所長挨拶(就任にあたって)

このたび内閣府経済社会総合研究所長に就任いたしました。

経済、社会の大きな変化が、世界的な規模で明らかになっています。技術の面では、人工知能AIに代表されるデジタル化が急速に進展しています。一方、物的な充足ではない、幸福度に代表される厚生(ウェルビーイング)が関心を高めています。
 当研究所は、我が国がより良い未来を創っていく上で求められる、理論と実践の橋渡し、学術と政策現場の融合から生まれる知恵を提供すべく、以下の点に注力してまいります。

第一に、実態を把握し、分析を行う際の基礎となる統計の整備です。GDP統計については、経済、社会の変化に対応する国際基準改定2025への取組みを進めます。併せてGDP周縁分野としてのデジタルデータ、無償労働、環境、健康、文化などの分野における数量的な計測といった先端的な取組みを進めてまいります。

第二に、中長期的な課題に関する研究成果の蓄積です。経済の成長・発展、人口と社会の持続可能性の向上、地政学リスクや地球温暖化など地球規模課題への対応など、経済、社会の構造的な課題に注目し、研究対象を開拓していきます。対外的発信にあたっては、研究成果が政策の企画立案・推進に役立つことを念頭に、政策現場との密な対話を通じて、研究成果の幅広い利活用に配意してまいります。

第三に、こうした活動を支え、広げていくための知的ネットワークの拡充です。内外の叡智を活かせるよう、内外の研究機関や学会、経済界など広く社会との交流を深め、知的ネットワークを強化していきます。また、専門的な研究、調査分析を担うことができる人材の育成や、有為な人材同士の交流の場としての機能を発揮してまいります。

当研究所が、その役割を果たし、経済、社会の発展に貢献できるよう、清家篤名誉所長の御指導のもと、全力で取り組んでまいります。皆様の御理解と御支援をお願い申し上げます。

令和7年7月1日

内閣府 経済社会総合研究所長
 野村 裕