートと同水準となっている(第1-2-2図)

    (3)今後1年間の平均仕入価格と平均販売価格(仕入価格は上昇)

    今後1年間の平均仕入価格と平均販売価格の変化については、製造業全体で平均仕入価格が2.7%の上昇、平均販売価格が0.4%の低下を見込んでいる。業種別にみると、平均仕入価格については素材型業種で3.3%の上昇、加工型業種で2.0%の上昇、その他製造業で3.1%の上昇となった。平均販売価格については加工型業種で1.5%の低下、その他製造業で0.1%の低下となったが、素材型業種で0.8%の上昇となった(第1-3-1図)

    (4)設備投資の見通し(今後3年間は伸びが高まる見通し)

    今後3年間の設備投資の年度平均伸び率は全産業平均で4.7%(製造業5.2%、非製造業4.1%)と前回調査の3.1%(製造業3.0%、非製造業3.2%)から伸び率が増加した(第1-4-1図)

    業種別にみると、回答企業が5社に満たない業種を除く28業種のうち、27業種がプラス、「情報・通信業」の1業種でマイナスとなっている(第1-4-2図)

    (5)雇用者数の動向(今後3年間は増加に転ずる見通し)

    雇用者数の変化は、過去3年間では年度平均1.8%減(製造業2.4%減、非製造業1.1%減)で、マイナス幅が前回調査から縮小した。今後3年間では同0.8%増(製造業0.4%増、非製造業1.4%増)とプラスに転じる見通しとなっている(第1-5-1図)

    (6)海外現地生産(引き続き上昇する見通し)

    海外現地生産比率は、製造業全体でみると平成14年度実績13.2%から、15年度実績13.1%と若干低下した後、16年度実績見込み14.0%、21年度見通しは16.7%と再び上昇する見通しとなっている。業種別でみると、加工型業種が高く、その他の製造業が低くなっている(第1-6-2図)

  2. 人的資源の現状と今後

    (1)雇用の過不足感

    最も雇用の過剰感、不足感がある分野の事業合計をみると、「営業・マーケティング」、「研究開発」は不足感が過剰感を上回り、「生産」、「人事経理財務」、「情報システム」は過剰感が不足感を上回っている(第2-2-5図)。最も雇用の過剰感のある分野、不足感のある分野について年齢層をみると、「20歳代以下」、「30歳代」、「40歳代」は不足感が過剰感を上回り、「50歳代以上」は過剰感が不足感を上回っている(第2-2-6図)。雇用形態をみると、「契約社員」、「パートタイム・アルバイト」は不足感が過剰感を上回り、「正社員・正職員」は過剰感が不足感を上回っている(第2-2-8図)

    (2)雇用の創出・喪失状況

    過去3年間に雇用者数が最も増加した分野の雇用形態別構成比と減少した分野の雇用形態別構成比の差及び今後3年間に雇用者数を最も増加させる分野の雇用形態別構成比と減少させる分野の雇用形態別構成比の差を見ると、平成11年度、16年度ともに「契約社員」、「パートタイム・アルバイト」でプラス、「正社員・正職員」でマイナスと同じ傾向となっているが、平成11年度の過去3年間、今後3年間、16年度の過去3年間で「正社員・正職員」のマイナス幅が拡大となっていたのが、今後3年間ではマイナス幅が縮小となっている(第2-3-3(3)図)

  3. 人材育成・確保の現状と今後

    (1)雇用者の年齢構成の理想と現状

    会社全体での40歳代の雇用者数を100とした場合の年齢層別雇用者数の理想と現状について業況別にみると、「良い」と回答した企業、「悪い」と回答した企業ともに「30歳代以下」では現状が理想を下回っており、「50歳代以上」では現状が理想を上回っている。ただし、「良い」と回答した企業の方が「悪い」と回答した企業より理想と現状の乖離幅が小さくなっている(第3-1-2表)

    (2)重視する技能

    重視する技能の現状をみると、平成11年度と同様に「職能特化型の技能(職種の専門技能)」の重要度が最も高く、「職種・事業を問わない汎用的な技能」の重要度が最も低くなっている。今後については、「職能特化型の技能(職種の専門技能)」の重要度は依然として最も高く、「企業特化型の技能(企業特有の技能・内部調整等)」の重要度が低下、「事業特化型の技能(製品・サービス・業界構造の知識等)」の重要度が上昇する見通しとなっている(第3-2-2表)

    (3)中途採用の状況(今後更に増加の見通し)

    過去5年間に正社員・正職員の中途採用者の割合が「上昇した」と回答した企業の割合から「低下した」と回答した企業の割合を引いた値をみると、全産業で43.1%ポイントとなっており、正社員・正職員に占める中途採用者の割合は上昇している。今後5年間では50.3%ポイントとなっており、更に上昇する見通しとなっている。業種別にみると「加工型業種」が高くなっている(第3-3-1図)

  4. 賃金体系の現状と今後

    (1)年齢層別の最高賃金・最低賃金(同年代では賃金格差拡大、賃金の年功的要素は弱まる)

    40歳代の雇用者の平均賃金を100とした場合の年齢層別の最高賃金、最低賃金をみると、年齢層が高くなるにつれ最高賃金、最低賃金とも高くなっており、年功型賃金となっている。この傾向は前回の平成11年度調査でも同様であったが、各年齢層とも最高賃金が上昇し、最低賃金は低下しており、この5年間に最高賃金と最低賃金の差は拡大している。最高賃金の上昇幅は「30歳代以下」で3.0%(伸び率は2.9%)と大きく、「50歳代以上」で1.3%(伸び率は1.0%)と小さい。また、最低賃金の低下幅は「30歳代以下」では−2.9%(伸び率は−4.5%)であるのに対し、「50歳代以上」では−5.5%(伸び率は−6.4%)と「30歳代以下」に比べて大きい。このように年齢層間の最高・最低賃金の差は縮小しており、賃金の年功的要素は弱まっている(第4-1-1図)

    (2)成果等を反映させた賃金制度の導入状況

    成果主義的賃金制度を導入している企業の割合は「管理的職業従事者」(79.8%)、「営業従事者」(76.6%)、「専門的・技術的職業従事者」(75.0%)、「販売従事者」(73.2%) 、「事務従事者」(71.0%)、「生産工程・労務作業者」(64.5%) 、「その他」(59.7%)となっている(第4-2-1図)。資本金階級別にみると、成果主義的賃金制度を導入している企業の割合は、資本金階級の大きい企業の方が高くなっている(第4-2-2図)

    (3)成果等を反映させた賃金制度の考課

    成果主義的賃金制度を導入している企業のうち考課制度を導入している割合は、「目標管理制度」が91.3%、「自己申告・面談制度」が90.4%と比較的高くなっている。一方「多面評価制度」は32.8%と他の考課制度と比較してかなり低くなっている(第4-3-1図)

    (4)成果等を反映させた賃金の割合(更に上昇の見通し)

    成果主義的賃金の賃金総額に占める割合についてみると、業種、資本金階級にかかわらず、いずれも今後上昇する見通しとなっている(第4-4-1図)

    (5)成果主義的賃金制度の導入と最高賃金・最低賃金(導入企業で速い賃金格差の拡大テンポ)

    成果主義的賃金の割合が50%以上の企業と全回答企業とで、企業内の最高賃金と最高賃金の賃金格差(最高賃金÷最低賃金、倍)を比べてみると、「30歳代以下」では、全回答企業で平成11年度の1.57倍から16年度の1.69倍へと0.12倍の上昇、成果主義的賃金の割合が50%以上の企業で11年度の1.70倍から16年度の1.91倍へと0.21倍の上昇となっている(第4-6-1図)

    「40歳代」では、全回答企業で11年度の1.52倍から16年度の1.66倍へと0.14倍の上昇、成果主義的賃金の割合が50%以上の企業で11年度の1.64倍から16年度の1.85倍へと0.21倍の上昇となっている(第4-6-2図)

    「50歳代以上」では、全回答企業で11年度の1.50倍から16年度の1.62倍へと0.12倍の上昇、成果主義的賃金の割合が50%以上の企業で11年度の1.63倍から16年度の1.80倍へと0.17倍の上昇となっている(第4-6-3図)

    いずれの年齢層においても、成果主義的賃金の割合が50%以上の企業の方が全回答企業よりも、11年度から16年度の5年間における賃金格差の拡大テンポが速くなっている。


    (注)賃金格差(倍)=[40歳代の雇用者の平均賃金を100とした場合の最高賃金の平均]÷[40歳代の雇用者の平均賃金を100とした場合の最低賃金の平均]

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