経済分析第202号経済分析第202号(特別編集号)

令和3年6月
(エディトリアル)
Final Reports of Working-Group for the Sustainability of Security of the People and Related System after 2025 in Japan.
(2025年以降に向けた国民の安心と関連制度の持続可能性に関する研究)
山重 慎二(一橋大学大学院経済学研究科および国際・公共政策大学院教授)
(論文)
Part 1: Strengthening Healthcare and Long-Term Care Sector
Considerations Regarding Work System Reform in the Situation of Uneven Distribution of Doctors
(医師の偏在の実態から働き方改革を考える)
高橋 泰(国際医療福祉大学大学院医療経営分野教授)
Effects of Local Physician Concentrations on Physician Labor Supply and Career Trajectories: Evidence from Longitudinal Microdata in Japan
(地域における医師密度が医師の診療に対する労働供給とキャリアに及ぼす影響に関する実証分析)
水島 裕二(早稲田大学大学院経済学研究科)
野口 晴子(早稲田大学政治経済学術院教授)
川村 顕(早稲田大学政治経済学術院教授、神奈川県立保健福祉大学大学院 ヘルスイノベーション研究科教授)
Aging and Wages of Long-term Care Workers: A Case Study of Japan, 2002-2017
(高齢化と介護労働者の賃金:2002-2017年)
山田 篤裕(慶應義塾大学経済学部教授)
石井 加代子(慶應義塾大学経済学部特任准教授)
Population Aging and the Impact on Industrial Structure in Japan from a Multi-Sector OLG-CGE Model Perspective
(人口高齢化による医療介護需要の増加と産業構造への影響:多部門世代重複モデルによる動学的応用一般均衡分析)
木村 真(兵庫県立大学大学院シミュレーション学研究科教授)
Part 2: Strengthening Families and Workforce
The Effects of Providing Childcare on Grandmothers’ Employment and Mental Health in Japan
(日本で孫の育児が祖母の就業とメンタルヘルスに及ぼす影響)
上野 有子(内閣府政策統括官(経済財政分析担当)付参事官(海外担当))
臼井 恵美子(一橋大学経済研究所教授)
An Analysis of the Labor Supply of Childcare Providers
(保育士の処遇改善と労働供給)
朝井 友紀子(シカゴ大学ハリス公共政策大学院研究員、早稲田大学組織経済実証研究所招聘研究員)
地曵 暁瑛(シカゴ大学ハリス公共政策大学院修士課程)
Households’ Responses to Childcare Fees: Childcare Usage and Parental Labor Supply
(保育料が保育所利用と親の就業に与える影響)
深井 太洋(内閣府経済社会総合研究所研究官)
近藤 絢子(東京大学社会科学研究所教授)
Endogenous Fertility and Social Security
(出生率内生化モデルと社会保障)
安岡 匡也(関西学院大学経済学部教授)
Foreign Workers, Skill Premium and Fiscal Sustainability in Japan
(外国人労働者、スキルプレミアムと財政の持続可能性)
北尾 早霧(経済産業研究所上席研究員、東京大学大学院経済学研究科教授)
山田 知明(明治大学商学部専任教授)
Part 3: International Perspective
Increasing the Sustainability of Long-term Care in an Ageing Society: Lessons from the Netherlands
Frederik T. SCHUT(エラスムス・ロッテルダム大学教授)
A Cross-National Snapshot of Family Policy and Women’s Economic Participation
Willem ADEMA(OECD社会政策シニア・エコノミスト)
Making Japanese Society More Resilient: To Improve Sustainability of Social Security in Japan
(日本社会の強靭化 〜社会保障の持続可能性を高めるために〜)
山重 慎二(一橋大学大学院経済学研究科および国際・公共政策大学院教授)

研究報告会と経済社会総合研究所の概要


(要旨)

(論文)

Considerations Regarding Work System Reform in the Situation of Uneven Distribution of Doctors
(医師の偏在の実態から働き方改革を考える)

国際医療福祉大学大学院医療経営分野教授/高橋 泰

2004 年から始まった新臨床研修制度の影響でワークライフバランスを考える若手医師が急増した。この状態が 15 年以上放置された結果、医師の地域偏在と診療科偏在が進んだ。今回の研究の目的は、どのように医師偏在が進んだかを明らかにし、その結果を踏まえて2024年開始の医師の働き方改革の影響を考察することである。

本研究では、1996年から2016年の「医師・歯科医師・薬剤師調査」の個票データを用い、診療科名称や地域区分の変更に対応するためのデータ加工を施すことにより、性別、年齢階級別、診療科別、勤務地域別、勤務場所(病院/診療所)別の医師数がどのように推移したかを算出し、過去20年の医師集団の構成の変化を明らかにした。

その結果、(1)1996年から2016年にかけて総医師数は33%増えているが、40歳以下の医師は増えておらず、主に50歳以上の医師の増加による。(2)30歳代の若手医師が過疎地での勤務を行わなくなってきていること、(3)若手男性医師が外科系の診療科を選択しなくなってきていることが顕著であること等が明らかになった。

2024 年度より始まる働き方改革で影響を受けるのは主に大学病院や地域の基幹病院で勤務する外科、救急、後期研修医である。その結果発生することが予測される事態は、(1)夜間診察してくれる医療機関の大幅な減少、(2)癌など手術や検査までの待ちの期間の大幅延長などである。この状態を回避するには、逆説的であるが、働き方改革は進めること、医療のDX化やチーム制の推進などの現場での医療の生産性を高めること、地域における外科や救急の集約化などの改革を、外科と救急を中心に急速に進める必要がある。

JEL Classification Codes: I11, I14, I18

Keywords: 医師の偏在、時系列分析、働き方改革


Effects of Local Physician Concentrations on Physician Labor Supply and Career Trajectories: Evidence from Longitudinal Microdata in Japan
(地域における医師密度が医師の診療に対する労働供給とキャリアに及ぼす影響に関する実証分析)

早稲田大学大学院経済学研究科/水島 裕二

早稲田大学政治経済学術院教授/野口 晴子

早稲田大学政治経済学術院教授、神奈川県立保健福祉大学大学院 ヘルスイノベーション研究科教授/川村 顕

地域における医師密度が現職医師の労働供給に対して与える影響は、所得効果と代替効果の相対的な大きさに依存する可能性がある。本研究では、日本の国民皆保険制度における診療報酬制度の下、医師が地域内での医師密度を代理変数とする「競争」に対してどのように反応するかについて実証的な検証を行った。結果、地域での医師密度により、専門分野の標ぼう数を減らしたり、キャリアを変更したり、あるいは、現場での診療から離れたりといった選択をして、労働力供給を抑制する傾向にあることが示唆された。こうした傾向は、とりわけ、地方での診療を行う内科医に顕著な傾向であった。

JEL Classification Codes: J01, J22, I11

Keywords: 医師の労働供給、所得効果、代替効果、空間的競争、機械学習


Aging and Wages of Long-term Care Workers: A Case Study of Japan, 2002-2017
(高齢化と介護労働者の賃金:2002-2017年)

慶應義塾大学経済学部教授/山田 篤裕

慶應義塾大学経済学部特任准教授/石井 加代子

本研究では、2002年から2017年までの4回の調査年ごとに約100万人を対象とした「就業構造基本調査」を用い、介護労働者の基本的な特徴、離職理由、他職種・他産業間の労働移動を明らかにし、各地域における介護労働者の適正な賃金水準を明らかにした。

その結果、主に4つの知見が得られた。まず、男性介護労働者の割合は過去15年で増加しており、2017年には20%に達し、OECD加盟国の中では最も高い。また、介護労働者の勤続年数の中央値は5年ごとに約1年ずつ上昇している。しかし、60歳以上の女性介護労働者は同期間に12倍に増加しており、介護労働者の高齢化が急速に進んでいる。

第二に、男性介護労働者の離職の主な理由は「低賃金」であり、女性の場合は「高齢」が主な理由である。高齢化・退職する女性介護労働者を代替するには、男性介護労働者の供給を促進し、離職率を低下させるための賃金引き上げが必要である。

第三に、介護労働者の多くは同一業種、すなわち「医療・福祉業」の中を行き来している。しかし、「卸売・小売業」、「製造業」、「宿泊・飲食業」は、介護労働者の流出先として最も多い業種であり、介護労働者にとっての「競合産業」といえる。

最後に、高齢化が進んでいる都道府県ほど、医療・福祉業従事者比率は高いが、賃金率は低い。特に、高齢化が進んでいない地域の男性介護労働者の賃金の低さは顕著である。

JEL Classification Codes: J31, J48, J62

Keywords: 介護保険、介護労働者、地域区分毎の単価、地域間賃金格差


Population Aging and the Impact on Industrial Structure in Japan from a Multi-Sector OLG-CGE Model Perspective
(人口高齢化による医療介護需要の増加と産業構造への影響:多部門世代重複モデルによる動学的応用一般均衡分析)

兵庫県立大学大学院シミュレーション学研究科教授/木村 真

人口高齢化がもたらす大きな影響の一つが医療・介護需要の増大である。予想される医療介護需要の増大に対し、社会保障の面からは給付と負担のバランスをいかにとるのかが課題となっている。また、医療や介護を一つの産業としてみた場合、医療介護産業は労働集約的な産業であり、需要の増大に応えられるだけの労働力を確保できるのかが課題となっている。医療・介護需要の増大による社会保障負担の増加で経済成長は落ちるのか。それとも、需要の増加が成長エンジンとなり、そのプラスの影響が他の産業に波及することで経済成長が促進されるのか。また、人口減少により希少な労働力が医療介護産業に集中すれば、他産業にどのような影響が及ぶのか。これらの疑問に答えるため、本稿では多部門世代重複モデル(Multi-sector OLG model)を構築し、これを用いて分析した。分析の結果、医療・介護需要の増大は成長を鈍化させることが示された。また、短期的にはB to C産業でプラスの効果が見られるが、長期的には高齢化に財政再建の効果が加わって、教育産業と不動産業、B to B産業や建設業などが負の影響を受けることが示された。最後に、政府の機械的試算では人材確保に際して他産業との間で競争となる部分が加味されていないため、本研究に比べて就業者数の見込みが高めに出ることが示された。

JEL Classification Codes: C67, C68, D58, E17, H51, H55, H68, I15, J11, J20, O41

Keywords: 多部門世代重複モデル、医療・介護、産業構造、就業構造


The Effects of Providing Childcare on Grandmothers’ Employment and Mental Health in Japan
(日本で孫の育児が祖母の就業とメンタルヘルスに及ぼす影響)

内閣府政策統括官(経済財政分析担当)付参事官(海外担当)/上野 有子

一橋大学経済研究所教授/臼井 恵美子

本稿では、2005-2009年の厚生労働省「中高年者縦断調査」結果を用いて、孫の育児と祖母の就業やメンタルヘルスとの関係を検証した。同調査は、2005年時点で50代であった人々を対象とした全国を対象とする大規模調査である。時点間で不変の個人属性をコントロールした分析の結果、祖母が6歳未満の孫の育児を行うと、その就業確率は3.8パーセントポイント低下することが明らかになった。就業している祖母については、6歳未満の孫の育児の週当たり就業時間への影響は0.79時間の減少、週当たり就業日数への影響は0.069日の減少にとどまり、ごくわずかであった。加えて、6歳未満の孫の育児と精神的な負担との関係は有意にはみられなかった。

JEL Classification Codes: J22, J14

Keywords: 育児、祖母、就業、就業時間、労働供給、メンタルヘルス


An Analysis of the Labor Supply of Childcare Providers
(保育士の処遇改善と労働供給)

シカゴ大学ハリス公共政策大学院研究員、早稲田大学組織経済実証研究所招聘研究員/朝井 友紀子

シカゴ大学ハリス公共政策大学院修士課程/地曵 暁瑛

保育士不足が問題となっている。保育士の離職率を引き下げるため、政府は2013年から2019年にかけて保育士の処遇改善を目的とした補助金の増額を段階的に行なってきた。この加算は、民間保育所が対象となり、各保育所における保育士の平均勤続年数に紐付けて支給された。本研究では、東京都保育士実態調査を用いて、保育士の処遇改善が労働供給に及ぼす影響を検証した。第一に、処遇加算が実際に保育士の賃金に反映されているかを検証したところ、保育士の時間あたり賃金が7 %上昇していることが明らかになった。第二に、保育士の時間あたり賃金の上昇が労働供給に及ぼした影響を検証したところ、保育士の離職意向が5 %ポイント減少(処遇改善前の平均26%から19%の減少)していることが明らかになった。労働供給弾力性は2.7と非常に弾力的であり、処遇加算が離職率を引き下げた可能性を示唆している。第三に、保育士の離職率をさらに引き下げるために、今後賃金の引き上げが必要であるかを検証した。離職意向のある保育士について、留保賃金と市場賃金を比較したところ、保育士の90%で留保賃金が市場賃金を上回っていた。この結果は、保育士の賃金をさらに引き上げることで、保育士の労働供給を増やすことができる可能性を示唆している。

JEL Classification Codes: J8, J21

Keywords: 保育士、労働供給、賃金、処遇改善


Households’ Responses to Childcare Fees: Childcare Usage and Parental Labor Supply
(保育料が保育所利用と親の就業に与える影響)

内閣府経済社会総合研究所研究官/深井 太洋

東京大学社会科学研究所教授/近藤 絢子

本稿では認可保育所の保育料の変化に対して未就学児のいる世帯がどのように行動を変化させるのかを検証した。保育料が市町村住民税の課税額によって不連続に決まっていることを保育料が保育所利用に与える影響の識別に利用する回帰不連続法によって、認可保育所の保育料の増加が認可保育所の利用や両親の労働供給に与える影響を推計した。保育料自体は閾値の前後で不連続に変化していることを確認したのちに、この保育料の変化が保育所の利用率や、母親の就業率、両親の労働所得に対して統計的に有意な影響を与えないことを明らかにした。

JEL Classification Codes: J13, J22, H40

Keywords: 保育需要、保育費用、母親の労働供給


Endogenous Fertility and Social Security
(出生率内生化モデルと社会保障)

関西学院大学経済学部教授/安岡 匡也

経済状況は就労世代の雇用に影響を与える。就労世代の一部は失業状態となる。私たちは将来の経済状況を完全に予測することはできない。不確実性は予備的貯蓄の動機をもたらす。たとえ、若年世代が子どもを育てる余裕があるとしても、予備的貯蓄のために子育てへの支出をしない。予備的貯蓄を減らす政策が子育て支出を増やすためには有効である。本稿は将来の不確実な所得を伴う出生率内生化モデルを設定し、壮年期と老年期における不確実性が出生率にどのような影響を与えるかを考察する。得られた結果は次の通りである。不確実性のあるモデル経済では失業給付の増加は出生率を引き上げる。しかしこの結果は不確実性のないモデル経済では得られない結果である。不確実性のあるモデルでは、出生率に与える影響の観点から所得移転政策が児童手当と同じ効果を持つ。さらに、本稿では高齢期における労働所得の不確実性は出生率を低水準に留めることを明らかにした。このことは、将来所得の不確実性の減少が出生率の増加をもたらすことを意味している。

JEL Classification Codes: J14, J13, J26

Keywords: 高齢者労働、出生率、予備的貯蓄


Foreign Workers, Skill Premium and Fiscal Sustainability in Japan
(外国人労働者、スキルプレミアムと財政の持続可能性)

経済産業研究所上席研究員、東京大学大学院経済学研究科教授/北尾 早霧

明治大学商学部専任教授/山田 知明

日本は深刻な少子高齢化に直面している。少子高齢化は公的年金や医療、介護といった社会保障関連支出を増加させるとともに、所得税の担い手である労働者数を縮小させることから、財政赤字の拡大が懸念される。本論文では、予想される労働力不足に対する政策として外国人労働者の受け入れがマクロ経済及び財政にどのような影響を与えるかについて、定量的世代重複モデルを用いて分析を行った。外国人労働者は労働力不足を緩和して財政の負担を和らげる効果があるものの、外国人労働者の流入数に関して非常に楽観的なシナリオを仮定してもその効果は限定的で、将来の財政に対する不安を拭い去るのには十分ではない。同時に、異なるスキルをもった外国人労働者の受け入れが、日本人労働者の賃金および厚生にどのような影響を与えるかについても分析を行った。現在受け入れている外国人労働者は低スキル労働者の比率が高いため、その比率を保ったまま受入人数を増やすのであれば、高スキル労働者の賃金への影響は小さい一方、国内の低スキル労働者の賃金を押し下げる効果を持つ。しかし、財政負担の緩和効果のほうが大きいことから、高スキル労働者のみならず低スキル労働者の厚生も改善させる効果があることが示された。

JEL Classification Codes: H50, H60, J11

Keywords: 人口高齢化、財政の持続可能性、外国人労働者、賃金格差、スキルプレミアム


Increasing the Sustainability of Long-term Care in an Ageing Society: Lessons from the Netherlands

エラスムス・ロッテルダム大学教授/Frederik T. SCHUT

The provision and financing of affordable and high-quality long-term care (LTC) to a rapidly ageing population is a major challenge for many countries. This is particularly true for Japan, which is faced with the largest share of elderly people, and the Netherlands, which has the most comprehensive and expensive public LTC insurance scheme. This paper analyzes the challenges for a sustainable provision and financing of LTC in the Netherlands and discusses which strategies are employed to meet these challenges.

JEL Classification Codes: H51, I13, I18

Keywords: Ageing population, Long-term care, Public LTC insurance


A Cross-National Snapshot of Family Policy and Women’s Economic Participation

OECD社会政策シニア・エコノミスト/Willem ADEMA

Given the importance of family-formation and labour market issues, policy-makers try to promote family well-being and give fathers and mothers more choice in their economic participation decisions. However, national family policies are very different across the OECD because of political choices, historical patterns and current work and family outcomes. This short paper briefly looks at these differences, and positions Japan in an international perspective in terms of women’s economic participation with an eye on future avenues for change.

JEL Classification Codes: J16, J18

Keywords: Female labour force participation, work-life balance, family policy


Making Japanese Society More Resilient: To Improve Sustainability of Social Security in Japan
(日本社会の強靭化 〜社会保障の持続可能性を高めるために〜)

一橋大学大学院経済学研究科および国際・公共政策大学院教授/山重 慎二

日本では、高齢化と人口減少が進み、人々は将来に対する不安を抱くようになっている。人々の安心の持続性を高めるための方法を見出すために、まず日本の社会保障の持続可能性に関する基本的な事実を提示する。そして、「持続可能性」の概念を明確にした上で、システムを崩壊させる可能性があるショックに備え、ショックから回復するためのレジリエンス(強靭性)を向上させる方法について整理する。そのような枠組みに基づいて、日本の社会保障の持続可能性を高めるためには、社会保障制度の供給サイドを強化し、効率性、ゆとり、多様性、公平性を向上させることで日本社会の強靭化を図ることが鍵となることを主張する。その議論は、なぜ日本の医療、介護、保育などのケア・セクターにおいて、適切な賃金を支払い、働き方改革を推進し、多様性を高めることが、社会保障の持続可能性を高めるために重要なのかを理解しやすくする。そして最後に、社会保障の持続可能性を長期的に高めるには、やはり将来世代を育成することが重要であり、家族向けの公的支出を増やし、子育てをする家族を支援・強化することが重要であることを示唆する。この章で提示される概念的枠組みが、本号における議論を理解する上で、そして日本の社会保障改革のあり方を考える上で、役立つことを期待したい。

JEL Classification Codes: I18, J11, P51

Keywords: 社会保障、持続可能性、強靱性


研究報告会と経済社会総合研究所の概要


本号は、政府刊行物センター、官報販売所等別ウィンドウで開きますにて刊行しております。

全文の構成

(エディトリアル)

Final Reports of Working-Group for the Sustainability of Security of the People and Related System after 2025 in Japan. (*)PDFを別ウィンドウで開きます(PDF形式 332 KB)

  1. 1
    山重 慎二

(論文)

Considerations Regarding Work System Reform in the Situation of Uneven Distribution of Doctors
(医師の偏在の実態から働き方改革を考える)(*)PDFを別ウィンドウで開きます
(PDF形式 1.88 MB)

高橋 泰

  1. 9
    1.Introduction
  2. 11
    2.Previous studies and problem setting
  3. 12
    3.Framework of empirical analysis
  4. 16
    4.Results
  5. 28
    5.Considerations
  6. 33
    6.Conclusions
  7. 34
    References

Effects of Local Physician Concentrations on Physician Labor Supply and Career Trajectories: Evidence from Longitudinal Microdata in Japan
(地域における医師密度が医師の診療に対する労働供給とキャリアに及ぼす影響に関する実証分析)(*)PDFを別ウィンドウで開きます
(PDF形式 1.26 MB)

水島 裕二・野口 晴子・川村 顕

  1. 38
    1.Introduction
  2. 40
    2.Data and Measurement
  3. 43
    3.Empirical Specification
  4. 43
    4.Results
  5. 60
    5.Discussion and Conclusion
  6. 62
    References
  7. 64
    Appendix 1
  8. 68
    Appendix 2

Aging and Wages of Long-term Care Workers: A Case Study of Japan, 2002-2017
(高齢化と介護労働者の賃金:2002-2017年)(*)PDFを別ウィンドウで開きます
(PDF形式 733 KB)

山田 篤裕・石井 加代子

  1. 73
    1.Introduction
  2. 74
    2.Institutional background
  3. 76
    3.Related literature and research questions
  4. 77
    4.Data and empirical framework
  5. 80
    5.Labor mobility of LTC workers
  6. 86
    6.Aging, and the adequate wage level for LTC workers
  7. 90
    7.Concluding remarks
  8. 92
    References
  9. 94
    Data appendix

Population Aging and the Impact on Industrial Structure in Japan from a Multi-Sector OLG-CGE Model Perspective
(人口高齢化による医療介護需要の増加と産業構造への影響:多部門世代重複モデルによる動学的応用一般均衡分析)(*)PDFを別ウィンドウで開きます
(PDF形式 958 KB)

木村 真

  1. 103
    1.Introduction
  2. 105
    2.The model
  3. 110
    3.Data, assumptions and calibration
  4. 116
    4.Simulation results
  5. 123
    5.Conclusion
  6. 124
    References

The Effects of Providing Childcare on Grandmothers’ Employment and Mental Health in Japan
(日本で孫の育児が祖母の就業とメンタルヘルスに及ぼす影響)(*)PDFを別ウィンドウで開きます
(PDF形式 480 KB)

上野 有子・臼井 恵美子

  1. 127
    1.Introduction
  2. 128
    2.Background
  3. 130
    3.Data and descriptive statistics
  4. 133
    4.Estimation Results
  5. 137
    5.Robustness check
  6. 141
    6.Impact of “double care” on employment and mental health
  7. 144
    7.Conclusions
  8. 145
    References

An Analysis of the Labor Supply of Childcare Providers
(保育士の処遇改善と労働供給)(*)PDFを別ウィンドウで開きます
(PDF形式 733 KB)

朝井 友紀子・地曵 暁瑛

  1. 150
    1.Introduction
  2. 152
    2.Institutional Background
  3. 153
    3.The 2013, 2015, and 2017 Policy Reforms
  4. 154
    4.Data
  5. 160
    5.Empirical Strategy
  6. 162
    6.Results
  7. 164
    7.Analysis of Reservation Wage
  8. 170
    8.Conclusion
  9. 170
    References

Households’ Responses to Childcare Fees: Childcare Usage and Parental Labor Supply
(保育料が保育所利用と親の就業に与える影響)(*)PDFを別ウィンドウで開きます
(PDF形式 1.48 MB)

深井 太洋・近藤 絢子

  1. 174
    1.Introduction
  2. 175
    2.Related Studies
  3. 177
    3.Institutional Background
  4. 180
    4.Data and Empirical Model
  5. 187
    5.Empirical Findings
  6. 191
    6.Discussion: Why No Effect?
  7. 194
    7.Conclusion
  8. 195
    References
  9. 197
    Appendix: Supplementary Figures and Tables

Endogenous Fertility and Social Security
(出生率内生化モデルと社会保障)(*)PDFを別ウィンドウで開きます
(PDF形式 672 KB)

安岡 匡也

  1. 203
    1.Introduction
  2. 205
    2.A simple endogenous fertility model with uncertainty
  3. 206
    3.Endogenous fertility with uncertainty and policies
  4. 211
    4.Model of labor supply by the elderly without uncertainty
  5. 214
    5.Model of labor supply by the elderly with uncertainty
  6. 216
    6.Concluding remarks
  7. 216
    References
  8. 218
    Appendix

Foreign Workers, Skill Premium and Fiscal Sustainability in Japan
(外国人労働者、スキルプレミアムと財政の持続可能性)(*)PDFを別ウィンドウで開きます
(PDF形式 781 KB)

北尾 早霧・山田 知明

  1. 222
    1.Introduction
  2. 224
    2.Model
  3. 229
    3.Calibration
  4. 233
    4.Numerical Results
  5. 241
    5.Conclusions
  6. 242
    References

Increasing the Sustainability of Long-term Care in an Ageing Society: Lessons from the Netherlands (*)PDFを別ウィンドウで開きます(PDF形式 322 KB)

Frederik T. SCHUT

  1. 245
    1.Introduction
  2. 245
    2.Challenges for sustainable LTC provision and finance
  3. 247
    3.The Dutch LTC system and its recent reform
  4. 248
    4.Strategies to increase the sustainability of LTC in the Netherlands
  5. 250
    5.Conclusion and discussion
  6. 251
    References

A Cross-National Snapshot of Family Policy and Women’s Economic Participation(*)PDFを別ウィンドウで開きます(PDF形式 416 KB)

Willem ADEMA

  1. 254
    1.Introduction
  2. 254
    2.Women’s economic participation
  3. 257
    3.Family policy objectives
  4. 259
    4.Concluding remarks
  5. 260
    References

Making Japanese Society More Resilient: To Improve Sustainability of Social Security in Japan
(日本社会の強靭化 〜社会保障の持続可能性を高めるために〜)(*)PDFを別ウィンドウで開きます
(PDF形式 743 KB)

山重 慎二

  1. 264
    1.Introduction
  2. 265
    2.Sustainability of the Social Security in Japan
  3. 270
    3.Designing a Sustainable Social System
  4. 274
    4.Concluding Remarks
  5. 276
    References

研究報告会と経済社会総合研究所の概要PDFを別ウィンドウで開きます(PDF形式 156 KB)

(*)がついている論文の本文は英語。