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令和5年度においては、(1)2025SNA(仮称)に向けた対応、(2)マクロ経済・モデル研究、といった政策分析の基盤(インフラ)となる「基礎的研究」を進めるとともに、(3)ウェルビーイング研究、少子化対策・男女共同参画といった「包摂的な経済社会」創出に関する「政策的研究」に取り組み、これら3つの柱を軸とした研究を進めていきます。

1.2025SNA(仮称)に向けた対応

(1)デジタルエコノミー・サテライト勘定の検討

SNAの枠組みに基づき、国際的に整合的な方法で我が国のデジタルエコノミーの計測に取り組み、サテライト勘定の開発に向けた検討を行います。

(2)環境要因を考慮した経済統計・指標の研究

脱炭素の観点から経済活動の環境への影響をGDPに反映させる指標の研究を行うとともに、温室効果ガス等の排出勘定の研究・整備を行います。

(3)SNAの枠組みにおける家計の所得・消費・資産の分布の計測に関する研究

SNAの包括的な記録体系を活かしながら、家計部門を所得階層や年齢階層などの属性別に細分化し、SNAと整合的に所得・消費・資産の分布を把握するための推計手法の検討を行います。

(4)生産性に係るSNA統計の拡張等

SNAと整合的な資本サービス投入量と質的変化を考慮した労働投入量を産業別に整備し、産業別生産性統計の開発のための研究を行います。また、マーケティング資産計測の検討等を行います。

2.マクロ経済・モデル研究

(1)「短期日本経済マクロ計量モデル」等を活用したマクロ経済分析

我が国を取り巻く経済環境の変化や財政金融政策が経済に与える影響を定量的に評価するため、「短期日本経済マクロ計量モデル」の整備・改良を行っております。

(2)「GTAP (Global Trade Analysis Project)モデル」を用いた貿易効果分析

「GTAPモデル」を活用し、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)の今後の加盟国拡大の貿易効果等に係る分析について内閣官房への支援を行います。このほか、外国人労働者の増加の効果分析等も行っています。

(3)「CGE (Computer General Equilibrium)モデル」を用いた炭素国境調整措置等の効果分析

世界環境CGEモデルを用いて炭素国境調整措置の効果や国際排出量取引の効果分析を行います。

(4)企業の生産性・価格付け行動等に関する研究

低迷する生産性と長引くデフレの背景、構造に関する考察を深めるため、事業所等に関するマイクロデータを用いた実証分析を行います。

3.「包摂的な経済社会」創出に関する研究

(1)ウェルビーイングに関する研究

経済的な豊かさや心身の健康、社会的健康など、多様な対象を総合的にとらえるウェルビーイング(well-being)の視点を取り入れた政策推進が近年重要になっていることから、測定すべき主観的ウェルビーイングのあり方に関する研究等を行います。

(2)少子化対策・男女共同参画に関する研究

所得水準や子供の数等といった家計側の要因を考慮しつつ、子育てにかかる経済的負担を推計します。企業データを用いて、女性経営者が直面する経営課題に関して分析を行います。また、男女の賃金格差や少子化関連政策が女性の労働供給等与える影響に関する分析等を行います。

(3)家計の格差・高齢化等に関する研究

個票データを用い、家計構造の変化や保有資産分布の変化を明らかにするとともに、各種政策の効果の影響の検証、消費・貯蓄をはじめとする家計の経済行動への関連を分析します。

(4)柔軟な働き方と個人の社会生活

社会生活基本調査の個票データ等を用いて、テレワークの導入等柔軟な働き方が個人の生活時間の配分(仕事、余暇、家事、睡眠)に与える影響を分析します。また、男女別、家族形態別、都市圏別の影響の違いについて分析を行います。

(5)我が国におけるAI技術の導入に伴う労働市場への影響に関する調査研究

特許データ及び職業情報提供サイトの職業タスクデータ等を活用し、AIによる労働代替可能性リスクを新たな手法により検討し、我が国の労働市場への影響を分析します。

(6)学校におけるICTの活用が児童生徒の認知・非認知スキルの習得向上に与える効果に関する分析

学校におけるICTの活用(GIGAスクールを含む)が、児童生徒の認知スキルと非認知スキルの習得や向上に、どのように関係しているか分析・考察を行います。

(7)ESGスタンスが企業行動に与える影響に関する研究

日本企業のESGへのスタンスの変化が、当該企業の国内および海外における設備投資、雇用、賃金、生産性に与える影響や企業価値に与える影響について分析します。