経済分析について

1.『経済分析』について

内閣府経済社会総合研究所では、マクロ経済の分析、生産性向上・成長力強化へ向けた研究、財政・金融政策の効果分析など、国内外の政策課題を始めとする経済社会の重要な問題について経済学的な視点から実証的に分析した論文を中心に掲載する学術誌として、編集委員(PDF形式:87.4KB)PDFを別ウィンドウで開きますの助言の下、『経済分析』を発行しています。

『経済分析』は、論文投稿を随時受け付けており、審査の上、掲載が相応しいと判断した投稿論文を掲載しています。『経済分析』は投稿論文のみで構成する「ジャーナル号」とともに、特集テーマに沿って有識者が執筆した論文で構成する「企画編集号」、経済社会総合研究所の研究成果をまとめた「特別編集号」、有識者による責任編集の下に関連分野の有識者が執筆した論文で構成する「責任編集号」からなります。可能な限り迅速に掲載するとの観点から、採択された投稿論文は「ジャーナル号」以外の号でも随時掲載しています。

いずれの場合も、掲載論文等は、すべて執筆者個人の見解として、その責任において執筆されており、政府や内閣府、経済社会総合研究所の公式見解を示すものではありません。

2.投稿論文について

『経済分析』では、論文の投稿を広く受け付けています。

投稿論文の採否については、デスク・リジェクションの場合を除き、編集委員会が関連分野を専門とする複数の査読者に審査を依頼し、その結果を踏まえた編集委員会の判断に基づいて、編集長である経済社会総合研究所長が決定します。

審査においては、論文の学術的な意義が大きいこと、政策の在り方に重要な示唆を与えることを重視しています。仮に投稿の時点でそうした条件を満たしていなくても、修正を加えることでそうした条件を満たすことが見込まれる論文については、修正意見を通じて『経済分析』に相応しくすることを目指しています。そのため、若手研究者や官庁エコノミスト、民間エコノミスト、あるいはこれらを目指す方からの投稿も歓迎します。

なお、投稿論文の採否の決定までの期間の目安は以下の通りです。
(1)デスク・リジェクションの場合:投稿から連絡まで2週間程度
(2)採択の場合:投稿から採択決定まで1年程度(修正意見に対する再提出までの期限は3か月としています。)
(3)採択率は、最近10年間で約20%となっています。

投稿方法につきましては、投稿要綱 / Economic Analysis: Guidelines for Authors をご確認ください。

3.最新の『経済分析』について

(1)最新の出版号

『経済分析』第209号(企画編集号)「DXの効果及びデータ資産の定量的把握と政府の役割」

発行日: 2024年3月 刊行

経済分析 最新の公表 要旨

※ 経済分析 第209号 全文はこちらからご覧いただけます。

(総論)
デジタル化の経済学~計測問題とスピルオーヴァー効果を中心として~
宮川 努(学習院大学経済学部教授)
(論文)
データの資本としての記録方法について~2025SNA(仮称)に向けた国民経済計算における試算~
河野 陽介(内閣府経済社会総合研究所政策調査員)
吉本 尚史(内閣府経済社会総合研究所研究官)
デジタル時代における組織能力とその醸成~組織プロセスの中でのデータの価値転換~
平井 祐理(立命館大学スポーツ健康科学部准教授)
立本 博文(筑波大学ビジネスサイエンス系教授)
生稲 史彦(中央大学戦略経営研究科教授)
渡部 俊也(東京大学未来ビジョン研究センター教授)
パーソナルデータの経済価値~把握の困難性と個人の認識~
高口 鉄平(静岡大学学術院情報学領域教授)
ICT投資が生産性に与える効果~ミクロデータに基づく検討~
滝澤 美帆(学習院大学経済学部経済学科教授)
宮川 大介(早稲田大学商学部教授)
マネジメントや組織がデジタル技術の利活用に与える影響
大山 睦(一橋大学イノベーション研究センター教授)
デジタル化と制度変化と政府の役割~取引費用経済学と新制度経済学からのアプローチ~
篠﨑 彰彦(九州大学大学院経済学研究院教授)
電子政府・電子自治体DXと経済効果~地方自治体におけるDXの経済効果推計試論~
野田 哲夫(島根大学法文学部教授)

(2)出版前の採択論文

採択された最新の投稿論文は以下のとおりです。掲載号が刊行された後は該当のページに掲載します。

津波防災地域づくりが地価に与える影響について(PDF形式:1.17MB、令和7年2月掲載)

東京大学不動産イノベーション研究センター(CREI)特任研究員
(前国土交通省国土交通政策研究所総括主任研究官)/田中和氏

(要旨)

 東日本大震災を教訓として2011年12月に成立した津波防災地域づくりに関する法律は、2023年9月時点で、最大津波の災害リスクを示す津波浸水想定が40都道府県において公表されたが、警戒避難体制を強化するための津波災害警戒区域は、地価下落等の懸念等から26都道府県にとどまっている。最初に同制度を活用した徳島県と高知県の津波浸水想定の区域内の地価公示について、two-way固定効果モデルによるDID推計を行ったところ、津波災害警戒区域の指定による地価の下落は有意に確認できず、むしろプラスの効果が確認された。プラスの効果については、高知県の最大津波の懸念による地価下落の影響により推計結果に歪みが生じている懸念が排除できないものの、津波災害警戒区域は、防災政策の促進を図るための政策区域であるため、地域の安全性が高まったことにより、地価の下落傾向が抑えられた可能性があると考えられる。また、津波避難ビルや津波避難タワーの効果を検証したところ、周辺の地価に2.4%プラスの影響を与えるという結果が得られた。

JEL Classification Codes: R14, R52, H43

Keywords: 津波災害リスク、地価、ハザードマップ

DOIDigital Object Identifier):
https://doi.org/10.60294/keizaibunseki.210_a

DOIDigital Object Identifier

合併か経営統合か~地方銀行を対象とした分析~(PDF形式:953KB、令和7年2月掲載)

上智大学経済学部教授/中里 透

(要旨)

 低金利環境の継続による収益力の低下と人口減少に伴う顧客基盤の縮小をうけて、地方銀行はこれまで以上に効率的な経営を求められるようになり、こうしたもとで、ここ数年、合併や経営統合の動きが進展してきた。このことを踏まえ、本稿では2004年度から2018年度までの期間を対象に、地方銀行各行のデータを利用して、合併と経営統合が収益力の向上と経費節減にどのような効果をもたらしたのかについて実証分析を行う。パネルデータを利用した推定によれば、(1)持ち株会社方式による経営統合については、統合後に経費率(コアOHR)の低下と収益率(コアROA)の上昇がみられ、経営統合に一定の効果があることが認められること、(2)合併については明確な効率化の効果がみられず、むしろ合併前にコアOHRの上昇が生じていること、(3)経営統合の効果は経費の節減によるものであることなどが確認された。地方銀行の経営の効率化については、合併だけでなく幅広い選択肢のもとで、収益力の向上と経費節減に向けた取り組みが進められていくことが望まれる。

JEL Classification Codes: G21,G28,G34

Keywords: 地方銀行、合併、経営統合、再編効果

DOIDigital Object Identifier):
https://doi.org/10.60294/keizaibunseki.210_b

DOIDigital Object Identifier

4.御質問・御意見

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